2023年度東北大学理系 各解説記事
2023年度 東北大学理系第1問【玉を交互に取り出すゲーム】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) \(\mathrm{A}\) , \(\mathrm{B}\) の2人が玉を交互に取り出していき、 \(\mathrm{A}\) が赤玉を取り出したら \(\mathrm{A}\) の勝ち \(\mathrm{B}\) が白玉を取り出したら \(\mathrm{B}\) の勝ち というゲームに関する確率です。 (1) , (2) いずれにしても、題意を満たすような玉の取り出し方は限定的なので、どのような事象が起こればよいのかを追っていき ...
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2023年度 東北大学理系第2問【三角関数の方程式の解の個数と極限】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 三角関数に関する方程式の解と、その解の個数に関する極限について考える問題です。 今回の \(\sin{3x}+\sin{x}=0\) という方程式の解を求めること自体は基本的なレベルであり、(1) は確保しないとツライものがあります。 実質は (2) の勝負です。 \(m\) 以下の解の個数を把握しようと思うと \(m\) がどの程度の大きさなのか ということに興味がいくでしょう。 今回の方程式の正の解は \(x=\displaystyle ...
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2023年度 東北大学理系第3問【2項間漸化式(変数倍)の一般項とその和】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 2項間漸化式に関する一般項とその和についてを扱った問題です。 (1) で一般項が出せないと、連動して (2) も失うことになります。 しかも、(1) が出せれば (2) も勢いに乗って完答しやすいレベルであるため、差が付きやすい問題だと言えましょう。 漸化式が \((n+2)a_{n+1}=na_{n}+2\) という形で与えられているのはまだ親切で、 \(a_{n+1}=\displaystyle \frac{n}{n+2}a_{n}+\d ...
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2023年度 東北大学理系第4問【1の5乗根に関する論証】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) \(1\) の \(5\) 乗根に関する論証問題です。 \(1\) の \(5\) 乗根に関する整式の問題は今年の京大でも出題がありました。 (1) で \(\alpha\) が \({\alpha}^{4}+{\alpha}^{3}+{\alpha}^{2}+{\alpha}+1=0\) を満たしていることが分かりますから、\({\alpha}\) が \(1\) の \(5\) 乗根であることを見抜くのは、東北大受験生であれば無理はありま ...
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2023年度 東北大学理系第5問【四面体の頂点から対面に下ろした垂線の足の位置ベクトル】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 四面体の頂点から対面に下ろした垂線の足の位置ベクトルにスポットを当てた問題です。 基本に忠実に、登場人物を \(\vec{a}\) , \(\vec{b}\) , \(\vec{c}\) で表し、大きさと内積という基本情報を駆使しながら計算を進めていくことになります。 非常に基本的なレベルの問題であり、基本的には一本道であるため怖いのは計算ミスぐらいのものです。 なお、今回の四面体は作為的に設定されているため、その特殊性に気がつくと、多少 ...
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2023年度 東北大学理系第6問【長さと傾きが一定の線分の通過領域】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 線分の通過領域と、その面積を求める問題です。 線分の通過領域と聞いて身構えますが、今回の線分は 長さと傾きが一定の線分 であり、目で追っていくことができます。 その際 (1) がその補助となる部分です。 方針面では困ることはないでしょう。 ただ、細々とした算数計算や、面積を求めるのに必要な部分をチョコチョコ計算していると時間がかかります。 面積計算も、まともにぶつかると少々骨が折れますので、図形的考察をはさみながら少しでも労力を減らす工夫を試 ...
