問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
\(n\) , \(m\) という2変数が絡む漸化式の問題です。
試験場だと「ウッ」となるやもしれません。
ふたを開ければ、難関大受験生にとっては基本の処理となりますが、
- ふたがそれなりに重い
- ふたが開けられても、その後の処理は差がつく
という要素をもっており、完答するためには「確かな力」が必要となります。
試験場で見慣れない未知の問題に出会ったら、という耐性をつけるという想定で臨んでみてください。
(以下ネタバレ注意)
+ クリック(タップ)して続きを読む 任意の正の整数 \(m\) に対して \((n+2m)a_{n}-(m+2n)a_{m}+(m-n)a_{n+m}=0\) が成立するのであれば、 じゃあ、\(m=1\) のときも成立するよね? と、話を進めます。 そうなると、 \((n+2)a_{n}-(2n+1)a_{1}+(1-n)a_{n+1}=0\) が成り立つ必要があるわけです。 \(a_{1}=0\) という条件を考えると、 \((n-1)a_{n+1}=(n+2)a_{n}\) が成り立つ必要があります。 ここから先は漸化式の処理という内容になります。 この漸化式は \((n-1)a_{n+1}=(n+2)a_{n}\) のまま見るか \(a_{n+1}=\displaystyle \frac{n+2}{n-1}a_{n}\) と見るか、という2路線あるでしょう。 次の一手が見やすい形は人それぞれです。 \((n-1)a_{n+1}=(n+2)a_{n}\) から、両辺 \((n-1)n(n+1)(n+2)\) で割ると \(\displaystyle \frac{a_{n+1}}{n(n+1)(n+2)}=\displaystyle \frac{a_{n}}{(n-1)n(n+1)}\) となり、\(b_{n}=\displaystyle \frac{a_{n}}{(n-1)n(n+1)}\) とおくと \(b_{n+1}=b_{n}\) となり、数列 \(\{b_{n}\}\) は定数列となります。 一発でこれが見えればいいですが、順序だてて考えてこの路線で処理することもできます。 この順序だてた考え方については【総括】で少し触れてあります。 \(a_{n+1}=\displaystyle \frac{n+2}{n-1}a_{n}\) (\(n \geq 2\)) という漸化式を順次用いて $$\begin{eqnarray} と、どんどん番号を下げていくと、やがて \(a_{n}=\displaystyle \frac{n+1}{n-2} \cdot \displaystyle \frac{n}{n-3} \cdot \displaystyle \frac{n-1}{n-4} \cdot \displaystyle \frac{n-2}{n-5} \cdot \displaystyle \frac{n-3}{n-6} \cdot \displaystyle \frac{n-4}{n-7} \cdot \cdots \cdot \displaystyle \frac{4}{1} \cdot a_{2}\) となります。 約分により生き残る項を考えて整理すると \(a_{n}=\displaystyle \frac{(n+1) n (n-1)}{3 \cdot 2 \cdot 1}a_{2}\) となり、条件 \(a_{2}=6\) を考えると \(a_{n}=(n+1) n (n-1)\) を得ます。 \((n+2)a_{n}-(2n+1)a_{1}+(1-n)a_{n+1}=0\) において、今度は \(a_{1}=1\) という条件になりますから \((n-1)a_{n+1}=(n+2)a_{n}-(2n+1)\) となります。 大枠の方針は (1) と大きくは変わりません。 両辺 \((n-1)n(n+1)(n+2)\) で割ると \(\displaystyle \frac{a_{n+1}}{n(n+1)(n+2)}=\displaystyle \frac{a_{n}}{(n-1)n(n+1)}-\displaystyle \frac{2n+1}{(n-1)n(n+1)(n+2)}\) と変形することで、階差数列を得ることになります。 階差数列の処理で現れるシグマ計算については 部分分数分解による「和の中抜け」 が狙えます。 全称命題と捉えて \(m=1\) でも成り立つ必要がある として導出した \(a_{n}\) が その他の任意の正の整数 \(m\) に対してちゃんと \((n+2m)a_{n}-(m+2n)a_{m}+(m-n)a_{n+m}=0\) が成り立つかどうかについてはきちんと確認しなければなりません。 全称命題としての考え方をしたあとは また、その漸化式の処理の中で などの基礎が求められます。 