実践演習 極限・微分積分系

積分変数の変換【2017年度 富山大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

\(t\) に依存する3次方程式の解 \(\alpha\) ,  \(\beta\) ,  \(\gamma\) に関する定積分の値を考える問題です。

完答できるかどうかの差はつきやすい問題で、解決する人はあっという間に解決してしまうと思います。

「簡単な難問」、「難しい易問」という言葉がありますが、どちらかというと個人的には難しい易問だと感じました。

(以下ネタバレ注意)

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(1) について

\(x^{3}-3x=t\) が \(x=\alpha\) を解にもつわけですから

\(t={\alpha}^{3}-3{\alpha}\)

となり、\(t\) を消去できます。

問題文で「\(t\) を使うな」という指示があるため、\(t\) を消しにいくというのはぶっ飛んだ発想ではありません。

これにより、

\(x^{3}-3x-{\alpha}^{3}+3{\alpha}=0\)

が \(\alpha\) ,  \(\beta\) ,  \(\gamma\) を解にもつということになります。

元々 「\(x=\alpha\) を解にもつから」ということで立式したこの \(3\) 次方程式が \(x=\alpha\) を解にもつのは当然で、左辺は因数定理から、\(x-{\alpha}\) を因数にもちます。

そのことを念頭に置き、左辺を因数分解すると、この \(3\) 次方程式は

\((x-{\alpha})(x^{2}+{\alpha}x+{\alpha}^{2}-3)=0\)

となるため、\(\beta\) ,  \(\gamma\) は

\(x^{2}+{\alpha}x+{\alpha}^{2}-3=0\)

という \(2\) 次方程式から生じる解ということになり、あとは解の公式を用いて解けばよく、\(\beta \geq \gamma\) に注意すれば

\(\beta=\displaystyle \frac{-{\alpha}+\sqrt{3(4-{\alpha}^{2})}}{2}\) ,  \(\gamma=\displaystyle \frac{-{\alpha}-\sqrt{3(4-{\alpha}^{2})}}{2}\)

と得られて、解決です。

(2) について

解と係数の関係から

\({\beta}{\gamma}={\alpha}^{2}-3\)

ですから、

\(\displaystyle \frac{\beta \gamma}{\alpha}=\displaystyle \frac{{\alpha}^{2}-3}{\alpha}\)

となります。

したがって、与えられた定積分は

\(\displaystyle \int_{-2}^{2} \displaystyle \frac{{\alpha}^{2}-3}{\alpha} dt\)

となります。

ただし、今回は \(\alpha\) を \(t\) の式に直し

\(\displaystyle \int_{-2}^{2} (t の式) dt\)

とするのは困難です。

そこで、\(\alpha\) を \(t\) の式にする方向性は諦め

\(dt\) を \(d \alpha\) にする

という積分変数の方を変える方向性に切り替えます。

\(t={\alpha}^{3}-3{\alpha}\) ですから

\(dt=(3{\alpha}^{2}-3) d \alpha\)

なので、

\(\displaystyle \int_{-2}^{2} \displaystyle \frac{{\alpha}^{2}-3}{\alpha} dt=\displaystyle \int_{△}^{○} (\alpha の式) d \alpha\)

となり、解決します。

あとは \(t\) が \(-2\) から \(2\) まで変化するとき、\(\alpha\) がどこからどこまで変化するかを考え、積分区間をとらえれば解決です。

チェビシェフの多項式

勉強をしている人からすると、今回の

\(x^{3}-3x=t\)

という \(3\) 次方程式を見て、チェビシェフの多項式を活用した解法を狙えないかが頭をよぎった人もいると思います。

やってみると分かりますが、結構茨の道であり、強靭な基礎力が必要となります。

これについては別解というより、参考解答として【総括】の後に載せておきましたので、余力があればご一読ください。

チェビシェフの多項式については

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今回の話題に近いのは、第6講で扱った内容です。

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