ベクトルの三角不等式
(1) の (イ) で証明の対象となっている
\(|\vec{x}|+|\vec{y}| \geq |\vec{x}+\vec{y}|\)
はベクトルの三角不等式と呼ばれます。
図形的には
という図において、三角形の成立条件を考えると当然と思える内容です。
「三角不等式」と呼ばれるのも納得でしょう。
今回の証明においては、この図形的方面から証明してもよいのですが、
- 零ベクトルが紛れ込むとき
- \(\vec{x}\) と \(\vec{y}\) が平行のとき
など特殊なケースも考えて場合分けする必要があります。
なので、解答では式的にぐうの音も出ない形で証明することにします。
ベクトルの大きさについては2乗を考えるのがセオリーであり、
\((|\vec{x}|+|\vec{y}|)^{2} \geq |\vec{x}+\vec{y}|^{2}\)
を示す方向で考え、
\((|\vec{x}|+|\vec{y}|)^{2}-|\vec{x}+\vec{y}|^{2} \geq 0\)
を目指します。
(2) について
\(|\vec{x}+\vec{y}|+|\vec{x}-\vec{y}|\) を小さくしようという気持ちで三角不等式を用いていきます。
その気持ちがあれば
$$\begin{eqnarray}
|\vec{x}+\vec{y}|+|\vec{x}-\vec{y}| &=& |\vec{y}+\vec{x}|+|\vec{y}-\vec{x}| \\
&\geq& |(\vec{y}+\vec{x})+(\vec{y}-\vec{x})|\\
&=& |2\vec{y}|\\
&=&2|\vec{y}|
\end{eqnarray}$$
と手なりに三角不等式によって、\(\vec{x}\) を消していけるでしょう。
(3) について
\(\vec{z}=t\vec{x}+(1-t)\vec{y}\) を \(|\vec{z}+\vec{p}|+|\vec{z}-\vec{p}|\) に代入すると
\(|\vec{z}+\vec{p}|+|\vec{z}-\vec{p}|=|t\vec{x}+(1-t)\vec{y}+\vec{p}|+|t\vec{x}+(1-t)\vec{y}-\vec{p}|\)
となります。
ここからどうするかが本問の難しさです。
示すべき
\(|\vec{z}+\vec{p}|+|\vec{z}-\vec{p}| \leq R\)
という不等式は \(t\) の値に依らないものです。
つまり、 \(t\) が消えてこの形の不等式になると考えると
\(R=tR+(1-t)R\)
と見て、
\(|\vec{z}+\vec{p}|+|\vec{z}-\vec{p}| \leq tR+(1-t)R\)
を目指すように見ることができるとしめたもので、条件を活かすことも睨みながら逆算的に考えると活路が見えると思います。
解答はコチラ