そのあたりの代表的な典型パターンについては 漸化式基本パターン 漸化式の解法基本パターン 第1講【2項間漸化式:ズラせば等比数列】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 漸化式は問題を解く中で処理しなければならない場面が多々あります。 確率漸化式などの確率や場合の数の分野との融合 点列など、座標との融合 整数問題との融合 など、漸化式は道具として使う場面が多々あります。 漸化式が立式できても、それが解けないとなると意味がありませんから、基本的な漸化式についてはきちんと処理できる必要があります。 そこで基本的な漸化式について一通りこのシリーズで押さえておきたいと思います このシリーズの一覧はこちら ... 漸化式の解法基本パターン 第2講【2項間漸化式:心霊写真型】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) このシリーズの一覧はこちら 前回の第1講で扱った Type 1 \(a_{n+1}=pa_{n}+q\) ( \(p \neq 1\) ) の派生形として今回は Type 2 (心霊写真型) \(a_{n+1}=pa_{n}+q^{n}\) ( \(p \neq 1\) ) ( \(q\) の肩になんか乗ってる ) というタイプを扱います。 この心霊写真型の除霊の仕方は2パターンあり 心霊写真型の除霊の仕方 ... 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) このシリーズの一覧はこちら 漸化式基本パターン第3講では、「分数型」の漸化式を扱います。 まずは分数型の中でも簡単な形(特殊な形)である 分数漸化式(メタボ型) \(a_{n+1}=\displaystyle \frac{ra_{n}}{pa_{n}+q}\) を考えます。 分数の形がなんとなく△の形をしており、引き締まっておりません。 逆数を取ると \(\displaystyle \frac{1}{a_{n+1}}=\disp ... 漸化式の解法基本パターン 第4講【2項間漸化式:特性方程式使うと事故る型】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) このシリーズの一覧はこちら 漸化式の解法基本パターン第4講では 特性方程式使うと事故る型 \(a_{n+1}=pa_{n}+An+B\) というタイプをやっていきます。 長ったらしいネーミングですが、逆に一回事故った方が理解が深まると思います。 (もっといいネーミングがあれば募集します。) 文字のままやっててもピンとこないかもしれませんので、本問の (1) を例にとって、敢えて事故ってみます。 誤答 ... 漸化式の解法基本パターン 第5講【2項間漸化式:そうだ、logをとろう型】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) このシリーズの一覧はこちら 漸化式の解法基本パターン第5講では そうだ、log をとろう型 \(a_{n+1}^{p}=Aa_{n}^{q}\) というタイプを扱います。 両辺底が \(A\) の対数をとると \(p\log_{A}a_{n+1}=q\log_{A}a_{n}+1\) となり、\(b_{n}=\log_{A}a_{n}\) とおくと \(b_{n+1}=\displaystyle \frac{q}{p}b_{n} ... 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) このシリーズの一覧はこちら 第6講では「変数倍」型を扱います。 変数倍型 $$a_{n+1}=f(n)a_{n}+A$$ 基本的に\(a_{n+1}=pa_{n}+\cdots\) という「定数倍」であれば、多少のイレギュラーこそあれど、等比数列としての処理に帰着することになります。 今回のように「変数倍」になってくると、形一つで対応が変わってきます。 このあたりを体系的にまとめるのは難しいでしょう。 (1) , (2) は ... 漸化式の解法基本パターン 第7講【隣接3項間漸化式への対応】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) このシリーズの一覧はこちら 第7講では3項間漸化式を扱います。 3項間漸化式 $$a_{n+2}+pa_{n+1}+qa_{n}=0$$ この3項間漸化式の狙い筋は 狙い筋 $$a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\beta(a_{n+1}-\alpha a_{n})$$ という形に変形することで、等比数列の形として処理することです。 つまり、 \(a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\beta(a_{n+1 ... 漸化式の解法基本パターン 第8講【2種類の連立漸化式への対応】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) このシリーズの一覧はこちら 第8講では「連立漸化式」を扱います。 