2023年度名古屋大学理系 各解説記事
2023年度 名古屋大学 理系 第1問【複素数平面上の円上の点を解にもつ4次方程式】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 複素数平面上での円上の点が表す複素数を解にもつ4次方程式についての問題です。 図形的な意味合いと式的な意味合いを結びつける力も要求され、総合的な力が問われています。 (1) はなまじ形がキレイな結論であるため、逆にアタフタするかもしれませんが、冷静に沈めたいところです。 (2) は \(p\) , \(q\) , \(r\) , \(s\) を解 \(\alpha\) , \(\beta\) の情報を含む \(t\) , \(u\ ...
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2023年度 名古屋大学 理系 第2問【2円で囲まれる部分のx軸回転体】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 2円が相異なる2点で交わるとき、2円で囲まれる部分の \(x\) 軸回転体の体積について考える問題です。 文字を多く含み、計算量が多少あるものの少なくとも (2) , できれば (3) までは何とか辿り着きたいところです。 (4) は (3) で得た \(V(r)\) を \(r\) で微分し、\(V'(r)\) を計算して増減表を得ることができれば解決なので、方針面では迷う余地はありませんが、かなりエグイ計算に襲われます。 \(r=a-b ...
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2023年度 名古屋大学 理系 第3問【方程式の実数解の個数】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 方程式の実数解の個数について考えるという問題で、テーマとしては定番寄りの話題です。 微分法を用いてグラフの概形を捉え、方程式の解を視覚化することで共有点の個数を考えるという点で、方針面では迷う余地はありません。 ただ、与えられた方程式をどのような形で見るのが最善なのかという点で、アタフタする部分があるかもしれません。 与えられた方程式をどのように見ても、一応解けるには解けますが、最適な道を行こうと思うと、問題全体を俯瞰する必要が出てきます。 ...
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2023年度 名古屋大学 理系 第4問【第1種スターリング数】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 第1種スターリング数を扱った問題ですが、多くの受験生にとって初見だと思います。 一般に、数列 \(\{a_{n}\}\) に対して \(\displaystyle \sum_{n=0}^{\infty}a_{n}x^{n}=a_{0}+a_{1}x+a_{2}x^{2}+\cdots\) を数列 \(\{a_{n}\}\) の母関数と言います。 例えば、 \({}_n \mathrm{ C }_0+{}_n \mathrm{ C }_1 x+ ...
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と形式に変更はありません。
分野的トピックス
第1問:複素数と方程式、複素数平面(Ⅲ)
第2問:図形と方程式、微分法・積分法、極限(Ⅲ)
第3問:微分法(Ⅲ)
第4問:式と証明、数列
3題が数Ⅲの内容を含む出題となりました。
また、頻出分野である場合の数・確率からの出題がなく、これは2002年以来のことです。
各大問について
第1問(標準)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
複素数平面上の円周上の点が表す複素数を解にもつ4次方程式について扱った融合問題で、複素数平面からの出題は2年連続となりました。
ただ、複素数平面らしさはそこまで強くはありません。
(2) までは基本的な内容なのですが、(3) は逆像法の考え方に習熟していないと厳しい存在領域に関する問題です。
処理自体は最後は解の配置問題に帰着しますが、そこに辿り着けるかどうかでしょう。
難易度・分量ともに標準と言ってよい内容ですが、差はつきやすく、今年のセットでは合否のキーになり得るポジションの問題で、
合格者にとってのスタンダード
とも言えるでしょう。
第2問(やや難)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
2円が相異なる2点で交わるとき、2円で囲まれる部分の \(x\) 軸回転体の体積について考える問題です。
文字を多く含み、計算量が多少あるものの少なくとも (2) , できれば (3) までは何とか辿り着きたいところです。
名大は文字を含んだままの計算をさせることが非常に多く、重量級の計算を容赦なく要求します。
本問は (3) の計算を合わせられるかがキーとなるでしょう。
(4) も方針は迷う余地はありませんが、計算がかなり大変で、相当なストレスがかかります。
発想面だけ見たら易しいですが、計算量含め完答するということであればやや難と言えます。
第3問(標準)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
グラフを用いた視覚化を通じて方程式の実数解について考察するという定番のテーマで、今年のセットでは唯一完答が十分に狙えると言ってよい問題です。
方程式の左辺と右辺をどのように組み替えて見るのが最善なのかを手探りで探って右往左往する受験生も一定数はいたと思います。
定数分離をするのが問題全体を通してみると最善なのですが、気がつかない人がいてもおかしくはありません。
ただ、気がつかなくても2回微分してゴリゴリ進めていけば無理ではありません。
