2022年度東大理系 各解説記事
2022年度 東京大学理系第1問【微分法による最小値の導出】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 微分法により、関数の最小値を導出するという基本問題です。 インテグラルを含んだままの関数ですから、最後の最小値の導出にあたっては積分計算についても問われることになります。 やることが明確であるため、方針面で迷うことはないでしょうし、計算の内容や計算量についても標準レベルと言ってよい穏やかなレベルです。 それだけに試験場では確保したい問題と言えましょう。 解答はコチラ
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2022年度 東京大学理系第2問【漸化式と整数問題】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 漸化式によって定まる数列の整数的特徴を論じる問題です。 一般項を相手にはできませんから、漸化式を漸化式のまま扱うという力が必要です。 随所随所で 問題文で訊かれていること以上のことを見出す ということが必要になってきます。 実験し、手を動かして突破口を見出すことになるのですが、それでも最短距離でスムーズにいける人は割合的には少ないと思います。 難易度的にはやや難です。 試験場ではムキにならず、深追いしない方が得策でしょう。 解答はコチラ
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2022年度 東京大学理系第3問【定義の運用】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 「十分離れている」という言葉を定義し、その定義に関して何が言えるのか、どうなっていればよいのかを考えさせるという その場力 を要求している問題です。 ソーシャルディスタンスを意識したような用語だなと感じました。 解き終わってみると、特別難しいわけでもなく、計算量自体もそこまで多くはないのですが 様子を掴んだり状況を把握するのにエネルギーを使う と思います。 問題自体の難易度と、試験場での体感難易度には大きなギャップがあるでしょう。 問題自体の ...
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2022年度 東京大学理系第4問【全称命題と存在命題】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 3次関数についての性質について論じる問題ですが、 全称命題 任意の○○に対して△△が成立する 存在命題 ある○○が存在して☆☆が成立する というような 全称命題、存在命題 を真正面から扱うことになります。 ひとまず出題者との会話のキャッチボールができるかどうかという部分でのフィルターとしてはたらくことになるでしょう。 また、 感覚的に「そりゃそうだろ」 とか、 「この部分直感的に処理しちゃいたいな」 というようなことが多々あるのですが、それを ...
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2022年度 東京大学理系第5問【空間における回転体】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 空間における立体の体積問題で、東大が好んで出題するテーマの一つです。 通過領域が絡んでいるという点でも東大らしく、「らしさ全開」と言ってよい問題でしょう。 回転後の立体 \(K\) を想像しようとしても難しいでしょう。 ひとまず回転前の状況で \(\mathrm{M}\) が動き得る範囲を捉え、その後その範囲を \(z\) 軸周りに回転させます。 回転前に限定しても動くものが \(\mathrm{P}\) , \(\mathrm{Q}\) ...
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2022年度 東京大学理系第6問【点の移動に関する確率】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 問題文が長く、威圧感がありますが、ルール自体はそこまで複雑ではありません。 (1) の実験的設問でどこまで核心に迫れるかが問題です。 正直、(1) は愚直に全て書き出してもタカが知れています。 ただ、腕力だと (1) は押し切れても (2) で手詰まりの可能性が高いでしょう。 したがって、完答を目指すのであれば (1) の段階から (2) に繋がるような解き方をする必要があります。 本問は要するに 結局移動の方向は3方向しかない 裏が出ると、 ...
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と、形式に変更はありません。
分野的トピックス
2017 年度を最後に姿を消した確率分野からの出題があり、久々に東大らしい分野のセットとなりました。
近年よく出題されていた複素数平面からの出題はありませんでした。
各大問について
第1問(やや易)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
定積分で表された関数についての最小値を求める問題です。
方針面でやることは明確であり、計算量自体もそこまで膨らむということもなく、質・量ともに標準レベルと言ってよいでしょう。
東大での出題を考えると「やや易」であり、今年の問題セットにおいてこれを落とすことは致命傷になりかねないと言ってよいでしょう。
第2問(やや難)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
漸化式によって定まる数列の整数的特徴を論じる問題です。
漸化式自体は単純そうに見えますが、実際に一般項を相手にすることができず、
漸化式を漸化式のまま扱う
という態度が求められます。
類題の経験を元に何とかできるのは (1) ぐらいでしょう。
全体的に手を動かして実験していきながら様々なことを見出していく「その場力」が必要です。
第3問(標準)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
「十分離れている」
という用語を定義し、その定義をもとに「何が言えるか」「どうなっていればよいか」を考察させるという問題です。
これについても「その場力」を要求している類の問題です。
問題そのものの難易度は、決して高くなく、
「要するにこうなっていればいいよね」
という要領さえつかんでしまえば、完答も決して無理ではありません。
ただし、試験場補正はかかりやすく体感の難易度とのギャップは大きいと思います。
問題そのものの難易度は標準と言ってよいでしょう。
余談ですが、「十分離れている」という言葉は、ソーシャルディスタンスを意識したような用語のように思えました。
第4問(やや難)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
3次曲線と直線の交点について論じる問題です。
- 全称命題と存在命題をきちんと理解し、題意を正確に把握しているか
