(1) について
複素数 \(z\)の絶対値 \(|z|\) の扱いとしては
- \(|z|=x+yi\) に対して、\(|z|=\sqrt{x^{2}+y^{2}}\) と実部虚部をもとに扱う
- \(|z|^{2}=z\bar{z}\) と共役複素数を持ち出す
というのが大きな路線です。
今回は共役複素数を持ち出したとしても、劇的なうまみはなさそうに感じます。
極形式で与えられているとはいえ、
\(r\cos{\theta}\) , \(r\sin{\theta}\)
という立派な実部虚部がありますから、それをもとに計算していけばよいと思います。
(2) について
ひとまず 「\(\cdots\)」という部分を何とかしたいと思います。
そうなると、
初項 \(1\) , 公比 \(z\) の等比数列の和
として処理したくなります。
\(z=1\) のときは easy です。
\(z \neq 1\) のときは筋が悪いと計算が大変です。
【解答】ではほんの少し工夫をしました。
ただ、
\(\displaystyle \frac{(r^{n+1})^{2}-2r^{n+1}\cos{(n+1)\theta}+1}{r^{2}-2r\cos{\theta}+1}\)
という試験場だと疑心暗鬼になりそうな形が出てきます。
尚更、何かうまくやる方法があるのかを探したくなってしまいますね。
(家で唸る分にはいいのですが、試験場だと怖い類の問題です。)
(3) について
\(z=1\) のときはそもそもの条件
\(|z+\displaystyle \frac{1}{2}| \lt \displaystyle \frac{1}{2}\)
を満たしません。
なので、場合分けは必要なく、\(z \neq 1\) のときを考えればよいでしょう。
誘導を使うとなると
\(\displaystyle \frac{(r^{n+1})^{2}-2r^{n+1}\cos{(n+1)\theta}+1}{r^{2}-2r\cos{\theta}+1} \lt 1\)
を示せばよいことになります。
この時点で若干眩暈と吐き気がします。
分母を払うにしても、不等号の向きがひっくり返るかどうか気にしなければなりません。
(今回は分母の出どころが \(|z-1|\) という正の値なので不等号の向きはひっくり返りませんが)
ただ、分母を払って定数項 \(1\) が消えたとて
\((r^{n+1})^{2}-2r^{n+1}\cos{(n+1)\theta} \lt r^{2}-2r\cos{\theta}\)
を示すことになるため、眩暈と吐き気はおさまりません。
このことから、示すべき不等式の左辺である
\(\displaystyle \frac{(r^{n+1})^{2}-2r^{n+1}\cos{(n+1)\theta}+1}{r^{2}-2r\cos{\theta}+1}\)
をいじくって何とかしようという方向性は捨てたくなります。
つまり
\(=\cdots=\cdots=\cdots\)
というように「等号を繋いでいく」ということを諦めて
\( \leq \cdots \leq \cdots \leq \cdots\)
というように「不等号を繋いでいく(評価する)」という路線を見据えていきたいわけです。
そこで
\(\displaystyle \frac{(r^{n+1})^{2}-2r^{n+1}\cos{(n+1)\theta}+1}{r^{2}-2r\cos{\theta}+1}\) を大きくしよう、大きくしよう
という気持ちでこの式を眺めます。
ここからが冒頭述べた「観察力」の問題です。
観察力がある方は
「ん?こんなもん \(1\) より小さくなるやろ」
と直感的に分かってしまいます。
ピンとくるものがあったでしょうか。
解答を見る前にぜひ、「そりゃそうだわ」と言えるように観察してみましょう。
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