例題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
素数が無限に存在することは紀元前から分かっていたことです。
ユークリッドの有名な数学書である原論での証明が有名で、歴史的内容を含む問題であり、思考力を試すというよりは、教養的側面の強い話題です。
現在、様々な証明法が知れ渡っていますが、ここではユークリッドの考えを基にした背理法による証明と、2006年に発表されたフィリップ・サイダック氏による証明を紹介します。
(以下ネタバレ注意)
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背理法による証明
以下の証明は厳密にはユークリッドの示した方法とは異なるようですが、骨格は同様です。
証明1
\(n\) を正の整数とし、素数が \(n\) 個しかないと仮定する。
その \(n\) 個の素数を小さい方から
\(p_{1}\) , \(p_{2}\) , \(\cdots\) , \(p_{n}\)
とする。
このとき
\(P=p_{1}p_{2}\cdots p_{n}+1\)
という数 \(P\) を考える。
\(P\) は \(p_{1}\) , \(p_{2}\) , \(\cdots\) , \(p_{n}\) のどれとも異なる。
素数は \(p_{1}\) , \(p_{2}\) , \(\cdots\) , \(p_{n}\) しかないと仮定していたことから、\(P\) は合成数ということになる。
合成数ということは \(P\) は \(p_{1}\) , \(p_{2}\) , \(\cdots\) , \(p_{n}\) のどれかで割り切れることになる。
しかし、\(P=p_{1}p_{2}\cdots p_{n}+1\) という \(P\) の定め方から \(P\) は
- \(p_{1}\) , \(p_{2}\) , \(\cdots\) , \(p_{n}\) のどれで割っても \(1\) 余る
ということになり、矛盾する。
よって、仮定は誤りで、素数は無数に多く存在する。
フィリップ・サイダック氏による証明
2006年にフィリップ・サイダック氏が非常に簡潔な証明を発表しました。
- \(n\) , \(n+1\) という連続 \(2\) 整数が互いに素
という大学入試でもよく決め手となる基本事項を用いた証明です。
証明2
\(n\) を \(2\) 以上の整数とする。
\(N_{1}=n(n+1)\)
と定めると、\(n\) , \(n+1\) は互いに素であるため、
- \(N_{1}\) は少なくとも 2 種類の素因数 \(p_{1}\) , \(p_{2}\) をもつ。
次に
\(N_{2}=N_{1}(N_{1}+1)\)
と定めると、
- \(N_{1}\)が素因数\(p_{1}\) , \(p_{2}\) をもつ
\(N_{1}\) , \(N_{1}+1\) は互いに素であるため、
- \(N_{1}+1\)は \(p_{1}\) , \(p_{2}\) 以外の素因数 \(p_{3}\) をもつ
これより
\(N_{2}\) は少なくとも 3 種類の素因数 \(p_{1}\) , \(p_{2}\) , \(p_{3}\) をもつ。
以後、同様の操作を繰り返すことにより、任意に多くの素因数をもつ数が得られることになり、素数が無数に存在する。
類題について
類題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
\(6n-1\) という形の素数が無数に存在するということを示す問題です。
例題の知識的側面を基に、誘導を活用する力も必要です。
追記
類題の解答に誤りがありましたので、修正版に差し替えました。
ご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。
例題の解答はコチラ
類題の解答はコチラ