実践演習 幾何・ベクトル系

放物線の3接線による三角形の外接円【シムソンの定理の応用】【1962年度 東京農工大】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

放物線の任意の3接線による三角形の外接円が、必ずその放物線の焦点を通るという美しい性質の証明です。

そそる見た目をしていますが、うまく頭を切り替えないと泥沼に嵌まりそうです。

(1) の設問が絶妙なヒントになっていますが、これをヒントと捉えられるかが問題です。

(以下ネタバレ注意)

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(1) について

放物線の焦点からの垂足曲線を考える問題です。

\(y^{2}=4px\) の両辺を \(x\) で微分すると

\(2y \displaystyle \frac{dy}{dx}=4p\)

なので、

\(\displaystyle \frac{dy}{dx}=\displaystyle \frac{2p}{y}\)

を得ます。

ここから、\((s \ , \ t)\) における接線の式を考えていきます。

この接線の傾きは \(\displaystyle \frac{2p}{t}\) なので、\(t=0\) か \(t \neq 0\) かという場合分けが発生します。

\(t \neq 0\) のとき

\((s \ , \ t)\) における接線の式は

\(y=\displaystyle \frac{2p}{t}(x-s)+t\)

で整理すると

\(y=\displaystyle \frac{2p}{t}x-\displaystyle \frac{2ps-t^{2}}{t}\)

\((s \ , \ t)\) が \(y^{2}=4px\) 上の点であるため

\(t^{2}=4ps\)

であることに注意して、\(s\) を消去すると、先ほどの接線は

\(y=\displaystyle \frac{2p}{t}x+\displaystyle \frac{t}{2}\)

となります。

一方、焦点 \(\mathrm{F}\)\((p \ , \ 0)\) を通り、先ほどの接線に垂直な直線の方程式は

\(y=-\displaystyle \frac{t}{2p}(x-p)\)

で、整理すると

\(y=-\displaystyle \frac{t}{2p}x+\displaystyle \frac{t}{2}\)

です。

先ほどの接線と、この垂線を連立して交点を求めると

\((0 \ , \ \displaystyle \frac{t}{2})\)

と得られます。

つまり、\(t\) が \(0\) 以外の範囲で動くとき、垂線の足は

\(x=0\)

という直線上を動くことになります。

\(t=0\) のとき

ただ、\(t=0\) のとき、すなわち \((0 \ , \ 0)\) が接点のときの接線は \(x=0\) であり、\(x\) 軸上の焦点 \(\mathrm{F}\) \((p \ , \ 0)\) から下ろした垂線の足は \((0 \ , \ 0)\) であるため、この結果も含めて、垂線の足の軌跡は

直線 \(x=0\)

としてよいことになります。

(2) について

(1) の結果を踏まえて図示すると

というようになります。

今回、

目標

  • \(\angle{\mathrm{FAB}}+\angle{\mathrm{FCB}}=\pi\)

というのが示すべき目標です。

この構図を見て目に付くのは

  • 円に内接する四角形の性質(同一円周上にある4点についての性質)

です。

  • 四角形 \(\mathrm{FQRC}\)
  • 四角形 \(\mathrm{AQFP}\)

がそれぞれ円に内接するということを利用して角度の情報を整理していきましょう。

ウンチク【シムソンの定理】

今回の構図や主張を見て、次の定理をインスピレーションした人はマニアックな部類に入ります。

シムソンの定理

相異なる4点 \(\mathrm{X}\) ,  \(\mathrm{A}\) ,  \(\mathrm{B}\) ,  \(\mathrm{C}\)  がある。

点 \(\mathrm{X}\) から3直線 \(\mathrm{AB}\) ,  \(\mathrm{BC}\) ,  \(\mathrm{CA}\)  に下ろした垂線の足をそれぞれ \(\mathrm{P}\) ,  \(\mathrm{Q}\) ,  \(\mathrm{R}\) とする。

このとき、

  • 点 \(\mathrm{X}\) が\(\triangle{\mathrm{ABC}}\) の外接円上の点であること
  • 3点 \(\mathrm{P}\) ,  \(\mathrm{Q}\) ,  \(\mathrm{R}\) は同一直線上にあること

は同値である。

こうしてみると、本問の (2) の主張はシムソンの定理によりただちに証明できることになります。

もちろん、シムソンの定理を前面に押し出すわけにはいきません。

本問の証明過程は、シムソンの定理の証明過程とほぼ同じです。

せっかく本問に触れたのであれば、復習もかねてシムソンの定理の証明もチャレンジしてみてください。

シムソンの定理の証明については【総括】の中で触れてあります。

追記

ちなみに本問は垂線の足の軌跡が定直線となるという誘導がついていましたが、

  • ノーヒントだとどういう解答になるのか

ということは気になるところだと思います。

そこで、改めてノーヒントで出題しなおしてみます。

ノーヒント Ver の問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

接線の式が馴染み深い形で立式できるよう、見慣れた方向での放物線に直して出題しました。

ノーヒントだと、座標のままゴリ押すのが一番ストレートな方向でしょう。

座標でゴリ押すとなると

  1. 接線の式を立てる
  2. 連立して交点を求める
  3. 3交点を通る円の方程式を出す
  4. 焦点 \((0 \ , \ p)\) がその円上にあることを確認する

という流れが自然です。

口で言うのは容易いですが、特に、通過点が3点与えられたときの円の方程式を出す作業が、正攻法だと大変です。

この大変な連立方程式を解くという作業を回避する上級テクをご紹介します。

詳しくは解答 PDF をご覧ください。

解答はコチラ

ノーヒントVerの解答はコチラ

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