解答速報

2023年度 九州大学 理系数学【総評と感想】

2023年度九州大学理系 各解説記事

2023年度 九州大学理系第1問【相反方程式と複素数平面における三角形の形状決定】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 相反方程式と、複素数平面における三角形の形状決定問題です。 相反方程式とは、 係数が外側から左右対称になっている方程式 のことで、特有の捌き方をするテーマ性のある話題です。 知識的側面が強いですが、難関大を目指すにあたっては準備していて然るべき定番の話題とも言えます。 相反方程式については を参考にしてください。 (2) の複素数平面における三角形の形状決定問題については、\(\alpha\) ,  \(\beta\) ,  \(\gamma ...

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2023年度 九州大学理系第2問【絶対値のついた漸化式】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 漸化式は2項間漸化式なのですが、絶対値が付いているという点で面食らう受験生も多かったと思います。 こういった得体のしれない漸化式については、 実験して情報や要領をつかみ取る という態度で愚直に調べていくしかありません。 何かうまい方法はあるか と式変形に固執してしまうと身動きがとれなくなります。 試験場補正もかかりやすく、論述も手慣れていないとうまく記述しづらいため、完答しづらい問題です。 問題自体は面白く、思考力を鍛える教材としては積極的に ...

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2023年度 九州大学理系第3問【任意の格子点が斜交座標においても格子点となる条件】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) ベクトルに関する論証問題ですが、1次変換に伴う斜交座標への変換という話題を扱っており、現行課程に行列がないため受験生はイメージが掴みにくいでしょう。 成分を用いて噛み砕いていくことで、数式的に処理していけますので、特別な知識は必要ありません。 ただ、問題の条件を適切に咀嚼する顎の力が必要です。 また、最後の (3) は全称命題としての独特の捌き方をします。 「任意の(全ての)」や「存在する」といった言葉をきちんと汲み取る力も求められ、文字も多 ...

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2023年度 九州大学理系第4問【関数方程式と微分についての論証】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) リード文を読み、下線部に関連する事柄を証明したり、補足させたりするといった形式であり、従来の「問題解決型」の問いというより、「基本深掘り型」の問いです。 昨年 (2022年) にこの形式が出題されて、2年連続でこの形式の問題が出題されました。 今年は関数方程式と、微分に関する論証問題です。 昨年の講評で 今後こういった問題が入ってきて、それが九州大の数学の目玉になるのかどうかというのは、来年以降注目したいところでしょう。 と述べましたが、2年 ...

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2023年度 九州大学理系第5問【パラメータ表示で与えられた曲線についての面積】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) パラメータ表示で与えられた曲線についての面積を考える問題です。 やること自体は一本道であるため、方針面ではそこまで迷うことはないのですが、途中で出てくる数値がお世辞にもキレイではないため、不愉快な計算に襲われます。 細かな部分まで詰めようとすると結構神経を使うため、気疲れします。 グラフの概形的に面積をどう捌くかが問題で、面積の立式さえできれば積分計算自体は標準的なものですが、筋の悪い方向にいってしまい収拾がつかなくなってしまう受験生もそれな ...

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  • 150分
  • 5題
  • 記述式

と、形式に変更はありません。

分野的トピックス

第1問:複素数と方程式 複素数平面(Ⅲ)

第2問:数列

第3問:ベクトル

第4問:微分法(Ⅲ)

第5問:微分法・積分法(Ⅲ)

 

第4問は文章を読んで、その内容の補足や証明について考えるという形式の問題で、この形式での出題は2年連続となりました。

各大問について

第1問(やや難)

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

相反方程式と、複素数平面における三角形の形状決定問題です。

(1) の相反方程式については、通常誘導がついているのが大半ですが、今回はノーヒントです。

この話題については割と定番寄りの話題であり、ノーヒントだからと言って文句は言えないでしょう。

(2) は一見 (1) との関連が見えないですが、解き進めていくうちに (1) の相反方程式が姿を現します。

\(\displaystyle \frac{{\gamma}-{\alpha}}{{\beta}-{\alpha}}\) を登場させようという気持ちを強く持てたかどうかで差がついたことでしょう。

第2問(やや難)

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

絶対値の付いた2項間漸化式であり、大半の受験生はこの設定で面食らうことになるでしょう。

漸化式固有の式変形を施してうまく解こう

という気持ちだと立ち往生することになってしまいます。

得体のしれない漸化式に対しては

手を動かして実験する

という原始的な態度でいくしかありません。

問題自体は面白いため、思考力を鍛える題材として使える教材だと思います。

なお、九州大は 1986 年にも絶対値のついた2項間漸化式に関する問題を出題しています。

参考絶対値付きの2項間漸化式【1986年度 九州大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 受験生にやらせてみると 「絶対値さえなければ」 と、慌てふためく人が多い問題です。 機械的な解法暗記に頼ってきた人や、Mr.丸暗記さんは ...

