実践演習 極限・微分積分系

πが無理数であることの証明【定積分の利用】【2003年度 大阪大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

円周率 \(\pi\) は無理数です。

と習ったのは中学生ぐらいでしょうか。

教わったときは「へぇ~、そうなんだ」と流してしまう人がほとんどでしょう。

自分もその一人でしたが、心のどこかで「なんでだろう」という引っかかりをもってはいました。

本問は一応「高校で学習する内容の範囲」で 円周率 \(\pi\) が無理数であるという結論まで辿り着けるように設計されています。

もちろん、厳密性を言い出したらキリがない部分もありますが、なぜ \(\pi\) が無理数となるのかということに対して、「そういうもんだ」で片づけないような説明を付けられることに面白さを感じます。

(以下ネタバレ注意)

 

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(1) について

\(f_{n}(x)=1+\displaystyle \frac{x}{1!}+\displaystyle \frac{x^{2}}{2!}+\cdots+\displaystyle \frac{x^{n}}{n!}\)  とおいたとき

\(f'_{n+1}(x)=1+\displaystyle \frac{x}{1!}+\displaystyle \frac{x^{2}}{2!}+\cdots+\displaystyle \frac{x^{n}}{n!}=f_{n}(x)\)

という \(e^{x}\) のマクローリン展開を元にしたカラクリは手垢が付いたカラクリです。

今回は「数学的帰納法によって」という指示がありますが、この指示が余計なお世話に思えてほしいところです。

後半の内容については被積分関数が、積分区間 \(0 \leq t \leq 1\) において、

\(t^{n} (1-t)^{n} \sin{\pi t} \leq 1\)

であることを利用して

\(I_{k} \lt \displaystyle \frac{\pi^{k+1}}{k!}\)

と上から押さえることができれば、前半で示した不等式の活用が見込めます。

(2) について

積分漸化式の作成の際の常套手段

部分積分からの積分漸化式の作成

という路線を外したくありませんし、この方針は明確に見えてほしい基本です。

ただし、やってみると分かると思いますが、相当計算が重たいです。

「置き換え」を駆使しながら少しでも目に優しくしましょう。

自分のためでなく、読む側である採点者のためにも。

(3) について

矛盾までの道筋まである程度見せてくれているので、前の設問も見返しながら、どう結び付くのかを考えていきます。

(2) で得た \(I_{n}\) についての漸化式のおかげで、\(A_{n}(=p^{n}I_{n})\) についての漸化式も得ることになり、\(I_{n} \gt 0\) ということも併せると \(A_{n}\) が帰納的に正の整数であることが見えてきます。

(1) がどう効いてくるかという視点で、(1) の活用を考えてみると

\(A_{0}+A_{1}+A_{2}+\cdots+A_{n} \lt \pi e^{\pi}\)

であることが分かります。

正の整数を加え続けていって、有限確定値未満ということがおかしなことだと気が付けばハッピーエンドです。

総合的に

レールを敷いてくれているという点で、発想力というよりは

  • 定番の手法を活かせるかという運用力
  • 誘導を活かせるかという活用力
  • 見据えた方針を処理しきる計算力と集中力

という力が問われます。

特に計算についてはかなり重たいです。

ただ、この重たい計算の果てに、「\(\pi\) が無理数であるということが証明できる」という結果が待っていたことを考えると、やった甲斐があったと感じるのではないでしょうか。

歴史的には

ネイピア数 \(e\) が無理数であることを最初に証明した人物は、かの有名な「オイラー」です。

それに対し、円周率 \(\pi\) が無理数であることを最初に証明した人物は「ランベルト」と言われています。

ネイピア数 \(e\) が無理数であることの証明については

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