例題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
類題1はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
類題2はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
ウォリスの公式と呼ばれる有名極限を背景にもつ問題です。
入試において大切な要素や手法を含む問題なので、しっかりとモノにしつつ、問題自体で前面に押していないウォリスの公式の美しさについても軽く触れていく欲張りな構成にしたいと思います。
(以下ネタバレ注意)
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例題について
例題はこちら(再掲)(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
非常に丁寧な誘導が付いています。
(1) について
基本的な積分計算であるため、きっちりと確保したいところです。
三角関数の積分については
- 偶数乗は半角公式
- 奇数乗は1乗分離
というのが常套手段です。
(2) について
区間 a \leq x \leq b において、常にf(x) \geq g(x) であるとき
\displaystyle \int_{a}^{b}f(x)dx \geq \displaystyle \int_{a}^{b}g(x)dx
が成り立つ。
という基本事項を用いていきます。
これは面積のイメージを考えれば当然です。
今回は積分区間 0 \leq x \leq \displaystyle \frac{\pi}{2} において 0 \leq \sin{x} \leq 1 ですから
\sin^{n}{x} \geq \sin^{n+1}{x}
です。
この両辺にインテグラルをくっつければ
I_{n} \geq I_{n+1}
が成立します。
(3) について
- 積分漸化式の作成は部分積分
というのが常套手段です。
※ \displaystyle \int \tan^{n}{x} dx だけは例外
試験場でこれを落としてしまうと合格が遠のいてしまいます。
(4) について
見た目偶奇に注目するような顔をしています。
(3) の漸化式は 2 個飛ばしですから、(3) の漸化式を用いるように思える人も出てくるでしょう。
一方で、今回考える比率は「隣り合う 2 項の比率」です。
隣接2項の関係性は (2) の不等式にあります。
ここをどのように捌いていくかが問題です。
ここはしっかり考えてほしいところなのですが、(3) の漸化式を用いて I_{2n} , I_{2n+1} を計算し
直接 \displaystyle \frac{I_{2n+1}}{I_{2n}} の極限計算をしよう
と思うと失敗します。
そうなってくると、(2) の不等式を用いていくことになり
直接極限を計算しようとして失敗した
ということから、ターゲットに直接触れずに極限を求める手法である
本人不在の極限を求める手法
はさみうちの原理
で仕留めるという方針が立つでしょう。
ウォリスの公式について
(4) の失敗は問題を解くという次元では失敗ですが、そこでの経験は
ウォリスの公式1
\displaystyle \frac{2\cdot 2}{1\cdot 3} \times \displaystyle \frac{4\cdot 4}{3\cdot5} \times \displaystyle \frac{6\cdot 6}{5\cdot 7} \times \cdots=\displaystyle \frac{\pi}{2}
という円周率 \pi が登場する美しい無限積 (極限) に繋がります。
これについては【総括】の中で触れています。
類題1について
類題1はこちら(再掲)(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
このタイプの類題をあげればキリがありません。
個人的にはひとつの完成された作品のように思います。
実はウォリスの公式と呼ばれるものは別の形もあり
ウォリスの公式2
\displaystyle \lim_{n \to \infty} \displaystyle \frac{2^{2n}(n!)^{2}}{\sqrt{n}(2n)!}=\sqrt{\pi}
ということが成り立ちます。
本問のオチがどのようにここに繋がるかについても【総括】で触れてあります。
類題2について
類題2はこちら(再掲)(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
ここまで \displaystyle \int_{0}^{ \frac{\pi}{2}}\sin^{n}{x} dx にスポットが当たってましたが
\displaystyle \int_{0}^{ \frac{\pi}{2}}\cos^{n}{x} dx はどうなの?
という疑問をもつ人も出てくると思いましたので、この問題で実感してください。
「あぁ、一緒だ」
ということを。