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第3問(やや難)

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

本問で扱う \(D\) は2014 年以前の過程であった行列分野の

行列式 (Determinant)

と呼ばれているもので、現行課程の受験生は馴染みが薄く、イメージが掴みにくいでしょう。

もちろん、本問はそのようなことに習熟していなくても解けるように設計されてはいます。

本問は

  • 任意の格子点が、整数成分の2本のベクトルで張られる斜交座標においても格子点となる条件

ということがトピックスとなっています。

行列に馴染みのない現行課程の受験生にとっては、計算が合っているか不安になる形でしょう。

ただ、基本的にはベクトルの成分を持ち出して、問題文で与えられている条件を捌いていくのは難しくはなく、(2) ぐらいまでは確保したい内容です。

(3) は結論は見えやすいのですが、きちんと記述するとなると全称命題に関する特有の捌き方が求められます。

第4問(標準~やや難)

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

昨年(2022年)も登場した、長文読解です。

この形式は2年連続での出題で、今後九州大のシンボル的形式になりそうな予感がします。

考え方を示唆するリード文があるため、そこをある程度の手がかりにしながら進めていきます。

内容自体は割と標準的で、決して簡単ではありませんが、特にぶっ飛んだ発想を要求しているわけではありません。

ただし、分量も多く、スタミナも要求され、必要以上に難しく感じてしまった受験生も少なくなかったと思われます。

個人的に

きちんと地に足の着いた学習をしなさいという

というメッセージの象徴的問題として今後も出題され続ける可能性が高いと感じました。

この形式は人によって好き嫌いは分かれるかもしれませんが、2年続けての出題はやはり何かしらの意図を含んだものと考えるべきでしょう。

第5問(やや難)

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

パラメータ表示で与えられた曲線についての面積を考える問題です。

昨年 (2022 年) は円の中を円が転がった際の円上の点の軌跡 (ハイポサイクロイド ) を扱った問題でした。

昨年 (2022年) も第4問が長文読解、第5問がパラメータ表示された曲線という位置で、位置取り的にも、昨年と同じ流れとなりました。

昨年 (2022 年) の問題よりは計算量は多少減り、積分計算そのものは大したことはない標準的なレベルですが、そこまで行きつけるかという問題です。

スムーズに \(y\) 軸方向の積分にいければよいですが、\(x\) 軸方向の積分で捌こうとして爆発した受験生も結構いるでしょう。

全体的に

九州大学は、旧帝大の中では比較的標準的な問題や定番の内容を出題する大学です。

さらに、丁寧な小問による誘導が多く、誘導にのる力が必要です。

今年に関しては、誘導としての位置づけである前半部分はどれも確保したい内容なのですが、後半の設問については何かしらの山場があり、完答を阻んでいます。

セットとしても

これは確保しなきゃダメだよね

という「受験生として確保がマストな問題」がほぼないと言ってもよく、難しくなった昨年と比較してもやや難化でしょう。

問題としては面白い問題も多く、第1問、第2問などは演習教材として使ってみたいなと思える良問だと思いました。

昨年の講評で

昨年(2021年)の九州大学の問題も何かしら一山ある問題が多く、一昔前の標準的な問題というイメージのままでいると置いていかれかねません。

というコメントをしましたが、今年はさらに難化傾向が加速したように思います。

もちろん、焦って難問ばかり解き漁るのはかえって逆効果になりかねませんが、定番の問題に対する瞬発力に加えて、思考力や洞察力を様々な味付けの問題を通して鍛えておく必要性はあります。

過去問はもちろん、他大学の良問で自分の手持ちの武器を磨いていくことも有効な手立てとなるでしょう。

2023年度九州大学理系 各解説記事

2023年度 九州大学理系第1問【相反方程式と複素数平面における三角形の形状決定】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 相反方程式と、複素数平面における三角形の形状決定問題です。 相反方程式とは、 係数が外側から左右対称になっている方程式 のことで、特有の捌き方をするテーマ性のある話題です。 知識的側面が強いですが、難関大を目指すにあたっては準備していて然るべき定番の話題とも言えます。 相反方程式については を参考にしてください。 (2) の複素数平面における三角形の形状決定問題については、\(\alpha\) ,  \(\beta\) ,  \(\gamma ...

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2023年度 九州大学理系第2問【絶対値のついた漸化式】

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2023年度 九州大学理系第3問【任意の格子点が斜交座標においても格子点となる条件】

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問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) パラメータ表示で与えられた曲線についての面積を考える問題です。 やること自体は一本道であるため、方針面ではそこまで迷うことはないのですが、途中で出てくる数値がお世辞にもキレイではないため、不愉快な計算に襲われます。 細かな部分まで詰めようとすると結構神経を使うため、気疲れします。 グラフの概形的に面積をどう捌くかが問題で、面積の立式さえできれば積分計算自体は標準的なものですが、筋の悪い方向にいってしまい収拾がつかなくなってしまう受験生もそれな ...

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