例題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
x^{3}-3x+1=0 という3次方程式の解が x^{2}-2 という2次関数を用いてグルグル巡回するという面白い話題です。
丁寧な誘導があるため、本問を解くこと自体は基礎力があればそこまで難儀ではありませんが、
「こんなカラクリどうやって思いついたのかしら」
という疑問に少しだけお応えするために、本問のカラクリや背景的なものに少しフォーカスしてみたいと思います。
ひとまずは本問を解いてみてください。
(以下ネタバレ注意)
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(1) について
これについては微分してグラフを書けば、題意の主張が示されます。
(2) について
f(\alpha)=0 であるとき、f(g(\alpha))=0 であることを示すわけです。
したがって、f(g(\alpha)) を計算していけばよいでしょう。
f(g(\alpha))=f({\alpha}^{2}-2)=({\alpha}^{2}-2)^{3}-3({\alpha}^{2}-2)+1
とほぐしていき、
f(g(\alpha))={\alpha}^{6}-6{\alpha}^{4}+9{\alpha}^{2}-1
という部分までは手なりに進むはずです。
ここからは少しだけ頭を使います。
最終的に f(\alpha)=0 ということが決め手となってf(g(\alpha))=0 となるわけですから、
f(g(\alpha))=({\alpha}^{3}-3{\alpha}+1)( \ \ \ \ )
という形で因数分解できるというラストシーンを夢見れば、
- {\alpha}^{6}-6{\alpha}^{4}+9{\alpha}^{2}-1 を {\alpha}^{3}-3{\alpha}+1 で割る
という気持ちが湧いてくるはずです。
(3) について
(2) から g({\alpha}_{1}) , g({\alpha}_{2}) , g({\alpha}_{3}) も f(x)=0 の解ということになります。
このことから、これらは
{\alpha}_{1} , {\alpha}_{2} , {\alpha}_{3} と 1 対 1 対応する
ということになります。
「どれがどれに対応するか」を把握するにあたっては大小関係が決め手となるでしょう。
今、
{\alpha}_{1} \lt {\alpha}_{2} \lt {\alpha}_{3}
であり、今回の示すべき結論を見ると
g({\alpha}_{2}) \lt g({\alpha}_{3}) \lt g({\alpha}_{1})
であることを示せばよいわけです。
ここからは方針が2通りあります。
方針1:グラフから評価する
というグラフを基に、{\alpha}_{1} , {\alpha}_{2} , {\alpha}_{3} の範囲を絞り
- {{\alpha}_{1}}^{2}-2 , {{\alpha}_{2}}^{2}-2 , {{\alpha}_{3}}^{2}-2 の範囲を絞る
という方針が考えられ、こちらを【解 1】で扱っています。
方針2:差を取る
g({\alpha}_{2}) \lt g({\alpha}_{3}) \lt g({\alpha}_{1})
を示すにあたって、素直に差を取って符号を調べるという態度も自然でしょう。
その際
g({\alpha}_{1})-g({\alpha}_{3}) \gt 0
を示す部分で、少し頭を使うことになります。
この路線は【解 2】で扱っています。
このカラクリの出どころと今回の3次方程式の解
今回扱った、x^{3}-3x+1=0 という3次方程式は実は解くことができます。
ただ、ノーヒントでこれを解けというのは少々酷なものがあります。
そこで、誘導の付いた問題形式でもう1題考えてみましょう。
関連問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
こうしてみると、
えっ、2\cos{80^{\circ}} なんてものが解なの?
という驚きがあると思います。
それ以外の2解の導出過程も、誘導があると気持ちよく感じるでしょう。
例題と関連問題を結んでいる背景
精力的に学習を進めている人は、例題と関連問題を解いてピンとくるものがあったかもしれません。
特に、関連問題として \cos{ \ } で解を表現する部分や導出過程のカラクリから
チェビシェフの多項式
というキーワードがインスピレーションされた方もいると思います。
今回の例題で扱われている
- x^{3}-3x+1
- x^{2}-2
という多項式はチェビシェフの多項式と関連があります。
特に変形チェビシェフの多項式と呼ばれる形で、本サイトでも
テーマ別演習:チェビシェフの多項式
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併せて取り組むことで有機的に繋がっていくでしょう。