実践演習 数列系

tanとフィボナッチ数列【マチンの公式との関連】【2013年度 京都府立医科大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

tanとフィボナッチ数列が面白く絡んでいる問題を見てみます。

tanとはタンジェントです。炭治郎ではありません。

ただ、全集中で解いてみてください。

筋が悪いと過呼吸になります。

(以下ネタバレ注意)

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(1) について

目に優しく \(b_{n}=a_{n}(a_{n+2}+a_{n+1})-a_{n+1}a_{n+2}\) とおき、

\(b_{n}=-(-1)^{n}\)

であることを目指します。

つまり、数列 \(\{b_{n}\}\) が公比 \(-1\) の等比数列であることを言えばよく、漸化式的に考えて

\(b_{n+1}=-b_{n}\)

であることを目指します。

なお、途中計算で

\(b_{n}=a_{n+2}a_{n}-{a_{n+1}}^{2}\)

という結果を得ます。

つまり、

\(a_{n+2}a_{n}-{a_{n+1}}^{2}=(-1)^{n-1}\)

という結果を得ます。

これはフィボナッチ数列にまつわる有名な性質で、カッシーニ・シムソンの定理と呼ばれるものです。

こちらに焦点を当てた解説記事については以下をどうぞ。

参考カッシーニ・シムソンの定理【2012年度 兵庫県立大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)       一見すると複雑な漸化式です。 そこで「実験してごらん」という設問を (1) につけてくれていま ...

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(2) について

裸の角度に対してはあまり何もできませんから、tan の服を着せて

\(\tan{(\theta_{2k+1}+\theta_{2k+2})}=\tan{\theta_{2k}}\)

を目指すことにします。

ただ、これが示されたからといって直ちに

\(\theta_{2k+1}+\theta_{2k+2}=\theta_{2k}\)

と中身比べができるわけではありません。

左辺と右辺の角度がそれぞれ鋭角であるという外堀を埋めてから解答を作っていきます。

(3) について

部分和である

\(\displaystyle \sum_{k=1}^{N}\theta_{2k-1}\)

を考えてから極限をとります。

この部分和のシグマ計算については、シグマ計算の常套手段の1つ

基本

差分解からの和の中抜け

を狙っていくことになるでしょう。

今回は (2) の結果をもとに

\(\theta_{2k+1}=\theta_{2k}-\theta_{2k+2}\)

と見て、差分解していきます。

このあたりのシグマ計算の基本については

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のシリーズもご活用ください。

今回の話題について

(2) の結果によって得られる

\(\theta_{2k+1}+\theta_{2k+2}=\theta_{2k}\)

という結果は

\(\arctan{\displaystyle \frac{1}{a_{2k+1}}}+\arctan{\displaystyle \frac{1}{a_{2k+2}}}=\arctan{\displaystyle \frac{1}{a_{2k}}}\)

ということを意味します。

例えばこれで、\(k=1\) としてみると

\(\arctan{\displaystyle \frac{1}{a_{3}}}+\arctan{\displaystyle \frac{1}{a_{4}}}=\arctan{\displaystyle \frac{1}{a_{2}}}\)

すなわち

\(\arctan{\displaystyle \frac{1}{2}}+\arctan{\displaystyle \frac{1}{3}}=\displaystyle \frac{\pi}{4}\)

ということを意味します。

これは以前実践演習で扱った

というトピックスの中で触れたマチンの公式の類似形の一つです。

このあたりについては【総括】で少し触れてあります。

マチンの公式とフィボナッチ数列が絡んでくるあたりが面白いですね。

解答はコチラ

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