実践演習 極限・微分積分系

nのn乗根の極限【1985年度 鹿児島大学ほか】

例題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

\(\sqrt[n]{n}\) の極限についての問題です。

\(\sqrt[n]{n}=n^{\frac{1}{n}}\) ですから、\({\infty}^{0}\) という形の不定形ということになります。

本問は丁寧な誘導がついていますので、その誘導に乗れれば、完答することは難しくはありません。

その誘導自体も定番の不等式なので、経験があれば即沈みます。

(以下ネタバレ注意)

 

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例題について

(1) について

右辺を

\(1+{}_n \mathrm{ C }_{1} a+{}_n \mathrm{ C }_{2} a^{2}\)

と見ることができれば、二項定理が頭をよぎります。

\((1+a)^{n}=1+{}_n \mathrm{ C }_{1} a+{}_n \mathrm{ C }_{2} a^{2}+{}_n \mathrm{ C }_{3} a^{3}+\cdots+{}_n \mathrm{ C }_{n} a^{n}\)

ですが、\({}_n \mathrm{ C }_{3} a^{3}\) 以降の正の項をカットしてしまえば、

\((1+a)^{n} \geq 1+{}_n \mathrm{ C }_{1} a+{}_n \mathrm{ C }_{2} a^{2}\)

ということになり、解決です。

ただし、この

\({}_n \mathrm{ C }_{2} a^{2}\) で止める

という路線はもちろん

\({}_n \mathrm{ C }_{2} a^{2}\) 以降の項が存在するとき

すなわち

\(n \geq 2\) のとき

ということになりますから、\(n=1\) のときは個別検証する必要があります。

(2) について

\(n=(1+a_{n})^{n}\)

と見て、(1) の不等式を用いたくなると思います。

$$\begin{eqnarray}
n &=& (1+a_{n})^{n}\\
&\geq& 1+na_{n}+\displaystyle \frac{1}{2}n(n-1){a_{n}}^{2}
\end{eqnarray}$$

なのですが、さらに \(na_{n}\) という正の項もカットしてしまえば

\(n \gt 1+\displaystyle \frac{1}{2}n(n-1){a_{n}}^{2}\)

ですから、

\(n-1 \gt \displaystyle \frac{1}{2}n(n-1){a_{n}}^{2}\)

と、\(n-1\) が約分でき、あとは手なりに解決します。

(3) について

(2) の不等式を用いた「はさみうちの原理」から

\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} a_{n}=0\)

ということになります。

つまり、

\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} (\sqrt[n]{n}-1)=0\)

ということになりますから、

\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \sqrt[n]{n}=1\)

と求まります。

結果だけなら

\(n\) の発散速度と、\(\log{n}\) の発散速度を考えると

\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \displaystyle \frac{\log{n}}{n}=0\)

ということになりますが、これを認めるのであれば

$$\begin{eqnarray}
\displaystyle \lim_{n \to \infty} \log{\sqrt[n]{n}} &=& \displaystyle \lim_{n \to \infty} \displaystyle \frac{\log{n}}{n} \\
&=& 0
\end{eqnarray}$$

であり、

\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \sqrt[n]{n}=1\)

と得られます。

先ほどの

\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \displaystyle \frac{\log{n}}{n}=0\)

については大抵誘導が付くとは思います。

ただ、念のためこちらの証明については【総括】の中で触れてありますので、確認しておいた方がよいでしょう。

類題について

類題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

例題の確認用の類題としてご活用ください。

なお、

\((1+x)^{n}=1+{}_n \mathrm{ C }_{1} x+{}_n \mathrm{ C }_{2} x^{2}+{}_n \mathrm{ C }_{3} x^{3}+\cdots+{}_n \mathrm{ C }_{n} x^{n}\)

について、\(x \geq 0\) であれば、\({}_n \mathrm{ C }_{2} x^{2}\) 以降の項をカットすることで

\((1+x)^{n} \geq 1+nx\)

という不等式を得ます。

このように二項定理のカットが使えるように \(x \geq 0\) という設定で出題されることが多いですが、実は

\(x \geq -1\)

のときでこの不等式は成り立ちます。

ベルヌーイの不等式

\(x \geq -1\) のとき、自然数 \(n\) に対して

\((1+x)^{n} \geq 1+nx\)

が成り立つ。

証明については、二項定理をカットするというラフな路線は封じられますが、

  • 数学的帰納法
  • 素直に差を取る

という2路線で証明できます。これについては類題の【総括】の後に参考として触れてあります。

例題の解答はコチラ

類題の解答はコチラ

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