問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
2文字を含んだ不等式の証明問題を扱います。
今回は目に付く特徴によって様々な解法が考えられます。
何が自然に見えるかは人それぞれかと思います。
試験場でとれる解法は一通りですが、家で訓練のために解く演習段階ではぜひ色々な解法を考えてみてください。
(以下ネタバレ注意)
+ クリック(タップ)して続きを読む 今回の2文字 \(a\) , \(b\) は大小関係こそあるものの独立に動きます。 独立に動く2文字に対して有効な態度の一つに 予選決勝法 があります。 ひとまずどちらかを固定して予選を行い、その後固定を外して決勝戦を行うことを考えます。 どちらの文字を固定するかですが、\(0 \lt b \leq a\) というように範囲に上と下がある \(b\) についてを変数と見て、\(a\) を固定したいと思います。 そこで \(f(b)=\displaystyle \frac{n}{2} (a-b)(a^{n-1}+b^{n-1})-(a^{n}-b^{n})\) という、\(b\) の関数 \(f(b)\) を設定します。 詳しい計算結果はここでは省略しますが \(f'(b)=\displaystyle \frac{n}{2} \{-(n-2)b^{n-1}+a(n-1)b^{n-2}-a^{n-1}\}\) となります。 もう一発微分すると、\(a^{n-1}\) が消えることを見越して \(f''(b)\) を計算してやると \(f''(b)=\displaystyle \frac{n}{2}(n-1)(n-2)b^{n-3}(-b+a)\) となり、\(n \geq 3\) のときは \(f''(b) \geq 0\) ということが言え、 \(f'(b)\) は単調増加 ということが言えます。 ゆえに、\(0 \lt b \leq a\) において \(f'(b) \leq f'(a)=0\) が得られ、 \(f(b)\) が単調減少 ということが言えます。 これにより、\(0 \lt b \leq a\) において \(f(b) \geq f(a)=0\) ということが言えました。 本来ならここで、\(f(b)\) の最小値が \(a\) を用いて表され、その最小値 ( 例えば \(m(a)\) などとおく ) が \(0\) 以上であるという決勝戦があるわけですが、今回は決勝戦を待たずとも \(f(b) \geq 0 \) ということが言えたため、解決です。 なお、\(n=1\) , \(n=2\) のときは個別検証で潰せば問題ありません。 示すべき不等式の各項は全て \(n\) 次です。 このような式を同次式と言いますが、同次式では以下の工夫により文字数を減らすことができます。 示すべき不等式 \(a^{n}-b^{n} \leq \displaystyle \frac{n}{2} (a-b)(a^{n-1}+b^{n-1})\) の両辺を \(b^{n}\) で割ると \((\displaystyle \frac{a}{b})^{n}-1 \leq \displaystyle \frac{n}{2}(\displaystyle \frac{a}{b}-1)\{(\displaystyle \frac{a}{b})^{n-1}+1\}\) となりますから、\(\displaystyle \frac{a}{b}=t\) などとおくことで \(t^{n}-1 \leq \displaystyle \frac{n}{2} (t-1)(t^{n-1}+1)\) となり、示すべき不等式が \(t\) という1変数に関するものとなり、幾分か楽になります。 あとは、 \(0 \lt b \leq a\) ということから \(t\) の範囲は \(t \geq 1\) となり、この範囲で \(f(t)=(\displaystyle \frac{n}{2}-1)t^{n}-\displaystyle \frac{n}{2}t^{n-1}+\displaystyle \frac{n}{2}t-\displaystyle \frac{n}{2}+1\) と設定し、微分を利用して \(f(t) \geq 0\) を目指すことを考えればよいでしょう。 示すべき不等式の形には作為めいたものを感じます。 とくに、右辺に含まれる \(\displaystyle \frac {1}{2}(a-b)(a^{n-1}+b^{n-1})\) というのは という台形の面積です。 そうなると、 \(\displaystyle \int_{b}^{a} x^{n-1} dx \leq \displaystyle \frac {1}{2}(a-b)(a^{n-1}+b^{n-1})\) という面積比較を考えたくなるでしょう。 これにより \(\displaystyle \frac{a^{n}-b^{n}}{n} \leq \displaystyle \frac {1}{2}(a-b)(a^{n-1}+b^{n-1})\) すなわち \(a^{n}-b^{n} \leq \displaystyle \frac{n}{2} (a-b)(a^{n-1}+b^{n-1})\) を得ることになり、一発 KO です。路線1:予選決勝法
路線2:同次式の処理
路線3:視覚化