場合の数・確率系 実践演習

いびつなサイコロ【不変量に注目】【2008年度 東京工業大学ほか】

例題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

各面が等確率で出ないサイコロを考えるという設定で、この設定にバリバリ慣れ親しんでいますという人は多くはないでしょう。

昔名古屋大学で直方体のサイコロに関する論証問題がありましたが、本問は直方体とも限らないということで攻め崩す急所をどのように見出していくかが問われます。

(以下ネタバレ注意)

 

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(1) について

\(k=1 \ , \ 2 \ , \ \cdots \ , \ 6\) として、\(k\) の目が出る確率を \(p_{k}\) と設定します。

歪んでいようが、どれかの目は出るわけなので、

\(p_{1}+p_{2}+p_{3}+p_{4}+p_{5}+p_{6}=1\)

ということは言えるわけです。

一方、

\(P=p_{1}^{2}+p_{2}^{2}+p_{3}^{2}+p_{4}^{2}+p_{5}^{2}+p_{6}^{2}\)

です。

つまり、

\(p_{1}+p_{2}+p_{3}+p_{4}+p_{5}+p_{6}=1\)

という手元の条件から

\(p_{1}^{2}+p_{2}^{2}+p_{3}^{2}+p_{4}^{2}+p_{5}^{2}+p_{6}^{2} \geq \displaystyle \frac{1}{6}\)

まで辿り着きたいわけです。

1乗和から2乗和を評価する方法として

コーシー・シュワルツの不等式

がピンとくればしめたものです。

コーシーシュワルツの不等式そのものについては

参考コーシー・シュワルツの不等式の証明【示すべき形から方針を決定する】【2011年度 大分大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)   コーシー・シュワルツの不等式と呼ばれる有名不等式です。 今は範囲外ですが、行列という分野の中で「ケーリー・ハミルトンの定理 ...

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で証明まで含めてしっかり解説しています。

(2) について

\(Q=(p_{1}+p_{3}+p_{5})(p_{2}+p_{4}+p_{6})\) です。

\(Q \leq \displaystyle \frac{1}{4}\) の証明について

\(Q\) は

\(p_{1}+p_{3}+p_{5}\) と \(p_{2}+p_{4}+p_{6}\)

という 2 つの積であり、この2つの和は \(1\) です。

そう見ると、和の値が手元にある状態で積を評価する方法として

相加平均・相乗平均の関係

がピンとくれば、手なりに解決していきます。

\(\displaystyle \frac{1}{2}-\displaystyle \frac{3}{2}P \leq Q\) の証明について

やはり、1乗和と2乗和を結びつけるコーシーシュワルツの不等式で仕留めることを目論みます。

$$\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
(1^{2}+1^{2}+1^{2})(p_{1}^{2}+p_{3}^{2}+p_{5}^{2}) \geq (p_{1}+p_{3}+p_{5})^{2}) \\
(1^{2}+1^{2}+1^{2})(p_{2}^{2}+p_{4}^{2}+p_{6}^{2}) \geq (p_{2}+p_{4}+p_{6})^{2})
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$$

として、辺々を加えると、手なりに \(P\) ,  \(Q\)  に関する評価が得られて解決します。

コーシーシュワルツの不等式などが見えなかった場合

経験豊富な指導者ならともかく、一般の受験生が試験場においてそこまでスムーズにモノが見えるかと言えば返す言葉がありません。

実際、自分が解いたときの泥臭いやり方も晒します。

当初、私がこの問題と向き合ったとき、\(P \geq \displaystyle \frac{1}{6}\) という示すべき右辺の \(\displaystyle \frac{1}{6}\) というのが

いびつでない(歪んでいない)サイコロを基にした数字

に見えました。

\(p_{1}+p_{2}+p_{3}+p_{4}+p_{5}+p_{6}=1\) と設定した後に、「歪んでいない世界であれば」

\(\displaystyle \frac{1}{6}+\displaystyle \frac{1}{6}+\displaystyle \frac{1}{6}+\displaystyle \frac{1}{6}+\displaystyle \frac{1}{6}+\displaystyle \frac{1}{6}=1\) だよな。

と思ったわけです。

歪んでいないサイコロが段々と歪んでいくことで

\(p_{1}+p_{2}+p_{3}+p_{4}+p_{5}+p_{6}=1\)

と「等式のバランスも歪んでいく」というイメージをもったわけです。

こうしてみると、歪んだ世界でも、歪んでいない世界でも確率の和は \(1\) で変わりません。

この歪んでも変化しない不変量に注目し

\(p_{1}+p_{2}+p_{3}+p_{4}+p_{5}+p_{6}=\displaystyle \frac{1}{6}+\displaystyle \frac{1}{6}+\displaystyle \frac{1}{6}+\displaystyle \frac{1}{6}+\displaystyle \frac{1}{6}+\displaystyle \frac{1}{6}\)

と見ました。

あと、若干の邪推も入っていますが、等号成立条件は恐らく歪んでいない \(p_{k}=\displaystyle \frac{1}{6}\) のときであろうと睨み、最後の決め手が

\((p_{k}-\displaystyle \frac{1}{6})^{2} \geq 0\)

によって仕留められるのだろうという目論見の下で、\(p_{k}-\displaystyle \frac{1}{6}=q_{k}\) とおき

\(q_{1}+q_{2}+q_{3}+q_{4}+q_{5}+q_{6}=0\)

と目に優しくして処理しようと思いました。

こうしておくことで、(1) ,  (2) はコーシーシュワルツの不等式に頼ることなく、解ききることができます。

詳しい計算過程は【解 2】でとりあげています。

ただ、時間の限られた試験において、そこまでじっくり考察する時間的余裕はないでしょうから、試験場で深入りして火傷した受験生も少なくなかったかもしれません。

類題について

類題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

京大にも類題がありました。

例題をやった後だとあっけなく思えますが、突然訊かれたときにそこまでスムーズにいくかどうかは別問題だと考えるべきです。

多分現代なら、(1) はないでしょう。

それどころか、京大なら

\(p_{k}\)

という「設定」も隠す可能性すらあります。

例題の解答はコチラ

類題の解答はコチラ

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