そういった意味で多少の路線の違いはあれど、それが劇的に差を生むほどではないため何とか確保したいところでしょう。
第4問(やや難)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
第1種スターリング数と呼ばれるものを扱った問題ですが、ほとんどの受験生にとっては初見プレイだったでしょう。
二項係数に関する扱いの習熟度が出来不出来を左右したことと思います。
名大は二項係数を絡めた論証問題を一時期好んで出題していましたが、本問も名大の過去問と照らし合わせてみると「らしさ」が出ていると感じました。
分量は少な目ではありますが、抽象度が非常に高く、題意の主張を把握するのに時間、エネルギーを要する問題です。
(3) は粘り強い計算力も要求され、完答は中々難しいと思います。
見た目にビビらなければ (2) ぐらいまで確保することは無理がないのですが、見た目にビビって撤退してしまった受験生もいそうです。
全体的に
150分4題ということで、1題あたりにかけられる時間が比較的余裕はありますが、1題1題がそれなりに重いため、力強い計算力・処理力は必須です。
公式集が配布されることも有名で、単なる公式の運用しかできない人はお断りというのが目に見える対応です。
2021年、2022年はコロナへの配慮もあったのか比較的穏やかな出題でしたが、今年 (2023年) は確かな演習経験があるのは前提の上で、その場力も必要となるような問題が目立ち、
やや難化
と言えるでしょう。
2020年以前は結構凶悪な出題が続いていました。
今年はその水準とまではいかないまでも、その水準に戻りそうな雰囲気が感じられるセットかなという印象を受けました。
また、今年は場合の数・確率からの出題がなく、2002年以来のことでした。
ただ、4題という出題枠の中で逆に今まで20年以上出題があったわけです。
そう考えると、今までが偏っていたという見方もできるかもしれません。
基本的にはヤマを張るような勉強ではなく、何が出題されてもきちんと対応できるように準備するという王道的な態度で学習を進めることが望まれます。
今年は第3問が比較的定番の話題であり、手なりに進めても無理のない範囲で完答が狙える一問だったため、ここを確保しないと他でのリカバリーが難しくなります。
個人的には第1問が合否を分けるレベルの標準問題だと感じました。
第2問、第4問はつまみ食いでも致し方なしといったところでしょう。
自分の力をブラッシュアップさせるのが目的であれば時間無制限でウンウン唸って考える時間は必要ですが、本番を想定した過去問演習の段階では150分の立ち回りを含めた時間の使い方についてもしっかりと練習しておきましょう。
2023年度名古屋大学理系 各解説記事
2023年度 名古屋大学 理系 第1問【複素数平面上の円上の点を解にもつ4次方程式】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 複素数平面上での円上の点が表す複素数を解にもつ4次方程式についての問題です。 図形的な意味合いと式的な意味合いを結びつける力も要求され、総合的な力が問われています。 (1) はなまじ形がキレイな結論であるため、逆にアタフタするかもしれませんが、冷静に沈めたいところです。 (2) は \(p\) , \(q\) , \(r\) , \(s\) を解 \(\alpha\) , \(\beta\) の情報を含む \(t\) , \(u\ ...
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2023年度 名古屋大学 理系 第2問【2円で囲まれる部分のx軸回転体】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 2円が相異なる2点で交わるとき、2円で囲まれる部分の \(x\) 軸回転体の体積について考える問題です。 文字を多く含み、計算量が多少あるものの少なくとも (2) , できれば (3) までは何とか辿り着きたいところです。 (4) は (3) で得た \(V(r)\) を \(r\) で微分し、\(V'(r)\) を計算して増減表を得ることができれば解決なので、方針面では迷う余地はありませんが、かなりエグイ計算に襲われます。 \(r=a-b ...
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2023年度 名古屋大学 理系 第3問【方程式の実数解の個数】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 方程式の実数解の個数について考えるという問題で、テーマとしては定番寄りの話題です。 微分法を用いてグラフの概形を捉え、方程式の解を視覚化することで共有点の個数を考えるという点で、方針面では迷う余地はありません。 ただ、与えられた方程式をどのような形で見るのが最善なのかという点で、アタフタする部分があるかもしれません。 与えられた方程式をどのように見ても、一応解けるには解けますが、最適な道を行こうと思うと、問題全体を俯瞰する必要が出てきます。 ...
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2023年度 名古屋大学 理系 第4問【第1種スターリング数】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 第1種スターリング数を扱った問題ですが、多くの受験生にとって初見だと思います。 一般に、数列 \(\{a_{n}\}\) に対して \(\displaystyle \sum_{n=0}^{\infty}a_{n}x^{n}=a_{0}+a_{1}x+a_{2}x^{2}+\cdots\) を数列 \(\{a_{n}\}\) の母関数と言います。 例えば、 \({}_n \mathrm{ C }_0+{}_n \mathrm{ C }_1 x+ ...
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