例題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
類題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
ガウス記号(床関数)が絡んだ極限と、その親戚(兄弟)のような天井関数が絡んだ極限について扱います。
指導者の間ではこんな言葉があります。
- 絶対値を絡めると平均点が5点下がる
- ガウス記号を絡めると平均点が10点下がる
もちろん「何点満点なんだよ」とかどうでもいい突っ込みはやめてくださいね(笑)
要するに多くの受験生が苦手意識をもつ話題だということです。
例えばですが、高校生ともなれば \(\sqrt{2}\) という記号が怖いという人はほぼいないでしょう。
それは \(\sqrt{ \ }\) という記号とある意味「お友達」であり、性質や扱いなどにある程度の「慣れや習熟」が伴っているからです。
総じて高校で「初めまして」という記号に対してお友達になりきれないまま、乱暴にインプットしたまま入試当日を迎えるという受験生も数多く見てきました。
逆に言えば、それらの記号を \(\sqrt{ \ }\) と同じぐらいお友達と呼べるレベルまで深くお付き合いできれば、単発の目の前の問題を解けるかどうかという表面的なことだけでなく、色々な問題に対応できる可能性という意味で結構なアドバンテージをもてるはずです。
さて、今回のガウス記号は整数問題や数列など、多くの分野に登場します。
確かに多くの場合、ガウス記号が登場すると骨がありがちになりますが、本問のように極限分野に登場してきた場合、絶好のホームランボールであることが多いため、できれば長打を狙っていきたいトピックスです。
(以下ネタバレ注意)
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例題について
例題はこちら(再掲)(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
ガウス記号の基本性質
実数 \(x\) に対して、\(x\) を超えない最大整数を \([x]\) と表すと
①:\(x-1 \lt [x] \leq x\)
②:\([x] \leq x \lt [x]+1\)
ということが言えます。
この ① と ② については両方とも覚えなくても、片方を押さえておけば、もう片方は移項すれば直ちに導けます。
覚えやすいほうで押さえましょう。
覚えるというよりは
という数直線的なイメージで押さえればよいでしょう。
お友達になれば、「結果的に」覚えています。
ガウス記号が絡んだ極限
今回考えるべき、
\(a_{n}=\displaystyle \sum_{k=1}^{n}\displaystyle \frac{[\sqrt{2n^{2}-k^{2}}]}{n^{2}}\)
というガウス記号が絡んだ式を直接表現することは至難の業です。
ただ、極限となれば、本人不在でも何とかなる強力な武器があります。
それは
です。
そして、ガウス記号にはその「はさみうち」に必要な不等式が上記の基本性質から揃いやすいわけです。
かなり乱暴な言い方ですが、ガウス記号が絡んだ極限については、
十中八九はさみうちの原理
と言っても過言ではありません。
先ほど、極限分野で登場するガウス記号についてはホームランボールになりやすいというのはこういった理由からです。
はさんでしまえば基本の運用
詳しい計算過程は【解答】で述べていますが、今回ガウス記号の性質から \(a_{n}\) をはさむと
\(\displaystyle \sum_{k=1}^{n}\displaystyle \frac{\sqrt{2n^{2}-k^{2}}-1}{n^{2}} \lt a_{n} \leq \displaystyle \sum_{k=1}^{n}\displaystyle \frac{\sqrt{2n^{2}-k^{2}}}{n^{2}}\)
となります。
ここからは最左辺と最右辺の極限計算になります。
取り掛かるとしたら最右辺でしょう。
最右辺ができれば、最左辺は微調整レベルで解決できそうですから。
最右辺の極限は
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \displaystyle \sum_{k=1}^{n} \displaystyle \frac{1}{n}\sqrt{2-(\displaystyle \frac{k}{n})^{2}}\)
という区分求積法による計算処理にもちこめ、
\(\displaystyle \int_{0}^{1}\sqrt{2-x^{2}} dx\)
という積分計算に帰着します。
この積分計算は \(y=\sqrt{2-x^{2}}\) が
原点中心、半径 \(\sqrt{2}\) の円の \(y \geq 0\) を満たす部分
ということを利用して処理すればよいでしょう。
あるいは
\(x=\sqrt{2}\sin{\theta}\) などと置換する
という方針でもよいです。
いずれにせよ、挟んでしまった後は基本の運用力の問題です。
類題について
類題はこちら(再掲)(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
例題はガウス記号という小数部分の「切り捨て」でしたが、類題は小数部分の「切り上げ」です。
ただ、ガウス記号の基本性質の数直線的なイメージがあれば、切り上げバージョンでも対応できるはずです。
基本的なシナリオは大きくは変わりません。
変わるのは挟んだ後のシナリオです。
例題は挟んだ後、
区分求積の運用と、定積分の計算力
が問われました。
類題は
分数関数の収束条件(発散速度の比較)
についての基本的な運用力が問われます。
そういった意味で、類題は挟んだ後の方が難しいと思います。
例題の解答はコチラ
類題の解答はコチラ