例題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
格子点同士を結ぶ2つの線分のなす角について考察する問題です。
例題は実戦要素が強く、
- 2直線のなす角の扱い
- 整数問題の捌き方
が問われてきます。
(以下ネタバレ注意)
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座標平面上での角度の処理
\angle{\mathrm{BAC}} という座標平面上で角度を扱おうと思うと
座標における角度の扱い
- ベクトルの内積を用いて \cos{ \ } として処理する
- 傾きと \tan{ \ } の関係を用いて加法定理で処理する
- 複素数平面と見て回転処理で捌く
という路線が考えられます。
単純に角度のみを扱いたければ
- 傾きと \tan{ \ } の関係を用いて加法定理で処理する
という路線が計算量が少なく済む傾向にあります。
ベクトル、複素数平面の処理は
「線分の回転」
であり、長さの情報を含んだ処理です。
一方、\tan{ \ } の処理は
「直線のなす角」
という見方の処理であり、長さについては言及しておらずあくまで「なす角」に関する処理だからです。
反時計回りを正の向きにとる
ここで、守ってほしいルールがあり
のように、
- 反時計回りを角度の正の向きとして角 \alpha , \beta を設定する
ということです。
たまに、
として、\angle{\mathrm{BAC}}=\alpha+\beta と設定する人がいますが、これだと
傾きと \tan{ \ } の関係性が狂ってしまいます。
この問題は解けるかもしれませんが、できれば他問題にも通じる一般性をもった処理の方が望ましいでしょう。
反時計回りを角度の正の向きとして設定すれば、上のどちらの絵をかいたとしても
\angle{\mathrm{BAC}}=\beta-\alpha
という関係が成り立ちます。
以後、\angle{\mathrm{BAC}}=\theta とおきます。
今、
- \tan{\alpha}=\displaystyle \frac{b^{2}-a^{2}}{b-a}=b+a
- \tan{\beta}=\displaystyle \frac{c^{2}-a^{2}}{c-a}=c+a
となるように設定していますから、
\begin{eqnarray} \tan{\theta} &=& \tan{(\beta-\alpha)} \\ &=& \displaystyle \frac{\tan{\beta}-\tan{\alpha}}{1-\tan{\beta}\tan{\alpha}}\\ &=& \displaystyle \frac{(c+a)-(b+a)}{1-(c+a)(b+a)}\\ &=& \displaystyle \frac{c-b}{1-(c+a)(b+a)} \end{eqnarray}
ということになります。
(1) について
「\theta=60^{\circ} とならない」という否定的な命題の証明ですから、第一感としては
\theta=60^{\circ} と仮定して矛盾を狙う背理法
が想起されるでしょう。
特に難しいことをしなくても、上で導出した関係式から
\tan{60^{\circ}}=\displaystyle \frac{c-b}{1-(c+a)(b+a)}
すなわち
\displaystyle \frac{c-b}{1-(c+a)(b+a)}=\sqrt{3}
という等式を得ます。
何をするでもなく
左辺は有理数、右辺は無理数
ですから直ちに矛盾が生じます。
(2) について
\theta=45^{\circ} として考えます。
\tan{45^{\circ}}=\displaystyle \frac{c-b}{1-(c+a)(b+a)}
という関係式により
\displaystyle \frac{c-b}{1-(c+a)(b+a)}=1
を得ることになります。
分母を払い、整理すると
bc-2b-4c+10=0
という等式を得ることになります。
この等式を満たす整数 b , c を求めるという整数問題に帰着したわけです。
この方程式については
(b-4)(c-2)=-2
というように
整数問題の基本の一つ
積の形をつくり、約数拾い
という整数問題における3大手法の一つを狙っていく定番の形です。
ここが乗りきれれば、あとは問題なく手なりに進んでいけます。
約数拾いの際ですが、無駄に全て拾って時間と手間をかけすぎてしまうのも問題です。
- 符号チェック
- 偶奇チェック
など見るべきポイントを見て労力を少しでも軽減させる工夫をしましょう。
類題1について
類題1はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
古くからある古典的な有名事実です。
例題では放物線上の3点の格子点という特殊なシチュエーションで考えましたが、より一般的なシチュエーションからの問いかけです。
さらに本問の場合、格子点ではなく、有理点という設定で考えています。
この問題は複素数平面を用いた処理が模範解答となることが多いですので、
- 複素数平面を用いて回転処理として正三角形であることを捌く
という方針を【解1】として扱っています。
もちろん、例題で学んだような「傾きと\tan{ \ } 」という路線からも解くことはでき、それについては【解3】で扱っています。
追加類題について
追加類題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
類題1のパワーアップ Ver です。
まともに計算でぶつかると大変な思いをするのが目に見えています。
ただ、この問題はシンプルにアッサリ終わる
「明日誰かに話したい」
というオチの問題です。