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実践演習 方程式・不等式・関数系

2直線の交点の軌跡【文字消去が困難なときの工夫】【2006年度 島根大学ほか】

例題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

2直線の交点の軌跡というテーマ性のある話題です。

単元学習で軌跡を学習したばかりの状態でこのテーマに取り組むと、「あれ?」となる人が多いでしょう。

方針としては複数考えられますが、どのような方針が自然かということについて比較検討まで含めて考えていきます。

(以下ネタバレ注意)

 

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思いつきやすい方針

軌跡の基本は (X \ , \ Y) とおき、XY の関係式を Get しにいくという路線です。

そこで、交点を具体的に求めてしまうというのが、多くの人が考える方針だと思います。

実際に、lm の式を連立方程式と見なして解き、交点を求めると

(\displaystyle \frac{-2k+2}{k^{2}+1} \ , \ \displaystyle \frac{k^{2}-2k-1}{k^{2}+1})

ということになり、交点を (X \ , \ Y) とすると

\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} X =\displaystyle \frac{-2k+2}{k^{2}+1}  \\ Y = \displaystyle \frac{k^{2}-2k-1}{k^{2}+1} \end{array} \right. \end{eqnarray}

となります。

ここから XY の関係式を Get しにいきたい、すなわちパラメータ k を消去したいわけですが、それが中々困難です。

ここから打破するには

見えるかどうかは経験が左右する部分が大きいのですが、(X \ , \ Y) という点はそもそも

kx+y+1=0 という直線 m 上の点

です。

つまり、kX+Y+1=0 という関係式を満たしています。

場合分けが必要にはなりますが、細かなことを抜きにすれば、k=\displaystyle \frac{-Y-1}{X} と、k を消去できます。

別の考え方

直接交点を追っていくことが難しかったので、

(1 \ , \ 3) は交点になれる?

(2 \ , \ 5) は交点になれる?

(-1 \ , \ \displaystyle \frac{1}{4}) は交点になれる?

\vdots

というしらみつぶしの考え方(逆像法)で仕留めることも可能です。

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というシリーズの中で解説しています。

逆像法の考え方に基づき

  • (X \ , \ Y) は交点になれる?
  • なれるとしたらどんな (X \ , \ Y)

と考えます。

そうなると、

\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} (k+1)X+(1-k)Y+k-1=0 \\ kX+Y+1=0 \end{array} \right. \end{eqnarray}

という連立方程式の解になり得るか?

すなわち、これらをともに満たす実数 k が存在するかどうか?

を考えることになります。

方針の比較

思いつきやすさで言えば、実際に交点を求める方針でしょう。

ただし、その後については多少の経験に基づく工夫が必要です。

逆像法の路線については、そもそも逆像法自体、上級テーマの一つですから慣れていない受験生も沢山いるでしょう。
(難関大を目指すのであれば自分のものにしておきたいテーマですが)

今回のテーマである「2直線の交点の軌跡」については

行為1:『交点を求める』→  XYk で表す

行為2:『軌跡を求める』→ k を消去して XY の関係式を作る

と、目標が真逆です。

これが困難を生んでいる原因の一つでしょう。

本来の目的は「軌跡を求める」という「行為2」であり、それを達成するにあたって真逆の行為である「行為1」を行うのは、ある意味無駄です。

そう考えると、交点に触れない「逆像法」の路線が合理的だと言えると思います。

類題について

類題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

逆像法の路線が合理的と言っておきながら、交点を求める作業をさせている問題を類題としてもってきました。

恐らく、出題の意図は

「交点を出してから、文字消去してごらん?難しいでしょ?」

という「難しさを実感させる」ということでしょう。(かなり好意的に解釈しましたが)

類題では、例題で解説している方法に加え

「幾何的な考察」

についても触れてあります。

例題の解答はコチラ

類題の解答はコチラ

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