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解答速報

2022年度 大阪大学 理系数学【総評と感想】

2022年度大阪大学理系 各解説記事

2022年度 大阪大学 理系第1問【1次分数変換】【アポロニウスの円】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 1次分数変換による点の軌跡を求める定番の話題です。 手元に |z-\displaystyle \frac{3}{2}|=r という z を縛っている式があります。 この状況で、w を縛っている式を Get したいわけです。 zw の関係式である z+w=zw という式から z=w の式 という形にして、先ほどの \(|z-\displaystyle \frac{3}{2}|=r\ ...

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2022年度 大阪大学 理系第2問【3次方程式の有理数解】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) \cos{n\theta}\cos{\theta}n 次式で表せるという チェビシェフの多項式 という有名ネタをベースとした問題です。 阪大受験生であれば、この類の類題は経験したことがあるとは思います。 流れが独特なところもあるため、経験による部分が大きい問題ではあります。 特に最後のオチの (3) については、 整数係数方程式特有の話題 \(a_{n}x^{n}+a_{n-1}x^{n-1}+ \cdot ...

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2022年度 大阪大学 理系第3問【線分の通過領域】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 線分の通過領域をテーマとする難関大では頻出の話題です。 本サイトでも、 などで扱っています。 この話題に対しては、順像法、逆像法、包絡線など、様々な解法があります。 特に逆像法については、考え方が独特であり、ある程度数をこなし慣れていないと中々自分のものにすることが難しいでしょう。 本サイトでは テーマ別演習:逆像法 で扱っており、通過領域に関しては第3講で扱っています。 通過領域は、話題的に難易度は高いですが、難関大においては登場頻度は高く ...

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  • 150分
  • 5題
  • 記述式

と、形式に変更はありません。

分野的トピックス

第1問:複素数平面(Ⅲ)

第2問:高次方程式・三角関数

第3問:図形と方程式

第4問:極限・微分法(Ⅲ)

第5問:積分法(Ⅲ)

と、半分以上が数Ⅲ分野からの出題で、数Ⅲ主体の出題は例年の傾向です。

各大問について

第1問(やや易)

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

複素数平面上で点 z の動きに対し、 w=f(z) という関係で与えられる点 w の軌跡を考える定番の問題です。

通常 w=f(z) という形で w が与えられるのが多い中、本問は

z+w=zw

という和と積の形で与えられている点がオシャレです。

類題経験は阪大の受験生であればあるはずで、やるべきことは明確に見えている必要があります。

z が動く円の半径が r ということで、文字で与えられているため

  • 場合分けが発生する
  • 計算量は若干ある

ということになりますが、方針が見えている以上、取りこぼしたくはありません。

結論としては2定点からの距離の比率が一定となる点の軌跡となり

  • 垂直二等分線
  • アポロニウスの円

という結論も、しっかりと学習してきた受験生ならば見えるはずです。

話題の頻出度からすると難易度はやや易です。

第2問(標準)

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

三角関数として表現できる値を解をもつ3次方程式であり、背景には「チェビシェフの多項式」があります。

名前自体はともかく、これも様々な問題集に収録されている話題であり、類題の経験もあるはずです。

テーマ別演習:チェビシェフの多項式

チェビシェフの多項式 第1講【第1種チェビシェフ多項式】【2008年度 東京慈恵会医科大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)   チェビシェフの多項式と呼ばれる有名テーマを扱った問題で、大学入試においても様々な角度から切り込まれています。 初見だと厳しい内容もありますので、代表的な問題を今回シリーズものとして扱うことにしました。 このシリーズのまとめはこちら   まず、 \cos{n\theta}=T_{n}(\cos{\theta}) を満たす多項式 T_{n}(x) のことを(第1種)チェビシェフの多項式といいます。 例をあげ ...

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チェビシェフの多項式 第2講【チェビシェフの多項式が満たす漸化式】【2015年度 千葉大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)   チェビシェフの多項式と呼ばれる有名テーマを扱った問題で、大学入試においても様々な角度から切り込まれています。 初見だと厳しい内容もありますので、代表的な問題を今回シリーズものとして扱うことにしました。 今回は第2弾です。 このシリーズのまとめはこちら 今回はチェビシェフの多項式 T_{n}(x) が満たす漸化式について考えます。 チェビシェフの多項式 T_{n}(x) は チェビシェフの多項式が満たす漸化式 $$ ...

