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実践演習 極限・微分積分系

放物線と2直線で囲まれる部分の面積【1999年度 大阪府立大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

放物線と2直線で囲まれる部分の面積についての立式がメインテーマです。

構図としてはシンプルな構図なのですが、計算面で心がへし折られる受験生がかなり多いと思います。

これを試験場でバシッと計算を合わせるのは至難の業と言ってよいでしょう。

(以下ネタバレ注意)

 

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領域の図示

ひとまず題意の領域を図示したいと思います。

放物線 y=x^{2} の上側というのはいいでしょう。

(y-kx-1)(y-kx-x-1) \leq 0

という領域は

\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} y-kx-1 \geq 0 \\ y-kx-x-1 \leq 0 \end{array} \right. \end{eqnarray}

または

\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} y-kx-1 \leq 0 \\ y-kx-x-1 \geq 0 \end{array} \right. \end{eqnarray}

すなわち

\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} y \geq kx+1 \\ y \leq (k+1)x+1 \end{array} \right. \end{eqnarray}

または

\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} y \leq kx+1 \\ y \geq (k+1)x+1 \end{array} \right. \end{eqnarray}

ということになり、図示すると

という図の斜線部分(境界線を含む)ということになります。

路線1:まともに計算

というように

  • y=x^{2}y=kx+1 との交点を \mathrm{A}\mathrm{B}
  • y=x^{2}y=(k+1)x+1 との交点を \mathrm{C}\mathrm{D}

とし、\mathrm{P}(0 \ , \ 1) と設定します。

これを

  • \triangle{\mathrm{PAC}}\triangle{\mathrm{PBD}} は成分表示された三角形の面積公式
  • 残りの部分は \displaystyle \frac{1}{6} 公式

を用いて捌いていくのが直接的で思いつきやすい方針でしょう。

ただし、この路線はまともに計算を進めていくと、冒頭述べたように心が折れてしまいかねません。

完遂するためには、工夫が必要です。

ただ、その工夫というのは、目がチカチカする部分を置き換えて

目に優しく処理する

という単純かつ強力な工夫です。

「置き換えは幼稚」という謎の固定観念をもった受験生も少なくないのですが、決してバカにしてはいけない工夫です。

この路線は【解1】で扱っています。

路線2:傾きをメインの変数と見る

という面積を

  • 傾き k から傾き k+1 に変化した際の面積の変化量

と捉えます。

どういうことかというと

という傾き m に依存する面積 T(m) を先回りして計算しておくのです。

すると、x \geq 0 という右半分の面積は

T(k+1)-T(k)

という

傾きが k から k+1 に変化した際の変化量

の形で立式できるわけです。

じゃあ x \leq 0 の領域である左半分はどうするの?

という話ですが、これについては y 軸について対称移動させてしまい

という図で考えればよく、

S(k)=\{T(k+1)-T(k)\}-\{T(-k)-T(-k-1)\}

ということになるわけです。

それにしても、計算量は極端に減るわけではなく、工夫をしながら計算を進めていく必要があるでしょう。

これについては【解2】で取り扱っています。

路線3(参考):傾きを積分変数と見る

路線2は傾きをメインの変数と見て、傾き m に依存する面積を先回りして計算し、

傾き k から傾き k+1 へ変化した際の変化量

ととらえる方針でした。

これを発展させて、

  • じゃあもういっそのこと、傾き m を積分変数として見てしまえ

という考えもあります。

ただし、これについてはあくまで観賞用のものだと思いますので、【総括】のあとに参考として触れてあります。

(2) について

正直 (1) ができれば、(2) はそこまで難しくありません。

むしろ (1) ができた人へのご祝儀的な設問です。

(1) が正しく立式できていれば

S(k)=\displaystyle \frac{1}{2}k^{2}+\displaystyle \frac{1}{2}k+\displaystyle \frac{7}{6}

と出ているはずです。

したがって、

\displaystyle \frac{1}{2}k^{2}+\displaystyle \frac{1}{2}k+\displaystyle \frac{7}{6}=\displaystyle \frac{1}{2}k^{3}

という方程式を整理すると

3k^{3}-3k^{2}-3k-7=0

という3次方程式が得られます。

この3次方程式が正の実数解をただ1つもつことを示せばよく、手なりに微分して増減表を得ることで示すことができるでしょう。

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