実践演習 方程式・不等式・関数系

サイクリックな形の2次関数の最大値【1964年度 横浜国立大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

\(a\) ,  \(b\) ,  \(c\) についての対称性(巡回性)をもった2次方程式、2次関数の最大値について考える問題です。

とりわけ (2) は絶対値付きの2次関数の最大値ということで、色々うるさそうな問題に見える反面、

なんかうまくできそう

という気を掻き立ててきます。

こういう香ばしい匂いのする問題はある意味危険で、深入りしすぎて爆死する可能性も孕んでおり、試験場においては冷静な判断が求められるでしょう。

(以下ネタバレ注意)

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(1) について

もちろん、「解の公式でどうのこうの」という直接的な路線ではどうにもならないということはお分かりかと思います。

視覚的に捉える路線で、

\(f(x)=(x-b)(x-c)+(x-c)(x-a)+(x-a)(x-b)\)

とおき、\(y=f(x)\) と \(x\) 軸との交点の \(x\) 座標をとらえることで、\(f(x)=0\) という2次方程式の解を可視化します。

あとは \(a\) ,  \(b\) ,  \(c\) との位置関係を探るため、

\(f(a)\) ,  \(f(b)\) ,  \(f(c)\)

の符号について調べたくなるでしょう。

もちろん、\(f(x)\) の形的にも \(a\) ,  \(b\) ,  \(c\) を代入したくなると思います。

これにより、

  • \(f(a)=(a-b)(a-c) \gt 0\)
  • \(f(b)=(b-c)(b-a) \lt 0\)
  • \(f(c)=(c-a)(c-b) \gt 0\)

を得るため、

という状況となり

\(a \lt x_{1} \lt b \lt x_{2} \lt c\)

という大小関係を得ることになります。

(2) について

\(y=|f(x)|\) のグラフは \(y=f(x)\) のグラフの \(y \lt 0\) の部分を \(x\) 軸について折り返してできるグラフです。

(1) で \(y=f(x)\) のグラフは \(x\) 軸を突き破っていることが分かっているため、概形としては

ということになります。

この図では \(|f(a)| \lt |f(c)|\) で書いていますが、もちろん \(|f(a)| \gt |f(c)|\) ということも考えられます。

いずれにせよ、最大値の候補として

\(|f(a)|\) ,  \(|f(c)|\)

が入ってくるのは間違いありません。

あと、折り返した際の頂点が最大となることがあり得ます。

つまり、

  • \(y=f(x)\) の軸の情報

が欲しくなります。

この時点で、展開して平方完成をせざるを得なくなり、「何かしらうまくやってやろう」という野望が絶望的になります。

展開し、平方完成すると、軸が

\(x=\displaystyle \frac{a+b+c}{3}\)

と分かります。

(1) から

  • \(f(a) \gt 0\)
  • \(f(c) \gt 0\)

だったことを踏まえると、今回の最大値の候補は

\(f(a)\) ,  \(f(c)\) ,  \(|f(\displaystyle \frac{a+b+c}{3})|\)

ということになり、これらの大小を丁寧に調べていきます。

ひとまず、絶対値の付いていない \(f(a)\) ,  \(f(c)\) の大小を比較するために

\(f(c)-f(a)\)

を計算していきます。

計算して整理すると

\(f(c)-f(a)=(c-a)(c+a-2b)\)

となるため、結局

  • \(b \lt \displaystyle \frac{a+c}{2}\) のとき \(f(c) \gt f(a)\)
  • \(b=\displaystyle \frac{a+c}{2}\) のとき \(f(c)=f(a)\)
  • \(b \gt \displaystyle \frac{a+c}{2}\) のとき \(f(c) \lt f(a)\)

と言えます。

ここからは言わば「決勝戦」で、各々の場合において、大きい方と、残った \(|f(\displaystyle \frac{a+b+c}{3})|\) を戦わせて、トータルの最大値を出せばよいでしょう。

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