実践演習 方程式・不等式・関数系

定義域が整数の2次関数【1993年度 高知大学ほか】

例題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

定義域が整数である2次関数に関する問題を扱います。

とびとびの整数を代入してできる値だけを考えることになるため、実数の問題の態度とはまた変わってくることになります。

ひとまず素朴な題意の問題を例題としてもってきました。

この後に類題を2題用意していますが、設定により例題で通用した態度が通じなかったり、逆に新たな別解が生じたりということで、対応に一貫性がないように思えるかもしれません。

そういった意味で観察力や対応力寄りの力が求められる問題と言えましょう。

(以下ネタバレ注意)

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条件 (ア) について

「ある」実数 \(a\) について \(f(a) \lt 0\) とは

  • \(f(a) \lt 0\) となるような \(a\) が存在する

という存在条件です。

下に凸の2次関数において代入値が負となるものが存在するためには、2次方程式 \(f(x)=0\) の判別式を \(D\) として

\(D \gt 0\)

ということになります。

本問においてはこれによって

\(p^{2}-4q \gt 0\)

を得ます。

条件 (イ) について

条件 (イ) についてはとびとびの整数だけ代入したら、全て \(0\) 以上ということであり、単純に判別式だけでどうこうなるわけではありません。

特に今回の \(y=f(x)\) が表す放物線は条件 (ア) より、\(x\) 軸に突き刺さっているにも関わらず整数を代入したら \(0\) 以上になっているという設定で、イメージで言えば

というイメージです。

ここから、色々考えられます。

路線1:\(f(x)=0\) の幅に注目する

\(f(x)=0\) の解同士の幅が大きいと、その中に整数値が入ってしまいそうです。

そのようなイメージをもって

  • \(f(x)=0\) の解同士の幅が \(1\) 以下である必要がある

と話を進めていく路線が考えられます。

今回は条件 (ア) により、\(f(x)=0\) は異なる2つの実数解 \(\alpha\) ,  \(\beta\) をもつことが保証されます。

これによって、

\(|\alpha-\beta| \leq 1\)

という条件式が得られます。

注意

あくまでこれは

  • 題意を満たすならば \(|\alpha-\beta| \leq 1\)

という必要条件であって、

  • \(|\alpha-\beta| \leq 1\) ならば題意を満たす

というわけではありません。

ということも、とびとびのタイミングによってはあり得てしまいます。

したがって、最終的に出てきた結論がきちんと題意を満たすかどうかを確かめなければなりません。(十分性のチェック)

これについては

\( 0\lt (\alpha-\beta)^{2} \leq 1\)

として処理すればよく、解と係数の関係から得られる

$$\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
\alpha+\beta = -p \\
\alpha \beta = q
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$$

という関係式から

$$\begin{eqnarray}
(\alpha-\beta)^{2} &=& (\alpha+\beta)^{2}-4 \alpha \beta \\
&=& p^{2}-4q
\end{eqnarray}$$

となります。

これにより

\(0 \lt p^{2}-4q \leq 1\)

を得ます。

整理すれば

\(4q \lt p^{2} \leq 4q+1\)

というように、整数 \(p^{2}\) が連続 2 整数 \(4q\) ,  \(4q+1\) に挟まれています。

等号の有無に気を付ければ

\(p^{2}=4q+1\)

という強力な関係式を得ます。

ここから先は整数問題の範疇となります。

目につくのは

\(p^{2}-1=4q\)

という形で見て

\((p+1)(p-1)=4q\)

という因数分解を狙っていく路線です。

\(p\) ,  \(q\) が素数であることも効いてきそうです。

ここから先は解答 PDF をご覧ください。

路線2:軸に一番近い整数を考える。

整数だけを代入していった値の中で

一番小さい雑魚(最小値)

が \(0\) に勝っていれば、全ての整数代入値 \(f(n)\) が \(0\) 以上であると言えます。

これについては絶対不等式の扱いという基本的な態度ですから、ある意味この路線も自然と言えば自然です。

今回は \(y=f(x)\) という放物線の軸である \(x=-\displaystyle \frac{p}{2}\) に一番近い整数を考えることになります。

その際に、\(p\) の偶奇による場合分けが発生することに気が付くでしょう。

\(p=2\) のときと \(p\) が奇素数のときで場合分けをします。

詳しくは【戦略2】【解2】の路線で解説しています。

類題1について

類題1はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

今度は1個だけ負となるものが許されるという設定です。

因数分解ができるタイプのものは問題集などによく載っています。

\(f(x)=5x^{2}-2kx+1\) と設定すると、軸は

\(x=\displaystyle \frac{k}{5}\)

ということで、例題の路線2である、軸に一番近い整数を考えるということが億劫となります。

本問は目の付け所によって様々な別解が考えられます。

手を動かす中で

「あれ?」

と思う部分が色々出てきたら、すかさず攻め込んでみてください。

類題2について

類題2はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

係数の中に実数 \(a\) という設定が入ってきました。

これによって、係数が整数であった例題や類題1とはまた勝手が違ってきます。

いやらしい計算力も要し、類題の経験があったとしてもハードな東大らしい問題です。

例題の解答はコチラ

類題1の解答はコチラ

類題2の解答はコチラ

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