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チェビシェフの多項式 第3講【第2種チェビシェフの多項式】【1996年度 京都大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)   チェビシェフの多項式と呼ばれる有名テーマを扱った問題で、大学入試においても様々な角度から切り込まれています。 初見だと厳しい内容もありますので、代表的な問題を今回シリーズものとして扱うことにしました。 今回は第3弾です。 このシリーズのまとめはこちら 前回までに \cos{n\theta}=T_{n}(\cos{\theta}) を満たす多項式 T_{n}(x) について考えてきました。 じゃあ \(\sin{n ...

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でガッツリ扱っています。

最後の \cos{\displaystyle \frac{2\pi}{7}} が無理数であることについては、もちろん背理法であり、

整数係数方程式特有の話題

a_{n}x^{n}+a_{n-1}x^{n-1}+ \cdots +a_{1}x+a_{0}=0 という n 次の整数係数方程式において

この整数係数方程式が有理数解をもつならば x= \displaystyle \frac{a_{0} の約数}{a_{n} の約数} の形に限られ、

とくに a_{n}=1 というモニック方程式においては、有理数解ならば実は整数解である。

という有名事実が自分のものになっているかなども問われます。

これについては

参考モニック方程式【最高次が1である高次方程式】【2019年度 東京学芸大学ほか】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)   最高次の係数が 1 であるような整数係数 n 次方程式を n 次のモニック多項式と呼びます。 入試において ...

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などでとりあげています。

難易度は標準です。

第3問(標準)

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

「線分の通過領域」というトピックスで、これも難関大では頻出の話題の一つです。

本サイトでも、

参考直線の通過領域、線分の通過領域【2009年度 横浜国立大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 難関大頻出の話題である「通過領域」の問題の中でも、一番シンプルな「直線の通過領域」について考えます。 さらに、その延長にある「線分の通過 ...

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などで扱っています。

もちろん初見では厳しいのですが、しっかり勉強してきましたという人にとっては解法は様々考えられ、目移りするぐらいです。

難易度は標準です。

第4問(標準)

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

縮小関数によって定まる漸化式によって定まる数列の極限を考える問題です。

これまた難関大では頻出で、経験を積んでおきたい話題です。

本サイトでも

参考縮小関数による漸化式の極限【関数によって定まる数列の極限】【1994年度 筑波大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)   縮小関数による漸化式の極限という、難関大ではちょこちょこ出題されるテーマです。 もし、初見であれば、まずは初見でやってみて ...

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で扱っています。

確かに初見だと厳しいものがあるかもしれません。

ただ、受験生、特に現役生が出会える問題に限りがあるのは重々承知のうえで厳しいことを言いますが、大阪大学の受験生であれば、試験場ではじめましてというのは準備不足と言わざるを得ません。

難易度は標準です。

第5問(標準)

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

パラメータ表示された曲線が絡む面積で、これも面積計算の分野における定番の話題です。

パラメータ表示された曲線については

  • 概形の図示
  • 面積計算
  • 回転体の体積計算
  • 弧長
  • 接線の立式

など、一通りの扱いについて習熟しておく必要があります。

本サイトでも

有名曲線シリーズ

円の垂足曲線【動点の動く軌跡と動いた道のり】【2005年度 岡山大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 曲線上の動点 T における接線に、定点から下ろした垂線の足の軌跡を「垂足曲線」と言います。 本問は円の垂足曲線を扱った問題です。 (以下ネタバレ注意)   + クリック(タップ)して続きを読む 一般的に垂足曲線は y=f(x) のような表示だと複雑になりますから、パラメータ表示(媒介変数表示)を用いて表現します。 ココがポイント ベクトルをつないでパラメータ表示 サイクロイド系の有名曲線もこのポイントの考え方でパラメ ...

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有名曲線【エピサイクロイドと長さ】【1989年度 東京工業大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 【他の有名曲線を扱った問題はこちら】   さて、本問はサイクロイド3兄弟の一人、エピサイクロイドという有名曲線を扱った問題です。 サイクロイドとは ガムを踏んだタイヤが転がったときの、ガムの軌跡 です。 (以下ネタバレ注意)   + クリック(タップ)して続きを読む どれだけ回転したかを表す量 \theta を導入すれば、点 P (x \ , \ y) について $$\begin{eqnarray} ...

