例題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
定積分の計算というシンプルなオチですが、ノーヒントではほとんど差がつかないでしょう。
特に (3) で誘導の使い方が分からないと、頭に血が昇り、ムキになって
誘導に頼らずやってやる
と、ますます深みに嵌まってしまうかもしれません。
そこまで複雑そうな関数にも見えないので尚更です。
最近では、こういったあまりに技巧的な要素を含む問題を嫌う傾向にありますが、芸術鑑賞と考えれば本問の話の進み方は初見の方にとっては感動的です。
(以下ネタバレ注意)
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(1) について
y=f(x) のグラフに対して、y=f(-x) のグラフというのは
- y=f(x) のグラフを y 軸対称移動したもの
なので、イメージ的には
- \displaystyle \int_{-a}^{a} f(x) dx=S_{1}+S_{1}+S_{2}
- \displaystyle \int_{0}^{a} f(-x) dx+\displaystyle \int_{0}^{a} f(x)=S_{1}+(S_{1}+S_{2})
なので、イメージ的には納得がいきますが、もちろん厳密性には欠けます。
ただ、式でやるにせよこのイメージは強力な武器であり、このイメージにより
\displaystyle \int_{-a}^{0} f(x) dx=\displaystyle \int_{0}^{a} f(-x) dx
という対称性が式による証明の決め手になることが想像できるでしょう。
そこで
\displaystyle \int_{-a}^{a}f(x) dx=\displaystyle \int_{-a}^{0} f(x) dx+\displaystyle \int_{0}^{a} f(x) dx
と積分区間を分割し、\displaystyle \int_{-a}^{0} f(x) dx について考えていきます。
目標の式を見据えると、当然
x=-t
という置換が目につくでしょう。
(2) について
路線1:(1) の利用
積分区間が対称的であることから、(1) の活用が見込めます。
f(x)=\displaystyle \frac{1}{1+e^{x}} と設定し、f(-x)+f(x) を計算してみると
f(-x)+f(x)=1
というすこぶるきれいな結果になります。
路線2:不定積分の導出
\displaystyle \int \displaystyle \frac{1}{1+e^{x}} dx は不定積分として導出することが可能です。
\begin{eqnarray} \displaystyle \int \displaystyle \frac{1}{1+e^{x}} dx &=& \displaystyle \int \displaystyle \frac{1+e^{x}-e^{x}}{1+e^{x}} dx \\ &=& \displaystyle \int (1-\displaystyle \frac{e^{x}}{1+e^{x}}) dx \\ &=& x-\log{(1+e^{x})}+C \end{eqnarray}
あるいは
\begin{eqnarray} \displaystyle \int \displaystyle \frac{1}{1+e^{x}} dx &=& \displaystyle \int \displaystyle \frac{e^{-x}}{e^{-x}+1} dx \\ &=& -\log{(e^{-x}+1)}+C \end{eqnarray}
として計算できます。
本問の流れからすれば、方針1が有力な路線ですが、(2) はノーヒントで出題されても文句は言えないレベルですので、方針2についても一応触れておきました。
(3) について
一見すると、積分区間に対称性がなく、単純にそのまま (1) を使えるというわけにはいかないようです。
(2) の路線2のように、(1) に頼らずにやっていこうと思っても中々うまくいかないでしょう。
やはりどうにかして (1) を使いたいという気持ちをもちつづけたいところです。
観察力、洞察力の問題ですが
\displaystyle \int_{2^{-1}}^{2^{1}}
というように見えるとしめたもので、x=2^{t} という置換により、積分区間が
\displaystyle \int_{-1}^{1}
と、対称的になります。
ここから先は少し不愉快な数字も入ってきますが、方針的には (1) の関係式を考えるだけなので、手なりに進めていけるはずです。
今回の決め手となる (1) の関係について似たような話題で
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参考king property【対称性を利用した置換積分】【2005年度 名古屋大学ほか】
例題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) king property (キングプロパティー) と呼ばれる置換積分がバックボーンにあります。 ノーヒントだと泡を吹く受験生が多数出て ...
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などもあります。
適宜ご活用ください。
追記
類題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
ノーヒントでの出題です。
形からしてみたくなることを色々試していくうちに活路が見えてきます。