テーマ別演習 一般化

一般化 第3講【定積分の扱い】【1968年度 筑波大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

今回のテーマ別演習では「一般化」という考え方を自分のモノにします。

問題文で与えられている特殊なシチュエーションを、より一般のシチュエーションに拡張して考えるという手法です。

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一般化 第3講【定積分の扱い】【1968年度 筑波大学】

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一般化 第4講【分野の拡張】【2007年度 京都大学ほか】

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第3講では、「定積分の扱い」ということをテーマとします。

今回のテーマである一般化以外にも様々な解法が考えられますが、今回のテーマに即した倒し方をぜひ考えてみてほしいと思います。

(以下ネタバレ注意)

 

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定積分は「値」

今回扱う

\(\displaystyle \int_{-1}^{1}\displaystyle \frac{x}{\sqrt{1+x^{2}}} f(x) dx\)

という定積分は定数です。

\(\displaystyle \frac{x}{\sqrt{1+x^{2}}} f(x)\) の原始関数は具体的には分からないものの、 \(F(x)\) などとすると

$$\begin{eqnarray}
\displaystyle \int_{-1}^{1}\displaystyle \frac{x}{\sqrt{1+x^{2}}} f(x) dx&=& \left[ F(x) \right]_{-1}^{1} \\
&=& F(1)-F(-1)
\end{eqnarray}$$

となります。

これまでの第1講、第2講で学習してきたように、具体的な定数に対して我々ができることはほとんどありません。

一般化

そこで、今回扱う定積分の恰好をした定数の値を

\(F(1)\)

と見立て

\(F(t)=\displaystyle \int_{-t}^{t}\displaystyle \frac{x}{\sqrt{1+x^{2}}} f(x) dx\)

という関数を設定してやります。

(上の説明で用いた \(F(x)\) とは関係ありません。)

\(t\) の範囲は対称性を考えると

\(0 \leq t \leq 1\)

として考えればよいでしょう。

この定積分については積分変数 \(x\) に最終的に \(t\) ,  \(-t\) を代入して得られる \(t\) についての式 (関数) です。

この関数がどのような振る舞いをするのか調べるために、ここから先の流れは当然微分して増減を調べます。

定積分で表された関数の微分

定積分で表された \(t\) についての関数

\(\displaystyle \int_{f(t)}^{g(t)} h(t) dt\)

を \(t\) で微分すると

$$\begin{eqnarray}
\displaystyle \frac{d}{dt} \displaystyle \int_{f(t)}^{g(t)} h(t) dt &=& \displaystyle \frac{d}{dt} \left[ H(x) \right]_{f(t)}^{g(t)}\\
&=& \displaystyle \frac{d}{dt} \{H(g(t))-H(f(t))\}\\
&=& h(g(t))g'(t)-h(f(t))f'(t)
\end{eqnarray}$$

となります。

結果だけ見ると

\(上代入 \times 導関数 - 下代入 \times 導関数\)

ということになります。

実戦的には結果を扱いこなせることが第一ですが、理屈を分かった上で使うことが望ましい基本事項です。

本問において

本問の

\(F(t)=\displaystyle \int_{-t}^{t}\displaystyle \frac{x}{\sqrt{1+x^{2}}} f(x) dx\)

において、\(F'(t)\) は

$$\begin{eqnarray}
F'(t) &=& \displaystyle \frac{t}{\sqrt{1+t^{2}}}f(t) \cdot 1 - \displaystyle \frac{-t}{\sqrt{1+(-t)^{2}}}f(-t) \cdot (-1) \\
&=& \displaystyle \frac{t}{\sqrt{1+t^{2}}} \{f(t)-f(-t)\}
\end{eqnarray}$$

ということになります。

今 \(0 \leq t \leq 1\) の範囲で考えていますから

\(\displaystyle \frac{t}{\sqrt{1+t^{2}}} \geq 0\)

であることは言えます。

次に \(f(t)-f(-t)\) についてですが、条件から \(-1 \leq t \leq 1\) の範囲で \(f'(t) \geq 0\) なのですから、当然 \(0 \leq t \leq 1\) の範囲でも \(f'(t) \geq 0\) が成り立ちます。

つまり、\(f(t)\) は単調増加であるため

\(f(t) \geq f(-t)\)

が言え、

\(f(t)-f(-t) \geq 0\)

も言えることになります。

このことから、\(F'(t)\) の被積分関数について

\(\displaystyle \frac{t}{\sqrt{1+t^{2}}} \{f(t)-f(-t)\} \geq 0\)

が言えることになり、

\(F'(t) \geq 0\)

ということが言え、

  • \(F(t)\) は単調増加

ということが分かります。

\(0 \leq t \leq 1\) の範囲においては

\(F(t) \geq F(0)=0\)

ということが言え、特に

\(F(1) \geq 0\)

であるため、解決します。

その他の解法

一般化ということを意識しなければ、定積分の形を見て、その形を活かした解法も考えられます。

積分区間に注目

与えられた積分区間は対称的です。

そこで意識したいのは偶関数や奇関数の扱いでよくやる

区間の分割

という方針です。

今回の与えらえた定積分を

\(\displaystyle \int_{-1}^{0} \displaystyle \frac{x}{\sqrt{1+x^{2}}} f(x) dx+\displaystyle \int_{0}^{1} \displaystyle \frac{x}{\sqrt{1+x^{2}}} f(x) dx\)

と区間を分割し、前半の区間の部分

\(\displaystyle \int_{-1}^{0} \displaystyle \frac{x}{\sqrt{1+x^{2}}} f(x) dx\)

\(x=-t\)

などと置換積分してやることで、2つの積分の積分区間をともに 0 ~ 1 区間にできます。

この路線は【解2】で扱っています。

部分積分をかますと

\(\displaystyle \frac{x}{\sqrt{1+x^{2}}}=(\sqrt{1+x^{2}})'\)

ということに注目すると、部分積分によって、ダッシュの服の着せ替えが起こり、\(f'(x) \geq 0\) という条件が活かせそうな形に持ち込めます。

この路線は【解3】で扱っています。

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