実践演習 方程式・不等式・関数系

辺の長さが等差数列をなす三角形【2019年度 東京医科歯科大学】

例題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

訊かれていること自体はそこまで複雑なものではありませんが、頭に血が昇りやすい問題です。

何のプランもなく気の向くままに解き進めていくと、中々うまくいかない歯がゆさを感じると思います。

手元にある条件と、辿り着くべき目的をしっかりと認識し、その間をどのように埋めていくかということを一個ずつ丁寧に詰めていく力が必要です。

(以下ネタバレ注意)

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手元にある条件

辺の長さ \(a\) ,  \(b\) ,  \(c\) がこの順に等差数列であるという条件から

\(2b=a+c\)

という関係式が手元にあります。

今回、\(C\) に条件がつくことにより、\(\cos{A}\) を求めるわけです。

余弦定理より

  • \(\cos{A}=\displaystyle \frac{b^{2}+c^{2}-a^{2}}{2bc}\)
  • \(\cos{C}=\displaystyle \frac{a^{2}+b^{2}-c^{2}}{2ab}\)

という式が手元にあります。

これらの関係式をどう結び付けていくかが問題です。

今回問われている \(\cos{A}\) というのは比率であり、

大きさによらない

ということになります。

そこで、長さ \(a\) ,  \(b\) ,  \(c\)  の情報ではなく、形(角度)についての情報を抽出することを目指したいと思います。

ひとまず、

\(2b=a+c\)

という関係式から \(b\) が消去できます。

これを先ほどの余弦定理の式に代入すると

  • \(\cos{A}=\displaystyle \frac{5}{4}-\displaystyle \frac{3}{4} \cdot \displaystyle \frac{c}{a}\)
  • \(\cos{C}=\displaystyle \frac{5}{4}-\displaystyle \frac{3}{4} \cdot \displaystyle \frac{a}{c}\)

という式を得ます。

ここから、\(\displaystyle \frac{c}{a}\) を消去することを考えます。

\(\displaystyle \frac{c}{a}=\displaystyle \frac{5-4\cos{A}}{3}\)

より、

\(\cos{C}=\displaystyle \frac{5}{4}-\displaystyle \frac{3}{4} \cdot \displaystyle \frac{3}{5-4\cos{A}}\)

であり、これを整理すると

\(5 (\cos{C}+\cos{A})=4(1+\cos{C} \cos{A}) \ \cdots (*)\)

という関係式を得ることができます。

これを用いて各設問に挑んでいきます。

(1) について

\(A=\displaystyle \frac{\pi}{3}\) のときは

\(\cos{A}=\displaystyle \frac{1}{2}\)

で問題ないでしょう。

\(C=\displaystyle \frac{\pi}{3}\) のとき

\(a\) ,  \(b\) ,  \(c\)  がこの順で公差 0 以上の等差数列をなすことから

\(c\) が最大辺

ということになり、

\(C\) が最大角

ということになります。

\(A+B=\displaystyle \frac{2\pi}{3}\)

であり、最大角 \(C\) が \(\displaystyle \frac{\pi}{3}\) ということなので、

\(A=B=\displaystyle \frac{\pi}{3}\)

となるしかありません。

したがって、

\(\cos{A}=\displaystyle \frac{1}{2}\)

となります。

\(B=\displaystyle \frac{\pi}{3}\) のとき

\(B=\displaystyle \frac{\pi}{3}\) のときは

\(A+C=\displaystyle \frac{2\pi}{3}\)

ということになります。

\((*)\) を利用するにあたって、和積公式・積和公式を用いることで

\(5 \cos{\displaystyle \frac{C+A}{2}} \cos{\displaystyle \frac{C-A}{2}}=2+\cos{(C+A)}+\cos{(C-A)} \)

というように \(C+A\) を登場させて捌けそうです。

(2) について

\(C=\displaystyle \frac{2\pi}{3}\) と具体的に定まっているため

\(5 (\cos{C}+\cos{A})=4(1+\cos{C} \cos{A}) \ \cdots (*)\)

という関係式に代入すればよいでしょう。

\(5 (-\displaystyle \frac{1}{2}+\cos{A})=4(1-\displaystyle \frac{1}{2} \cos{A})\)

となるため、

\(\cos{A}=\displaystyle \frac{13}{14}\)

と即座に得られます。

(3) について

\(C=2A\) という関係式があるのですが、これも

\(5 (\cos{C}+\cos{A})=4(1+\cos{C} \cos{A}) \ \cdots (*)\)

という関係式に代入すると

\(5 (\cos{2A}+\cos{A})=4(1+\cos{2A} \cos{A}) \)

となります。

\(\cos{2A}=2 \cos^{2}{A}-1\)

という2倍角の公式を用いてやることで

\(\cos{A}\) に関する3次方程式

が登場し、そこから導出できることが見込めます。

(4) について

\(C=A+\displaystyle \frac{\pi}{3}\) ということで

\(C-A=\displaystyle \frac{\pi}{3}\)

という関係式が手元にあるわけです。

そうなると今度は

\(5 \cos{\displaystyle \frac{C+A}{2}} \cos{\displaystyle \frac{C-A}{2}}=2+\cos{(C+A)}+\cos{(C-A)} \)

を用いた方がよさそうです。

これにより、

\(5 \cos{(A+\displaystyle \frac{\pi}{6})} \cos{\displaystyle \frac{\pi}{6}}=2+\cos{(2A+\displaystyle \frac{\pi}{3})}+\cos{\displaystyle \frac{\pi}{3}}\)

という関係式を得ます。

目がチカチカするのであれば

\(\theta=A+\displaystyle \frac{\pi}{6}\)

などと置いてしまえば、

\(\displaystyle \frac{5\sqrt{3}}{2} \cos{\theta}=\displaystyle \frac{5}{2}+\cos{2\theta}\)

と目に優しくなります。

この後は

\(\cos{2\theta}=2 \cos^{2}{\theta}-1\)

という2倍角の公式を用いて

\(\cos{\theta}\) についての2次方程式に持ち込める

という算段が付くでしょう。

路線2:正弦定理の活用

三角形 \(\mathrm{ABC}\) の外接円の半径を \(R\) とすると、正弦定理から

\(\displaystyle \frac{a}{\sin{A}}=\displaystyle \frac{b}{\sin{B}}=\displaystyle \frac{c}{\sin{C}}=2R\)

ということになりますが、これは

\(a : b : c=\sin{A} : \sin{B} : \sin{C}\)

という連比を表します。

つまり、

\(a+c=2b\)

という長さの情報は

\(\sin{C}+\sin{A}=2 \sin{B}\)

という角度の情報に持ち込めることが目論めるわけです。

この路線は【解2】で扱っています。

追記

類題1はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

例題の解2の路線の一部分を訊いています。

誘導があるため、例題よりは幾分か楽です。

類題2はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

(2) が類する話題ですが、類題1と違いノーヒントです。

例題の【解2】の路線でいってもよいですが、ターゲットが \(\tan{\displaystyle \frac{A}{2}}  \tan{\displaystyle \frac{C}{2}}\) という明確なものであれば、色々とっかかりが見えてきます。

例題の解答はコチラ

類題1の解答はコチラ

類題2の解答はコチラ

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