連立漸化式の代表的な解法としては2つあります。 連立漸化式の代表的方針 1文字消去 上手い倍率を見つけて辺々操作 それぞれについて見てみます。 1文字消去路線について 今回の (1) を例にとってみます。 消しやすい第2式に注目すれば、\(a_{n}=b_{n+1}-b_{n}\) と見ることができます。 第1式に代入するために番号を 1 つ上げれば ... シグマ計算の基本方針 シグマ計算基本方針 第1講【公式確認とその延長】【2010年度 九州大学など】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 今回からテーマ別演習でパターン性の濃い計算技法を扱っていこうと思います。 今回のテーマは「シグマ計算」です。 このシリーズの一覧はこちら 最初にまとめておきます。 シグマ計算の基本方針は次の3つです。 シグマ計算基本方針 公式利用とその延長 差分解からの和の中抜け 二項定理の活用 第1講はまずシグマ計算の公式の確認と、その延長について扱います。 手始めにまずは上の問題で公式の確認と、その証明をしてみてください。 最 ... シグマ計算基本方針 第2講【差分解からの和の中抜け】【2013年度 兵庫県立大学など】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 【有理化】 【部分分数分解】 テーマ別演習「シグマ計算基本方針」第2講です。 このシリーズの一覧はこちら シグマ計算の基本方針は次の3つです。 シグマ計算基本方針 公式利用とその延長 差分解からの和の中抜け 二項定理の活用 今回の第2講では 差分解からの和の中抜け を扱います。 差分解からの和の中抜けとは \(\displaystyle \sum_{k=1}^n (b_{k}-b_{k+1})\) とシグマの中身を差の形に見ることで \((b ... シグマ計算基本方針 第3講【二項定理の活用】【2007年度 大阪府立大学ほか】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) テーマ別演習「シグマ計算基本方針」第3講です。 このシリーズの一覧はこちら シグマ計算の基本方針は次の3つです。 シグマ計算基本方針 公式利用とその延長 差分解からの和の中抜け 二項定理の活用 今回の第3講では 二項定理の活用 を扱います。 二項定理を活用してシグマ計算する場面は特徴的であり、 二項定理を使うシグマ計算 コンビネーションのシグマ というのが見落としてはならない特徴であり、キーワードです。 ただ、単純に代入すればいいだけでなく、 ... シグマ計算基本方針 第4講【応用実践】【2005年度 大分大学ほか】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 【1】(以下ネタバレ注意) + クリック(タップ)して続きを読む 連続自然数の積のシグマ計算は工夫の余地があります。 バラバラに展開してしまった人は「ジェイソン」と呼ばせていただきます。 バラバラにして\(\displaystyle \sum_{k=1}^n k\) , \(\displaystyle \sum_{k=1}^n k^{2}\) , \(\cdots\) などを使って計算していくのは流石にシンドイと思います。 和の中抜けを ... シグマ計算基本方針 第5講【二項係数の2乗和】【経験値が必要】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 初見かつノーヒントであれば厳しいと思います。 まずはノーヒントで粘れるだけ粘ってみてください。 どうにも埒があかないな、となったら誘導付きの問題も用意しましたので、そちらで再チャレンジしてみてください。 + クリック(タップ)して誘導付きの問題でチャレンジする 誘導付きはこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) \((1+x)^{2n}\) という式を考えるという部分が見えるだけでも、気持ち的には楽でしょう。 と ... シグマ計算基本方針 第6講【二項係数の交代和】【2005年度 山形大学】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) このシリーズの一覧はこちら 今回扱うのは二項係数の符号が入れ違いになっている和(交代和)について考えます。 前半部分は第3講で扱った「二項定理の活用」という話題です。 「\((1+x)^{n}\) の展開式を用いて」というのはここまで勉強してきた人からすると正直余計なお世話でしょう。 (ii) の偶数番目だけを取り出したい、奇数番目だけを取り出したい、という問題についても (i) で考えた \(a\) , \(b\) を利用 ... シグマ計算基本方針 第7講【3つ飛ばしの二項係数の和】【1997年度 岐阜大学】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) このシリーズの一覧はこちら 今回扱うのは3つ飛ばしの二項係数の和について扱います。 原題ではもう少し段階的な設問がありましたが、言われたことをやっているうちに終わってしまい、作業感が強かったため、考えてもらいたい部分については一部カットしました。 (以下ネタバレ注意) + クリック(タップ)して続きを読む (1) について 二項定理の活用により仕留める方針が第一感です。 \((1+x)^{n}={}_{n} \ma ... のシリーズでご確認ください。 また、そもそもの「全称命題の倒し方」については 全称命題 全称命題 第1講【恒等式として等号が成立するための条件】【1990年度 東京工業大学】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 「全称命題」というテーマ性のある話題を扱います。 これは分野は関係なく、「考え方」に難しさがあり、独特な議論の進め方をします。 対応を知らないと、白紙になってしまったり、見当はずれなことを場当たり的に書いて終了してしまいかねません。 全称命題だと見抜く「眼」と、見抜いた後の「対応」の両輪をきちんと揃えておき、ライバルに差をつけましょう。 シリーズ一覧はこちら 今回は恒等式となるための条件を考えるという問題です。 見た目が仰々しく ... 全称命題 第2講【一般項と漸化式】【1986年度 東京工業大学】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 全称命題シリーズ第2講です。 シリーズ一覧はこちら 全称命題についての対応は第1講で学びました。 全称命題特有の処理を施すわけですが、その後については「分野」ごとの常識力が問われる問題に帰着します。 (以下ネタバレ注意) + クリック(タップ)して続きを読む 全ての自然数 \(n\) について \(a_{n}\) を割り切る素数を探すので、 \(a_{1}\) も割り切る必要があるよね? という屁理屈 ... 全称命題 第3講【整数問題】【一般項か漸化式どちらを扱うか】【1997年度 一橋大学】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 全称命題シリーズ第3講です。 シリーズ一覧はこちら 今回は整数分野の全称命題を扱います。 必要条件を言う部分で整数問題としての処理が求められるでしょう。 その後の十分性の確認では第2講の内容が存分に現れるので、前回の内容の確認もできると思います。 (以下ネタバレ注意) + クリック(タップ)して続きを読む \(a_{n}=5^{n}+an+b\) とおきます。 全称命題と捉えて \(a_ ... 全称命題 第4講【整数問題の基本手法の運用に帰着】【1991年度 金沢大学】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 全称命題シリーズ第4講です。 シリーズ一覧はこちら 今回は第3講に引き続き整数問題に関する全称命題です。 全称命題に関する基本的な対応については第1講で扱っていますが、今一度ここでも確認します。 step1全称命題だと見抜く 「任意の」「どんな」「全ての」\(\cdots\) という類の言葉は発見のシグナルです。 step2「じゃあ \(\cdots\)」と屁理屈(考えやすい簡単なケース)を言って答えの候補(必要条件)を出す。 ... 全称命題 第5講【楕円についての論証】【1990年度 東京大学】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 全称命題シリーズ第5講です。 シリーズ一覧はこちら そもそも、今は「全称命題」というシリーズとしての問題としてこの問題と向き合っているから頭が全称命題モードになっていて、屁理屈を言おうと思えるかもしれません。 しかし実際試験場では何が出題されるか分かりません。 色々な問題に紛れてポンとおいてあったときに、冷静に全称命題だと見抜いて必要条件を出せるのかといった難しさがあると思います。 分野的にも整数や数 ... のシリーズで取り扱っています。全称命題と捉える
(1) について
路線1
路線2
a_{n} &=& \displaystyle \frac{n+1}{n-2}a_{n-1} \\
&=& \displaystyle \frac{n+1}{n-2} \cdot \displaystyle \frac{n}{n-3}a_{n-2}\\
&=& \displaystyle \frac{n+1}{n-2} \cdot \displaystyle \frac{n}{n-3} \cdot \displaystyle \frac{n-1}{n-4}a_{n-3}\\
\end{eqnarray}$$(2) について
全体としての注意
ふたを開けた後の基本的処理