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と、形式に変更はありません。
分野的トピックス
第1問:場合の数・確率
第2問:三角関数・極限(数Ⅲ)
第3問:数列
第4問:複素数(複素数平面)(数Ⅲ)
第5問:ベクトル
第6問:微分法・積分法(数Ⅲ)
という出題で、6題中3題が数Ⅲからの出題でした。
基本的に各分野からバランスよく出題されていました。
各大問について
第1問(やや易)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
赤玉と白玉が吐いた袋から \(\mathrm{A}\) , \(\mathrm{B}\) の2人が交互に玉を取り出すゲームに関する確率です。
題意を満たすような色の取り出し方のパターンが限定的であるため、丁寧に整理していけば完答は十分狙えるでしょう。
第1問で最初に見たときにウワっと思うかもしれませんが、やってみると案外あっけなく終わってしまう問題です。
文系第1問との文理共通問題でもあります。
難易度としてはやや易でしょう。
第2問(標準)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
三角関数に関する方程式の解と、その解の個数に関する極限について考える問題です。
(1) の方程式は基本的なレベルであり、これを落とすわけにはいきません。
(2) は \(p(m)\) をそのまま立式するわけにはいかず、
\(m\) がどの程度の大きさなのか
ということを自分で設定して解き進めることになります。
このように自分で文字を設定して話を進めるという部分にハードルがあるものの、\(m\) 以下の解の個数を立式するにあたっては必然的に \(m\) の範囲に目がいくため、無茶苦茶な要求ではありません。
最終的に \(m\) の範囲を設定した際の不等式を用いて
はさみうちの原理
に持ち込むという流れも自然に見えやすいと思います。
難易度としては標準です。
第3問(標準)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
二項間漸化式で与えられた数列 \(\{a_{n}\}\) についての一般項と、その和について考える問題です。
(1) は
- 漸化式をうまく変形して解く方法
- 実験して形を予想し、それを数学的帰納法で裏付ける方法
が考えられます。
(1) ができれば、勢いにのって (2) も完答しやすいのですが、(1) で形が見えていないと (2) も連動して失うことになります。
したがって、一歩間違うと大やけどに繋がりかねない問題です。
実験して形を予想出来れば、(2) にも希望は繋がります。
東北大受験生であれば、漸化式をうまく変形して解く方針はどこかで目にしたことがあってほしいところです。
難易度は標準と言ってよいでしょう。
第4問(標準)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
1の5乗根に関する問題です。
(1) で \(f(x)=0\) の虚数解 \(\alpha\) が
\({\alpha}^{4}+{\alpha}^{3}+{\alpha}^{2}+{\alpha}+1=0\)
を満たしていることが分かりますから、\({\alpha}\) が \(1\) の \(5\) 乗根であることを見抜くのは、東北大受験生であれば無理はありません。
結論は見えやすいですが、きちんと論じるとなると簡単ではないでしょう。( 決して難しくもないですが。 )
(3) は \({\alpha}^{3}+{\alpha}^{-3}\) まで次数を落とす部分までは辿り着きやすいでしょうが、これ以降で差がつくと思います。
難易度としては標準です。
第5問(やや易)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
四面体を題材とした空間ベクトルの問題で、頂点から対面に下ろした垂線の足に関する位置ベクトルを考えるという典型的な話題です。
今回の四面体は作為的に設定されており、この四面体がもつ特殊性(対称性)を利用して工夫する余地はありますが、気がつかなくても手なりに解くことはできます。
なお、問いに絡んではいませんが、今回の \(\mathrm{H}\) , \(\mathrm{K}\) はそれぞれ \(\triangle{\mathrm{OAB}}\) , \(\triangle{\mathrm{CAB}}\) の垂心となります。
難易度はやや易です。
第6問(やや難)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
線分の通過領域と、その面積を求める問題です。
線分の通過領域と聞いて身構えますが、今回の線分は
長さと傾きが一定の線分
であり、目で追っていくことができます。
説明を抜きにすれば、\(S\) の概形を描くこと自体はそこまで大変ではありません。
ただ、細々とした算数計算や、面積計算に必要な交点の情報などをチョコチョコ計算していると時間がかかります。
面積計算も真正面からまともにぶつかると大変な思いをすることになるでしょう。
図形的考察を適宜はさむことで、少しでも省エネできるように工夫しないと計算を合わせるのは中々厳しいものがあります。
難易度はやや難です。
全体的に
今年は東北大受験生であれば何かしらの類題経験があるであろう問題が目立ちました。
そういった意味で、割と手が付けやすい問題セットであったと思います。
昨年 (2022年) は正攻法でぶつかると何かしら一悶着があるセットでしたが、今年に関しては目に付いた解法で手なりに進めても完答しやすかったでしょう。
難易度は昨年に比べ、やや易です。
東北大は決して時間的に余裕があるわけではなく、セットの難易幅が大きいため、優先順位を考えた時間配分が求められます。
それと同時に確保すべき問題が自分の苦手分野とならないように、苦手分野をつくらないようにしたいところです。
また、年によっては強烈なセットとなる年もあるため、難易の振れ幅は安定してるわけではありません。
定番の問題に対する瞬発力に加えて、深い洞察力や思考力も要求されますので、乱暴な解法暗記で終わらずに、丁寧に基本を積み上げていくことを心がけた学習をしてほしいと思います。
2023年度東北大学理系 各解説記事
2023年度 東北大学理系第1問【玉を交互に取り出すゲーム】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) \(\mathrm{A}\) , \(\mathrm{B}\) の2人が玉を交互に取り出していき、 \(\mathrm{A}\) が赤玉を取り出したら \(\mathrm{A}\) の勝ち \(\mathrm{B}\) が白玉を取り出したら \(\mathrm{B}\) の勝ち というゲームに関する確率です。 (1) , (2) いずれにしても、題意を満たすような玉の取り出し方は限定的なので、どのような事象が起こればよいのかを追っていき ...
