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実践演習 極限・微分積分系

sin∞タイプの極限【1995年度 埼玉大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

\sin{\infty} という一見収束しないように見える形の極限値を求める問題です。

結果的にこの極限が収束するというのは、感覚的に不思議な感じがします。

本問は適切な誘導があるために、完答するのもそこまで無理な話ではありません。

しかし、ノーヒントだと多くの人がアタフタして終わりということになりかねないでしょう。

(以下ネタバレ注意)

 

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(1) について

ひとまず、目がチカチカするために

\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} \alpha=1+\sqrt{2}\\ \beta=1-\sqrt{2} \end{array} \right. \end{eqnarray}

とおくことで

a_{n}=\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}({\alpha}^{n}-{\beta}^{n})

と、目に優しくします。

これは言わば

「数列 \{a_{n}\} の一般項」

が与えられている状態です。

証明の第一感としては数学的帰納法ですが、一般項よりも、帰納法においては使い勝手や相性の良い

漸化式

の必要性を感じ取り、漸化式の作成を目論みます。

今回の数列 \{a_{n}\} に関して

\begin{eqnarray} a_{n+2}&=&\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}({\alpha}^{n+2}-{\beta}^{n+2}) \\ &=&\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}\{({\alpha}^{n+1}-{\beta}^{n+1})(\alpha+\beta)-{\alpha}{\beta}({\alpha}^{n}-{\beta}^{n})\}\\ &=&\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}(2\sqrt{2}a_{n+1}+\sqrt{2}a_{n})\\ &=&2a_{n+1}+a_{n} \end{eqnarray}

というようにして、3項間漸化式が得られます。

a_{1}=2a_{2}=4 であるため、この3項間漸化式から、帰納的に a_{n} が整数であることになります。

もちろん、解答記述ではきっちりと数学的帰納法を用いて示します。

その際の帰納法のタイプとしては

  • n=k \ , \ k+1 のときの成立を仮定して n=k+2 のときの成立を目指す

というタイプの帰納法です。

巷では「一昨日昨日法」などと呼ばれているそうですが、市民権はそこまでないでしょう。

帰納法の前段仮定についての話題については

参考帰納法の前段仮定【一昨日昨日(帰納)法】【人生帰納法】【2013年度 東京工業大学】【1998年度 大阪府立大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 帰納法の肝である「前段仮定」について考える問題です。 通常の帰納法 昨日法 n=k のときの成立を仮定して、n=k+1 ...

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も参考にしてみてください。

(2) について

今回のターゲットである

\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}(1+\sqrt{2})^{n}\pi

は、与えられた

a_{n}=\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}\{(1+\sqrt{2})^{n}-(1-\sqrt{2})^{n}\}

という設定を考えれば

\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}(1+\sqrt{2})^{n}\pi=\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}(1-\sqrt{2})^{n}\pi+a_{n}\pi

と見たくなります。

これにより

\sin{(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}(1+\sqrt{2})^{n}\pi)}=\sin{\{\displaystyle \frac{\pi}{\sqrt{2}}(1-\sqrt{2})^{n}+a_{n}\pi\}}

という式に辿り着くでしょう。

\sin{(\theta+(偶数)\pi)}=\sin{\theta}

というように、(偶数)\pi は無視できます。

そういう視点で、再び a_{n} に目を向けると

a_{n} は整数どころか偶数

ということに気がつくと思います。

したがって、題意の極限について

\begin{eqnarray} \displaystyle \lim_{n \to \infty} \sin{(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}(1+\sqrt{2})^{n}\pi)}&=&\displaystyle \lim_{n \to \infty} \sin{\{\displaystyle \frac{\pi}{\sqrt{2}}(1-\sqrt{2})^{n}\}} \\ &=& \sin{0}\\ &=& 0 \end{eqnarray}

となり、解決します。

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