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実践演習 整数系

3整数に関する不定方程式【難問】【1990年度 早稲田大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

シンプルな設定でルールはとっかかりやすいのですが、いざやってみるとどこから手を付けたらよいのか途方に暮れる難問です。

実際にこの年の受験生のほとんどが0点だったといういわくつきの問題です。

合否に影響のある問題でないことは確かなのですが、30年経った今でも勉強の糧として使える良問だとも思います。

最初に整数問題の有力方針を確認しておきます。

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積の形から約数の拾い上げ

例題:x ,  y は自然数とする。xy+2x+3y=6  となる x ,  y の値の組を全て求めよ。

解答例

与えられた方程式は (x+3)(y+2)=12 と変形できる。

x+3 , \ y+2  はともに自然数なので

(x+3 ,  \ y+2)=(1, 12) \ (2 , 6) \ (3 , 4) \ (4 , 3) \ (6 , 2) \ (12 , 1)

よって ,  (x , \ y)=(-2 , 10) \ (-1 , 4) \ (0 ,  2) \ (1 , 1) \ (3 , 0) \ (9 , -1)

このうち、x , \ y がともに自然数である組は

(x , \ y)=(1 , \ 1)

実際にはもう少し手際よく絞れたりしますが、このように積の形を無理やり作って 12 の約数を拾い上げていきます。

整数問題の中でもかなり頻出な考え方です。

余りで分類

例題:m を整数として、平方数 m^23 で割った余りは 2 とならないことを示せ。

解答例

以下 , k は整数とする。

<1> \  \ m=3k  のとき

m^2=9k^2  で , m^23 で割った余りは 0

<2> \  \ m=3k\pm 1   のとき

m^2=9k^2\pm6k+1=3 \ (3k^2\pm2k)+1  で , m^23 で割った余りは 1

よって、平方数 m^23 で割った余りは 0 または 1 に限られ、題意は示された。

今回の例題の場合、世の中の整数を 3 で割った余りで分類しました。

3k3k+13k+2  と分類してもよいのですが、3 で割って 2 余る数というのは

3 の倍数から見て 1 足りない数」

ということもできるため、余り 1 のときと、余り 2 のときを合わせて

m=3k\pm 1   のとき

としてやるという工夫もよくやります。

また、「何で割った余りに注目するか」ということもレベルが高くなってくると大事になってきます。

評価する(範囲を絞る)

例題:xyz=x+y+z を満たす自然数 (x , \ y , \ z) の組を全て求めよ。

解答例

問題の対称性からひとまず x \leq y \leq z として考える。

このとき , x+y+z \leq z+z+z であり , 条件から , xyz \leq 3z

すなわち , xy \leq 3

これより ,  (x , \ y)=(1 ,  \ 1) , \ \ (1 , \ 2) ,  \ \ (1 , \ 3)

<1>  (x , \ y)=(1 ,  \ 1) のとき

与えられた条件式から , z=2+z でこれを満たす z は存在しない。

<2>  (x , \ y)=(1 ,  \ 2) のとき

与えられた条件式から , 2z=3+z で ,  z=3 を得る。
(これは x \leq y \leq z を満たす。)

<3>  (x , \ y)=(1 ,  \ 3) のとき

与えられた条件式から , 3z=4+z で ,  z=2 を得る。
(これは x \leq y \leq z を満たさない。)

以上 <1> , <2> , <3> から

(x , \ y , \ z)=(1 , \ 2 , \ 3)

実際には  x \leq y \leq z  という制限はないので

(x , \ y , \ z)=(1 , \ 2 , \ 3) , \ \ (1 , \ 3 , \ 2) , \ \ (2 , \ 1 , \ 3) , \ \ (2 , \ 3 , \ 1) , \ \ (3 , \ 1 , \ 2) , \ \ (3 , \ 2 , \ 1)

まず今回の数たちというのはそんなに大きくないだろうことが予測されます。

普通は (積) \gt (和)  にも関わらず、積と和が等しいと言っているのですから。

そして、今回の問題には「対称性」があります。

なので、いったん x \leq y \leq z という区別をつけて考えることで範囲を絞り込み、(x , \ y , \ z) の組が出てきたら、その大小関係を外して答えとします。

変数が3文字以上になると、このように等式を諦めて不等式をつないでいくことが多くなると思います。

特に対称性がある整数問題ではそれを見落とさないようにしましょう。

(以下ネタバレ注意)

 

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ひとまず条件を立式

以下、登場する文字は整数とします。

与えられたシチュエーションを立式すると

\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} a+b=cK+1\\ b+c=aM+1\\ c+a=bL+1 \end{array} \right. \end{eqnarray}

です。

文字の個数に対し、条件の個数が足りません。

(不定方程式と言います。)

整数問題の有力方針

  • 積の形から約数の拾い上げ
  • 余りで分類
  • 評価する(範囲を絞る)

本問においてこれらの基本事項をどの方向で運用していくかを考えていきます。

積の形から約数を拾うためには因数分解やそれに近い式変形を狙っていくわけですが、本問においては式変形自体の余地があまりなく、厳しいでしょう。

余りで分類するという態度も、結局

「何で割った余りに注目するか」

ということが明確に見えません。

そこで、a \lt b \lt c という設定を活かし、範囲を絞りにいくという路線を睨みます。

少し乱暴な言い方ですが

3文字以上になると、評価するという態度が功を奏すことが多い

ということは経験値としてストックしておきたいですね。

多くの受験生にとっては「等号を繋ぐ」ということに苦手意識はあまりないのですが、「不等号を繋ぐ」ということに苦手意識を持っています。

「評価する(大小関係を作っていく)」という作業は、整数問題のほかにも

極限分野(はさみうちの原理)

などでも登場する話題です。

自然に不等号が結べるようになれば、また一歩次のステージにいけるでしょう。

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