実践演習 極限・微分積分系

抽象的な関数【条件や定義から結論まで辿り着く】【2000年度 名古屋市立大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

抽象的な関数に対する扱いをテーマとした問題です。

話を進めていくうえで、使ってよいことをしっかり整理する力が必要です。
(この問題に限らないですが。)

本問は難易度面でも適度な問題で、抽象的な関数を扱う際の「特有の脳みその使い方」を学べると思います。

(以下ネタバレ注意)

 

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三角関数の加法定理?

与えられた問題の条件をよく観察してみると

\(f(x)=\sin{x}\) ,  \(g(x)=\cos{x}\)

というモデルケースが考えられます。

だからと言って、これを前提として話を進めるのは当然 NG です。

\(f(x)=\sin{x}\) ,  \(g(x)=\cos{x}\)  以外に与えられた条件を満たすような \(f(x)\) ,  \(g(x)\) があるかもしれません。

(1) について

\(f(a-b)=f(a)g(b)-f(b)g(a)\)

に、\(a=b=0\) を代入すれば、\(f(0)=0\) を得て \(f(0)\) の方は解決します。

このように、特定の値を代入してみることで所望の値を得るということは、この手の問題の常套手段です。

\(g(0)\) の方については

$$\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
f(a+b)=f(a)g(b)+f(b)g(a) \\
f(a-b)=f(a)g(b)-f(b)g(a)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$$

の辺々操作によって

\(g=\)\((f\)だけの式\()\)

を目指す方向性を考えます。

辺々引いてみると

\(f(a+b)-f(a-b)=2f(b)g(a)\)

すなわち

\(g(a)=\displaystyle \frac{f(a+b)-f(a-b)}{2f(b)}\)

を得ます。

これに \(a=0\) を代入すると

\(g(0)=\displaystyle \frac{f(b)-f(-b)}{2f(b)}\)

となり、手詰まりです。

一方、辺々加えて見ると

\(f(a+b)+f(a-b)=2f(a)g(b)\)

すなわち

\(g(b)=\displaystyle \frac{f(a+b)+f(a-b)}{2f(a)}\)

を得ます。

これに \(b=0\) を代入すると

\(g(0)=\displaystyle \frac{f(a)+f(a)}{2f(a)}\)

で、\(g(0)=1\) となり、解決です。

モデルケース的にこの結論は予想の範疇だとは思いますが、あくまで予想にとどめておきましょう。

(2) について

今回示すべき等式の左辺が

\(f( \ )-f( \ )\)

という形なので、

$$\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
f(a+b)=f(a)g(b)+f(b)g(a) \\
f(a-b)=f(a)g(b)-f(b)g(a)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$$

の辺々を引いた

\(f(a+b)-f(a-b)=2f(b)g(a)\)

という形が効いてきそうです。

示すべき等式の右辺に注目すれば、\(b=h\) ,  \(a=x+h\) として見たくなりますので、代入してみると解決します。

(3) について

抽象的な関数の導関数を考えるにあたっては

\(f'(x)=\displaystyle \lim_{h \to 0} \displaystyle \frac{f(x+h)-f(x)}{h}\)

という導関数の定義が唯一の拠り所です。

というかこの極限計算により導関数を導出することを「微分する」と言い、普段行っている微分はこの極限計算の結果を暗記して拝借しているのです。

(普段我々は「微分せずに微分している」わけです。)

(2) をヒントと見て考えると

\(\displaystyle \lim_{h \to 0} \displaystyle \frac{f(x+2h)-f(x)}{2h}\)

を考えたくなると思います。

\(f(a+b)\) ,  \(f(a-b)\)  をバラバラにするような与えられた条件は、今回のような抽象的な関数に対する導関数の導出にあたって活用することが多いため、レパートリーの中に入れておきましょう。

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