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有名曲線【ハイポサイクロイド】【アステロイド】【2014年度 岐阜薬科大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)   【他の有名曲線を扱った問題はこちら】   さて、本問はサイクロイド3兄弟の一人、ハイポサイクロイドという有名曲線を扱った問題です。 サイクロイドとは ガムを踏んだタイヤが転がったときの、ガムの軌跡 です。 (以下ネタバレ注意)   + クリック(タップ)して続きを読む どれだけ回転したかを表す量 \theta を導入すれば、点 P (x \ , \ y) について $$\begin{e ...

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で、有名曲線をテーマとし、上記の基本を諸々扱っています。

難易度は標準です。

全体的に

今年の大阪大学については

頻出の上級テーマ

が5題全てを占めました。

  • 第1問:1次分数変換による円円対応(反転)
  • 第2問:チェビシェフの多項式とモニック方程式の扱い
  • 第3問:線分の通過領域
  • 第4問:縮小関数による漸化式
  • 第5問:パラメータ表示された曲線の面積

と、

  • しっかり学習し、準備していればキッチリ取れるが、試験場ではじめましてだと確保するのは極めて厳しい

という類の問題です。

どの問題も、阪大受験生が取り組んでいるであろう問題集にはほぼ収録されているはずで、「どこかで目にしたことある」という感想をもった受験生が多いはずです。

その意味では、本サイトが今年一番貢献したのは大阪大学だったかもしれません。

普段の学習の中で、

  • 本当にマスターしたか
  • できたつもりになっていただけだったか

を振り分ける問題としてうってつけのセットだったと思います。

例年は計算が重く、完答するのが大変な問題も目立つ中、今年については多少の計算量はあるものの、例年ほど手数は多くはありません。

話題そのものの頻出度も考えると昨年に比べてやや易化と言えます。

5題中5題とも「The典型問題」であることに驚きましたが、きっちりと差がつくとは思います。

ただ、今後もこのような傾向が続くかについては今の段階では何とも言えず、従来阪大で出題されてきた思考力を要する本格的な問題が並ぶということも十分考えられます。

闇雲に難問を解き漁るだけでは、空回ってしまいます。

来年度以降の受験生については、典型問題に対する確実な理解と瞬発力の大切さを教訓としてください。

上記で述べたような「できたつもり」を出来る限り排除し、自信をもってできると言えるよう時間をかけて足腰を鍛えてほしいと思います。

それが結果的に難問に立ち向かう足掛かりとなってきます。

2022年度大阪大学理系 各解説記事

2022年度 大阪大学 理系第1問【1次分数変換】【アポロニウスの円】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 1次分数変換による点の軌跡を求める定番の話題です。 手元に |z-\displaystyle \frac{3}{2}|=r という z を縛っている式があります。 この状況で、w を縛っている式を Get したいわけです。 zw の関係式である z+w=zw という式から z=w の式 という形にして、先ほどの \(|z-\displaystyle \frac{3}{2}|=r\ ...

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2022年度 大阪大学 理系第2問【3次方程式の有理数解】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) \cos{n\theta}\cos{\theta}n 次式で表せるという チェビシェフの多項式 という有名ネタをベースとした問題です。 阪大受験生であれば、この類の類題は経験したことがあるとは思います。 流れが独特なところもあるため、経験による部分が大きい問題ではあります。 特に最後のオチの (3) については、 整数係数方程式特有の話題 \(a_{n}x^{n}+a_{n-1}x^{n-1}+ \cdot ...

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2022年度 大阪大学 理系第3問【線分の通過領域】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 線分の通過領域をテーマとする難関大では頻出の話題です。 本サイトでも、 などで扱っています。 この話題に対しては、順像法、逆像法、包絡線など、様々な解法があります。 特に逆像法については、考え方が独特であり、ある程度数をこなし慣れていないと中々自分のものにすることが難しいでしょう。 本サイトでは テーマ別演習:逆像法 で扱っており、通過領域に関しては第3講で扱っています。 通過領域は、話題的に難易度は高いですが、難関大においては登場頻度は高く ...

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