実践演習 整数系

多項式に関する整数問題と論証【1992年度 東京大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

多項式に関する問題で、受験生に解かせてみると四苦八苦する生徒が多い一方で、あっさりと解く生徒もいます。

体感の難易度の温度差は大きい問題だと思います。

(以下ネタバレ注意)

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(1)について

ここから差がついてしまいかねません。

帰納法路線だと

その場合

\(P_{n+1}(x)=xP_{n}(x)+1\)

というように、前段仮定を用いるために\(P_{n}(x)\) に関する漸化式を作ります。

問題の主張をよく考えてみると

\(P_{n}(x)\) を \(P_{m}(x)\) で割った余りは \(P_{0}(x)\) から \(P_{m-1}(x)\) のどれかである。

という問題の主張は

\(n\) を \(m\) で割った余りは \(0\) から \(m-1\) のどれかである。

と添え字だけで見たときと比較するとピンとくるものがあるかもしれません。

\(n\) を \(m\) で割った余りが \(r\) であるとき

\(P_{n}(x)\) を \(P_{m}(x)\) で割った余りが \(P_{r}(x)\) では?

と洞察できればしめたものです。

(2) について

(1) を利用すると

いわば因数分解できるような積の形を考えるわけです。

それは (1) でいうところの余りが \(0\)、すなわち \(r=0\) のときです。

詳しい計算過程は【解答】の中で述べていますが、

\(n=mq+r\) で、\(r=0\) であるとき

\(P_{mq}(x)=P_{m}(x)P_{q}(x^{m})\)

となります。

この式を利用して \(P_{100}(x)\) を分解していくことを考えます。

頑張って探せば

\(P_{2}(x)P_{50}(x^{2})P_{1}(x^{4})\)

\(P_{2}(x)P_{2}(x^{2})P_{25}(x^{4})\)

\(P_{4}(x)P_{1}(x^{2})P_{25}(x^{4})\)

\(P_{100}(x)P_{1}(x^{2})P_{1}(x^{4})\)

という4通りの分解が見つかります。

しかし、他にもうまく変形できないかと言われたら困ります。

なので、「これ以上はない」と言い切る必要があるわけです。

等比数列の和をインスピレーションすれば

\(P_{k}(x)=1+x+x^{2}+\cdots+x^{k-1}\)

を等比数列の和と捉えて

\(P_{k}(x)=\displaystyle \frac{1-x^{k}}{1-x}\)

と見れば、

\((1-x)P_{k}(x)=1-x^{k}\)

というすっきりした形になります。

そこで、\(P_{l}(x)P_{m}(x^{2})P_{n}(x^{4})\) を直接相手にするのではなく、

\((1-x)(1-x^{2})(1-x^{4})P_{l}(x)P_{m}(x^{2})P_{n}(x^{4})\)

を考えようという方針も考えられます。

総合的には

経験によって何とかしようという態度では限界のある問題で、どこかで「その場力」が要求されることになるでしょう。

冒頭で、難易度の感じ方に個人差があると述べましたが、その個人差を生み出しているのが「その場力」の有無かと思います。

本問そのものの類題が出題されることをあまり期待はしない方がよいとは思いますが、糧にできる部分は多く含んでいます。

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