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基本対称式についての符号についての論証問題です。
符号だけでなく、整数問題の要素も含めたオチまである欲張りなセットです。
キレイな結果とは裏腹に、導出過程はそれなりに紆余曲折があると思います。
本問は「逆なら楽勝で言えるのにシリーズ」の一つと言ってよく、京大が好みそうな感じですね。
(以下ネタバレ注意)
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本問の出どころ
本問の出どころは恐らく2文字の基本対称式についての以下の性質でしょう。
2文字の基本対称式についての性質
x=a+b , y=ab とするとき
x \gt 0 \ , \ y \gt 0 \ \Leftrightarrow \ a \gt 0 \ , \ b \gt 0
証明
a \gt 0 \ , \ b \gt 0 \ \Rightarrow \ x \gt 0 \ , \ y \gt 0
は明らかなので、
x \gt 0 \ , \ y \gt 0 \ \Rightarrow \ a \gt 0 \ , \ b \gt 0
を証明する。
y \gt 0 なので
③:a \gt 0 かつ b \gt 0
④:a \lt 0 かつ b \lt 0
のいずれかが成り立つが、④が成り立つと仮定すると x \gt 0 であることに矛盾する。
本問は
「2文字の基本対称式についての性質を、3文字に拡張して考えてみてください」
という趣旨で作られたのだと思います。
(1) について
x \gt 0 という条件から a+b+c \gt 0 , すなわち
c \gt -(a+b) \cdots①
という結果となります。
与えられた条件の中で c だけ仲間外れにされているという感じですから、
y=ab+c(a+b)
と c で括ってやり、① を用いて c を消してやることを考えます。
すると y \lt ab-(a+b)^{2} , すなわち
y \lt -(a^{2}+ab+b^{2})
となるため、y \lt 0 という結論を得ることができます。
(2) について
a \gt 0 \ , \ b \gt 0 \ , \ c \gt 0 \Rightarrow x \gt 0 \ , \ y \gt 0 \ , \ z \gt 0
はほぼ明らかですから、結局は
x \gt 0 \ , \ y \gt 0 \ , \ z \gt 0 \Rightarrow a \gt 0 \ , \ b \gt 0 \ , \ c \gt 0
を証明することになります。
その際に (1) が強力に効いてきます。
今回、z \gt 0 であることから
①:a , b , c が全て正
②:2つが負で、1つが正
のいずれかが言えることになります。
① であることが言いたいので、② を否定すれば解決します。
仮に a \lt 0 , b \lt 0 としてみると、x \gt 0 であることを併せれば、(1) から y \lt 0 ということになり、
x \gt 0 \ , \ y \gt 0 \ , \ z \gt 0 ということに矛盾します。
もちろん、文字の対称性から
b \lt 0 , c \lt 0
c \lt 0 , a \lt 0
と仮定しても、同様に矛盾します。
(3) について
(2) では不等号でしたが、それを合同式として扱うだけだと気が付けば、手が進むはずです。
すなわち、法を 3 として
x \equiv 0 \ , \ y \equiv 0 \ , \ z \equiv 0 \Leftrightarrow a \equiv 0 \ , \ b \equiv 0 \ , \ c \equiv 0
を目指します。
これも (2) 同様
a \equiv 0 \ , \ b \equiv 0 \ , \ c \equiv 0 \Rightarrow x \equiv 0 \ , \ y \equiv 0 \ , \ z \equiv 0
はほぼ明らかですから
x \equiv 0 \ , \ y \equiv 0 \ , \ z \equiv 0 \Rightarrow a \equiv 0 \ , \ b \equiv 0 \ , \ c \equiv 0
ということが言えれば解決です。