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微分方程式は厳密には教科書範囲では発展扱いとなっていますが、知識の差で出来具合が大きくならないように誘導をつけて出題されることはしばしばあります。
1階の微分方程式の有名な解法としては
- 変数分離法
- 積分因子法
というものがありますが、今回は「積分因子法」に焦点を当てていきます。
(以下ネタバレ注意)
+ クリック(タップ)して続きを読む (1) は「関数方程式」として見ることになります。 恒等式と見ることになりますので、\(s\) や \(t\) に特定の値を代入して、所望の \(f(0)\) を Get することを考えます。 今回の場合、\(s=0\) , \(t=0\) を代入すれば \(f(0)=2f(0)\) を得ることになり、\(f(0)=0\) が得られます。 \(\displaystyle \frac{0}{0}\) というタイプの不定形です。 不定形の解消の方法は様々ですが、本問の場合、この段階では抽象的な関数であることを考えると選択肢としては \(\displaystyle \lim_{ h \to \ 0 } \displaystyle \frac{f(0+h)-f(0)}{h} = f'(0)\) と見る「微分の定義」を考えるのが有力です。 微分の定義の確認ですが、 \(f(x)\) が (全ての実数 \(x\) で )微分可能とは 微分可能性 全ての実数 \(x\) において \(\displaystyle \lim_{ h \to \ 0 } \displaystyle \frac{f(x+h)-f(x)}{h}\) という極限値が有限確定値として存在する。 ということになります。そして、\(\displaystyle \lim_{ h \to \ 0 } \displaystyle \frac{f(x+h)-f(x)}{h}\) という極限値が存在するとき \(\displaystyle \lim_{ h \to \ 0 } \displaystyle \frac{f(x+h)-f(x)}{h}=f'(x)\) と定める。 ということです。 「\(g(x)=f(x)e^{-x}\) と設定して、さらに \(g'(x)\) を計算しろ」 という手の内を晒してくれています。 指示通り \(g'(x)\) を計算すると、\(g'(x)=1\) を得ます。 これにより、定数 \(C\) を用いて \(g(x)=x+C\) を得ることになります。 あとは (1) で得ている \(f(0)=0\) を \(g(0)=0\) と反映させてこれを利用すれば \(C=0\) が得られます。 これより \(\displaystyle {f(x)}{e^{-x}}=x\) となるため、\(f(x)=xe^{x}\) と解決します。 問題を解くだけであれば、これで終わりなのですが、背景的なものが見えることがあれば、見えた方が気持ちいいに決まっています。 今回誘導として与えられている「 \(g(x)=f(x)e^{-x}\) 」という置き方について考えてみます。 突然指示された「 \(g(x)=f(x)e^{-x}\) 」という置き方ですが、もちろん天から降ってきたものではありません。 一般に \(f'(x)+A(x)f(x)\) という形に対して、\(A(x)\) の原始関数を \(B(x)\) としたとき \(e^{B(x)}f'(x)+e^{B(x)}A(x)f(x)\) と、\(e^{B(x)}\) をかけたものは \((e^{B(x)}f(x))'\) とキレイに \(( )'\) と、まとまります。 確認 \(e^{B(x)}f'(x)+e^{B(x)}A(x)f(x)\) について \(B'(x)=A(x)\) であることに注意すると \(=e^{B(x)}f'(x)+e^{B(x)}B'(x)f(x)\) \(=(e^{B(x)}f(x))'\) \(f'(x)+A(x)f(x)\) という形に対して、\(A(x)\) の原始関数を \(B(x)\) としたとき、\(e^{B(x)}\) を 「積分因子」 と言います。 具体例 \(f'(x)+\cos{x}f(x)=0\) について \(cos{x}\) の原始関数の一つとして \(\sin{x}\) がある。 両辺 \(e^{\sin{x}}\) をかけると \(e^{\sin{x}}f'(x)+e^{\sin{x}}\cos{x}f(x)=0\) これより \((e^{\sin{x}}f(x))'=0\) よって、\(e^{\sin{x}}f(x)=C\) (\(C\) は定数) というようにして話を進めていくことができます。 本問における微分方程式は \(f'(x)-f(x)=e^{x}\) ですから、\(-1\) の原始関数の一つとして\(-x\) があります。 なので、積分因子として \(e^{-x}\) を両辺かけて整理すると \((e^{-x}f(x))'=1\) とキレイにまとまることになるわけです。 出題側は、これをもってして 「\(g(x)=e^{-x}f(x)\) を考えて微分してごらん」 という誘導をつけているわけです。 復習用に何題か類題を準備しました。 適宜ご活用ください。 類題3はワンパンチが必要な問題なので、少し戸惑う人が出てくるかもしれません。 (解答の中で解説しています。)(1) について
(2) について
(3) について
(4) について
誘導の背景
具体例
本問では
類題について
類題1はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
類題2はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
類題3はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)