問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
とてもシンプルな題意ですが、見かけとは裏腹にとっかかりが見えにくい難問です。
「逆ならいえるのに」という類の問題で論証色が強いため、傷がないように話を進めるとなると神経も使います。
千葉大の整数問題は割と本格的な問題も多いため、試験場では取捨選択も含めた判断がいるでしょう。
(以下ネタバレ注意)
+ クリック(タップ)して続きを読む ひとまず、 \((a+bi)^{2}=(a^{2}-b^{2})+2abi\) ということから ということで、これらが整数という条件を使っていくことになります。 \(a\) , \(b\) が有理数であるということから と設定するのが自然でしょうか。 ただし、分母まで符号を請け負う必要はないため、\(m\) , \(k\) は自然数の設定でよいでしょう。 そして、既約分数として表現するために、 と設定しておきます。 これにより、 $$\begin{eqnarray} と整数 \(\alpha\) , \(\beta\) を用いて設定できます。 ここからの目標は \(m=1\) , \(k=1\) です。 よーく観察してみると分かりますが、 \((\displaystyle \frac{n}{m})^{2}-(\displaystyle \frac{l}{k})^{2}=\alpha\) ということは、\(a\) , \(b\) のどちらかが整数だと分かれば、移項することで残りはほぼ自動的に整数だということが言えます。 なぜなら、既約分数が整数ならば、分母は \(1\) となるしかないからです。 どちらかが整数だと分かればいいので、どちらか一方に集中したいと思います。 そこで、\(b\) に相当する \(\displaystyle \frac{l}{k}\) を消去します。 \(\displaystyle \frac{2nl}{mk}=\beta\) から \(\displaystyle \frac{l}{k}=\displaystyle \frac{{\beta}m}{2n}\) となります。 注意 このとき、\(n \neq 0\) 、すなわち \(a \neq 0\) である必要があり、場合分けの必要性が出てきます。 解答では \(a=0\) , \(b=0\) という特殊なケースはチャチャっと個別検証で片づけてしまうことにします。 \(\displaystyle \frac{l}{k}=\displaystyle \frac{{\beta}m}{2n}\) を \((\displaystyle \frac{n}{m})^{2}-(\displaystyle \frac{l}{k})^{2}=\alpha\) に代入して整理すると \({\beta}^{2}m^{4}=4n^{2}(n^{2}-{\alpha}m^{2})\) を得ます。 \(m\) , \(n\) は互いに素であることから \(\beta=nB\) と、整数 \(B\) を用いて表せます。 したがって、 \(B^{2}m^{4}=4 (n^{2}-{\alpha}m^{2}) \ \cdots (★)\) を得ます。 一方、 \(\displaystyle \frac{l}{k}=\displaystyle \frac{{\beta}m}{2n}=\displaystyle \frac{Bm}{2}\) ということで、 \(\displaystyle \frac{Bm}{2}\) が約分されて、既約分数 \(\displaystyle \frac{l}{k}\) になったと考えると、分母の \(k\) は \(k=1 \ , \ 2\) ということになります。 目標は \(k=1\) でしたから、あとは\(k=2\) を否定すればよいわけです。 \(k=2\) のとき \(\displaystyle \frac{l}{2}=\displaystyle \frac{Bm}{2}\) より、\(l=Bm\) ということになります。 \(k\) , \(l\) は互いに素ですから \(l\) は奇数 ということになり、 \(B\) , \(m\) も奇数 ということが言えます。 そうなると、先ほどの \((★)\) \(B^{2}m^{4}=4 (n^{2}-{\alpha}m^{2}) \ \cdots (★)\) の左辺と右辺の偶奇が異なることになってしまいます。 これにより、\(k=2\) ということが否定され、\(k=1\) ということになり解決します。 \(a+bi=r(\cos{\theta}+i\sin{\theta})\) と、極形式で表すと、ド・モアブルの定理により \((a+bi)^{2}=r^{2}(\cos{2\theta}+i\sin{2\theta})\) ということになります。 したがって、 \((a+bi)^{2}={\alpha}+{\beta}i\) とすると という、イメージ図が立つでしょう。 これにより、 $$\begin{eqnarray} ということになり、 \((a^{2}+b^{2})^{2}\) が整数 ということが言えます。 