- 様々な文字が入り乱れる中で何が言えればよいか(示すべきこと)を見失わないか
- 実際の処理面でどのように記述すればよいか
などが本問の難しさを司っているように思います。
随所随所で
「感覚的にはそりゃそうだよね」
ということも多いのですが、それを記述でまとめるのは案外大変です。
どこまで目くじらを立てられるかによって標準~やや難かというラインが揺れ動くとは思いますが、不備なく論じきるとなると、やや難でしょう。
第5問(標準)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
「空間における回転体の体積」という東大頻出の話題です。
さらに東大が好む
- 通過領域的な問い方
- 1文字を固定して考える予選決勝法的考え方
なども入っており、まさに「東大らしい」問題です。
もろに回転体として問うのではなく、
一見回転体に見えないんだけど、実は回転体
というような訊き方になっているのも近年の東大の特徴の一つと言ってよいでしょう。
東大入試としては標準レベルです。
第6問(やや難)
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
5年ぶりに確率分野が復活しました。
威圧感のある問題ですが、ルール自体は意外とシンプルです。
ただ、手を動かしてみると分かりますが、結構厄介な部分が多く、急所を掴み切るまでにかなりエネルギーを要します。
裏が出て方向を変えるだけでも回数にカウントするため、
試行回数と移動回数が同じではない
ということが考えにくさの元凶です。
このあたりを限られた試験時間内に冷静に捌ききれるかというと、上位層を除き難しいでしょう。
難易度はやや難です。
全体的に
大学名を隠されて
「どこの問題でしょう」
と言われても東大だと分かるような「東大らしいセット」でした。
過去問をやりこんできた受験生からすると、そのような「らしさ」を感じられたことでしょう。
難易度的には昨年と比べて変化なしだと思います。(昨年も結構ハード)
第1問を確保したうえで
- 完答できる可能性のある第3問、第5問
- やること自体は明確で、記述のまとめ方や計算が問題の第4問
あたりを優先的に手を付けて、
- 発想の段階から手が止まりやすい第2問、第6問については部分的確保にとどめておく
のが現実的でしょうか。
2022年度東大理系 各解説記事
2022年度 東京大学理系第1問【微分法による最小値の導出】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 微分法により、関数の最小値を導出するという基本問題です。 インテグラルを含んだままの関数ですから、最後の最小値の導出にあたっては積分計算についても問われることになります。 やることが明確であるため、方針面で迷うことはないでしょうし、計算の内容や計算量についても標準レベルと言ってよい穏やかなレベルです。 それだけに試験場では確保したい問題と言えましょう。 解答はコチラ
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2022年度 東京大学理系第2問【漸化式と整数問題】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 漸化式によって定まる数列の整数的特徴を論じる問題です。 一般項を相手にはできませんから、漸化式を漸化式のまま扱うという力が必要です。 随所随所で 問題文で訊かれていること以上のことを見出す ということが必要になってきます。 実験し、手を動かして突破口を見出すことになるのですが、それでも最短距離でスムーズにいける人は割合的には少ないと思います。 難易度的にはやや難です。 試験場ではムキにならず、深追いしない方が得策でしょう。 解答はコチラ
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2022年度 東京大学理系第3問【定義の運用】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 「十分離れている」という言葉を定義し、その定義に関して何が言えるのか、どうなっていればよいのかを考えさせるという その場力 を要求している問題です。 ソーシャルディスタンスを意識したような用語だなと感じました。 解き終わってみると、特別難しいわけでもなく、計算量自体もそこまで多くはないのですが 様子を掴んだり状況を把握するのにエネルギーを使う と思います。 問題自体の難易度と、試験場での体感難易度には大きなギャップがあるでしょう。 問題自体の ...
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2022年度 東京大学理系第4問【全称命題と存在命題】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 3次関数についての性質について論じる問題ですが、 全称命題 任意の○○に対して△△が成立する 存在命題 ある○○が存在して☆☆が成立する というような 全称命題、存在命題 を真正面から扱うことになります。 ひとまず出題者との会話のキャッチボールができるかどうかという部分でのフィルターとしてはたらくことになるでしょう。 また、 感覚的に「そりゃそうだろ」 とか、 「この部分直感的に処理しちゃいたいな」 というようなことが多々あるのですが、それを ...
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2022年度 東京大学理系第5問【空間における回転体】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 空間における立体の体積問題で、東大が好んで出題するテーマの一つです。 通過領域が絡んでいるという点でも東大らしく、「らしさ全開」と言ってよい問題でしょう。 回転後の立体 \(K\) を想像しようとしても難しいでしょう。 ひとまず回転前の状況で \(\mathrm{M}\) が動き得る範囲を捉え、その後その範囲を \(z\) 軸周りに回転させます。 回転前に限定しても動くものが \(\mathrm{P}\) , \(\mathrm{Q}\) ...
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2022年度 東京大学理系第6問【点の移動に関する確率】
問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 問題文が長く、威圧感がありますが、ルール自体はそこまで複雑ではありません。 (1) の実験的設問でどこまで核心に迫れるかが問題です。 正直、(1) は愚直に全て書き出してもタカが知れています。 ただ、腕力だと (1) は押し切れても (2) で手詰まりの可能性が高いでしょう。 したがって、完答を目指すのであれば (1) の段階から (2) に繋がるような解き方をする必要があります。 本問は要するに 結局移動の方向は3方向しかない 裏が出ると、 ...
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