実践演習 極限・微分積分系

算術幾何平均【漸化式で定まる数列の極限】【2010年度 北海道大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

 

 

\(a_{n+1}=\displaystyle \frac{a_{n}+b_{n}}{2}\) ,  \(b_{n+1}=\sqrt {a_{n}b_{n}}\)

という漸化式で与えられる数列  {\(a_{n}\)} ,  {\(b_{n}\)}  の極限は

算術幾何平均

と呼ばれます。(ガウスによって深く研究された。)

本問は  \(b_{n+1}=\sqrt {a_{n+1}b_{n}}\)  なので、同じ括りにしてよいのか疑問ですが。
(本家の算術幾何平均と同じく \(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } a_{n} = \displaystyle \lim_{ n \to \infty } b_{n}\)  となる点は同じ)

 

(1)で実験をし、要領をつかんだところで、その結果から(2)の一般論に繋げていきます。

予想は立つと思いますから、その予想を証明するという流れです。

(3)で処理することになる  \(b_{n+1}=b_{n}\cos \displaystyle \frac{\theta}{2^{n+1}}\)  という漸化式は処理していくと

「バヨエーン、バヨエーン」

という声が聞こえてきます。
(ぷよぷよを知らない方はごめんなさい)

このタイプの漸化式は一昔前結構流行ったことがありました。

今現在は昔ほど頻出というわけではありませんが、しばしば見受けられるネタです。

初見で解ききるには確かな力が必要です。

 

本問ではありませんが、自分はこのカラクリの問題に試験場で出会いました。

その問題は誘導があったので、このカラクリに気づくことができ、試験中「面白いな、この問題」と思った記憶があります。

後にこのカラクリは

オイラーの無限積

$$\displaystyle \prod_{n=1}^\infty  \cos{\displaystyle \frac{x}{2^{n}}}=\cos{\displaystyle \frac{x}{2}}\cos{\displaystyle \frac{x}{4}} \cdots=\displaystyle \frac{\sin{x}}{x}$$

【証明】

\(\sin{x}\)

\(=2\cos{\displaystyle \frac{x}{2}}\sin{\displaystyle \frac{x}{2}}\)

\(=2\cos{\displaystyle \frac{x}{2}} \ 2\cos{\displaystyle \frac{x}{4}}\sin{\displaystyle \frac{x}{4}}\)

\(=2\cos{\displaystyle \frac{x}{2}} \ 2\cos{\displaystyle \frac{x}{4}} \ 2\cos{\displaystyle \frac{x}{8}}\sin{\displaystyle \frac{x}{8}}\)

\( \  \  \ \  \  \  \   \  \  \ \ \vdots\)

\(=2^n\cos{\displaystyle \frac{x}{2}}\cos{\displaystyle \frac{x}{4}}\cos{\displaystyle \frac{x}{8}}\cdots\cos{\displaystyle \frac{x}{2^n}}\sin{\displaystyle \frac{x}{2^n}}\)

であり、これより

\(\cos{\displaystyle \frac{x}{2}}\cos{\displaystyle \frac{x}{4}}\cos{\displaystyle \frac{x}{8}}\cdots\cos{\displaystyle \frac{x}{2^n}}=\displaystyle \frac{\sin{x}}{2^{n}\sin{\displaystyle \frac{x}{2^n}}}=\displaystyle \frac{\sin{x}}{x} \cdot \displaystyle \frac{\displaystyle \frac{x}{2^n}}{\sin{\displaystyle \frac{x}{2^n}}} \longrightarrow\displaystyle \frac{\sin{x}}{x}  (n\rightarrow \infty)\)

という背景を知るのですが、そういった意味で、この周辺の話題を整理するのも大変です。

ちなみに、このオイラーの無限積に \(x=\displaystyle \frac{\pi}{2}\)  を代入すると

ヴィエトの公式

\(\displaystyle \frac{2}{\pi}=\displaystyle \frac{\sqrt{2}}{2}\cdot \displaystyle \frac{\sqrt{2+\sqrt{2}}}{2} \cdot \displaystyle \frac{\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2}}}}{2} \cdots\)

と呼ばれる円周率 \(\pi\) についての等式を得ます。
※時系列的にはヴィエトの方がオイラーよりも前にこの等式に辿り着いていたようです。

そういった意味で、本問は色々な要素や話題が複雑に入っていると言えます。

その問題らも近いうちに関連問題として紹介したいと思います。

解答はコチラ

※追記(関連問題)

こちらもCHECK

オイラーの無限積 ヴィエトの公式【2005年度 名古屋大学ほか】

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