これにより、 有理数 \(a^{2}+b^{2}\) は整数 となり、 $$\begin{eqnarray} と、整数 \(\alpha\) , \(\beta\) , \(\gamma\) を用いて表せます。 ここから \(a^{2}=\displaystyle \frac{{\gamma}+{\alpha}}{2}\) , \(b^{2}=\displaystyle \frac{{\gamma}-{\alpha}}{2}\) とかなり簡潔に \(a\) , \(b\) の情報が得られます。 この路線は解答 PDF では【解1】で扱っています。 なお、この \(\alpha\) , \(\beta\) , \(\gamma\) は \({\alpha}^{2}+{\beta}^{2}={\gamma}^{2}\) を満たす整数ということでピタゴラス数ということになります。 例えば \((2+i)^{2}=3+4i\) で、 \(3^{2}+4^{2}=5^{2}\) \((3+2i)^{2}=5+12i\) で \(5^{2}+12^{2}=13^{2}\) \((4+3i)^{2}=7+24i\) で \(7^{2}+24^{2}=25^{2}\) というように、\((a+bi)^{2}\) を計算することで様々なピタゴラス数を得られるわけです。 ピタゴラス数については ピタゴラス数 第1講【平方剰余】【2004年度 旭川医科大学】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) \(a^{2}+b^{2}=c^{2}\) を満たす自然数 \((a \ , \ b \ , \ c \ )\) の組をピタゴラス数と言い、特に \(a\) , \(b\) , \(c\) のどの2つも互いに素であるとき、原始ピタゴラス数と言います。 原始ピタゴラス数に関する入試問題は頻出であり、今回は何題かピックアップしてシリーズものとして取り上げたいと思います。 シリーズ一覧はこちら 今回は第1講ということで ... ピタゴラス数 第2講【原始ピタゴラス数の一般解】【1999年度 京都大学】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) ピタゴラス数についてのテーマ別演習第2講です。 シリーズ一覧はこちら 第2講では原始ピタゴラス数の一般解について考えます。 この問題だけ見ると、 「なんだこのオチ」 と思うかもしれませんが、実はこのオチからもう少し話を進めると 原始ピタゴラス数の一般解 \(m\) , \(n\) を \(m \gt n\) を満たす互いに素で、偶奇の異なる自然数とする。 この \(m\) , \(n\) を用いて、\(a^{ ... ピタゴラス数 第3講【拡張版の等式】【2000年度 横浜国立大学】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) ピタゴラス数についてのテーマ別演習第3講です。 シリーズ一覧はこちら 今回はピタゴラス数の拡張として \(a^{2}+b^{2}+c^{2}=d^{2}\) を満たす自然数 \(a\) , \(b\) , \(c\) , \(d\) について扱います。 (以下ネタバレ注意) + クリック(タップ)して続きを読む 聞かれていることについては第1講で扱った平方剰余に近いものがあります。 そこで、(1) で ... 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) シリーズ一覧はこちら 非常にシンプルな問題ですが、難問です。 本問は歴史的には1955年にシェルピンスキーという数学者によって解決されました。 その後、この問題は一般のピタゴラス数についても成り立つか?という疑問に変わっていきます。 すなわち \(a\) , \(b\) , \(c\) を \(a^{2}+b^{2}=c^{2}\) を満たす正の整数とする。 \(a^{x}+b^{y}=c^{z}\) を満たす正の ... でシリーズものとして扱っています。路線1:有理数の設定
\left\{
\begin{array}{l}
(\displaystyle \frac{n}{m})^{2}-(\displaystyle \frac{l}{k})^{2}=\alpha\\
\displaystyle \frac{2nl}{mk}=\beta
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$$取っ掛かり
\(k=2\) のとき
路線2:ド・モアブルの定理によるイメージ
{\alpha}^{2}+{\beta}^{2}&=& r^{4} \\
&=& (r^{2})^{2} \\
&=& (a^{2}+b^{2})^{2}
\end{eqnarray}$$
\left\{
\begin{array}{l}
a^{2}-b^{2}=\alpha\\
2ab=\beta\\
a^{2}+b^{2}=\gamma
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$$複素数の2乗計算とピタゴラス数
テーマ別演習:ピタゴラス数