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2023年度 東北大学理系第2問【三角関数の方程式の解の個数と極限】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 三角関数に関する方程式の解と、その解の個数に関する極限について考える問題です。 今回の \(\sin{3x}+\sin{x}=0\) という方程式の解を求めること自体は基本的なレベルであり、(1) は確保しないとツライものがあります。 実質は (2) の勝負です。 \(m\) 以下の解の個数を把握しようと思うと \(m\) がどの程度の大きさなのか ということに興味がいくでしょう。 今回の方程式の正の解は \(x=\displaystyle ...
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2023年度 東北大学理系第3問【2項間漸化式(変数倍)の一般項とその和】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 2項間漸化式に関する一般項とその和についてを扱った問題です。 (1) で一般項が出せないと、連動して (2) も失うことになります。 しかも、(1) が出せれば (2) も勢いに乗って完答しやすいレベルであるため、差が付きやすい問題だと言えましょう。 漸化式が \((n+2)a_{n+1}=na_{n}+2\) という形で与えられているのはまだ親切で、 \(a_{n+1}=\displaystyle \frac{n}{n+2}a_{n}+\d ...
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2023年度 東北大学理系第4問【1の5乗根に関する論証】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) \(1\) の \(5\) 乗根に関する論証問題です。 \(1\) の \(5\) 乗根に関する整式の問題は今年の京大でも出題がありました。 (1) で \(\alpha\) が \({\alpha}^{4}+{\alpha}^{3}+{\alpha}^{2}+{\alpha}+1=0\) を満たしていることが分かりますから、\({\alpha}\) が \(1\) の \(5\) 乗根であることを見抜くのは、東北大受験生であれば無理はありま ...
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2023年度 東北大学理系第5問【四面体の頂点から対面に下ろした垂線の足の位置ベクトル】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 四面体の頂点から対面に下ろした垂線の足の位置ベクトルにスポットを当てた問題です。 基本に忠実に、登場人物を \(\vec{a}\) , \(\vec{b}\) , \(\vec{c}\) で表し、大きさと内積という基本情報を駆使しながら計算を進めていくことになります。 非常に基本的なレベルの問題であり、基本的には一本道であるため怖いのは計算ミスぐらいのものです。 なお、今回の四面体は作為的に設定されているため、その特殊性に気がつくと、多少 ...
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2023年度 東北大学理系第6問【長さと傾きが一定の線分の通過領域】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 線分の通過領域と、その面積を求める問題です。 線分の通過領域と聞いて身構えますが、今回の線分は 長さと傾きが一定の線分 であり、目で追っていくことができます。 その際 (1) がその補助となる部分です。 方針面では困ることはないでしょう。 ただ、細々とした算数計算や、面積を求めるのに必要な部分をチョコチョコ計算していると時間がかかります。 面積計算も、まともにぶつかると少々骨が折れますので、図形的考察をはさみながら少しでも労力を減らす工夫を試 ...
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