問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
円に沿って動く接線の通過領域について考えるという問題です。
\(t\) の値によらず円に接しているという、強力な事実が先に与えられているため、(2) の通過領域については (1) が求まればなんとかなりそうです。
範囲付きの処理となるため、そのあたりがどこまで処理量に響いてくるかが問題かなというのが第一印象でしょう。
(以下ネタバレ注意)
+ クリック(タップ)して続きを読む 様々な解法が考えられます。 ひとまず円の中心を \((a \ , \ b)\) , 半径を \(r\) とします。 \((1-t^{2})x-2ty-t^{2}-1=0\) と、円 \(C\) が接するための条件は、中心とこの直線との距離が半径 \(r\) に等しいということであり、 \(\displaystyle \frac{|(1-t^{2})a-2tb-t^{2}-1|}{\sqrt{(1-t^{2})^{2}+4t^{2}}}=r\) ということになります。 ざっくり言えば、「この等式が \(t\) の値に関わらず成立する」ということですから、 として処理していきたくなると思います。 絶対値の処理については無理に2乗せず、場合分けによって絶対値を外す方が得策でしょう。 「\(t\) としての値に関わらず」 という条件を 「任意の \(t\) に対して」 と、全称命題として捉えることも有力です。 任意の \(t\) に対して \((1-t^{2})x-2ty-t^{2}-1=0\) という直線が円 \(C\) に接するのだから という屁理屈をかますわけです。 屁理屈をどんどん言っていくと ということになり、 という状況から \(x^{2}+y^{2}=1\) という円が浮き彫りになってきます。 ただ、もちろんこれが任意の \(t\) に対して接するかどうかという保証はありませんから、その保証をして初めて答えとしての資格を得ます。 このように全称命題の倒し方は 「任意の〇〇に対して ~~ が言える」 → 「じゃあ」特別この〇でも~~が言えるってことだよな? という屁理屈をかまして、答えの候補を浮き彫りにさせるという態度です。 これについては、ある程度の経験が必要な上級テーマであり、場数を踏みたい方は テーマ別演習:全称命題 全称命題 第1講【恒等式として等号が成立するための条件】【1990年度 東京工業大学】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 「全称命題」というテーマ性のある話題を扱います。 これは分野は関係なく、「考え方」に難しさがあり、独特な議論の進め方をします。 対応を知らないと、白紙になってしまったり、見当はずれなことを場当たり的に書いて終了してしまいかねません。 全称命題だと見抜く「眼」と、見抜いた後の「対応」の両輪をきちんと揃えておき、ライバルに差をつけましょう。 シリーズ一覧はこちら 今回は恒等式となるための条件を考えるという問題です。 見た目が仰々しく ... 全称命題 第2講【一般項と漸化式】【1986年度 東京工業大学】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 全称命題シリーズ第2講です。 シリーズ一覧はこちら 全称命題についての対応は第1講で学びました。 全称命題特有の処理を施すわけですが、その後については「分野」ごとの常識力が問われる問題に帰着します。 (以下ネタバレ注意) + クリック(タップ)して続きを読む 全ての自然数 \(n\) について \(a_{n}\) を割り切る素数を探すので、 \(a_{1}\) も割り切る必要があるよね? という屁理屈 ... 全称命題 第3講【整数問題】【一般項か漸化式どちらを扱うか】【1997年度 一橋大学】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 全称命題シリーズ第3講です。 シリーズ一覧はこちら 今回は整数分野の全称命題を扱います。 必要条件を言う部分で整数問題としての処理が求められるでしょう。 その後の十分性の確認では第2講の内容が存分に現れるので、前回の内容の確認もできると思います。 (以下ネタバレ注意) + クリック(タップ)して続きを読む \(a_{n}=5^{n}+an+b\) とおきます。 全称命題と捉えて \(a_ ... 全称命題 第4講【整数問題の基本手法の運用に帰着】【1991年度 金沢大学】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 全称命題シリーズ第4講です。 シリーズ一覧はこちら 今回は第3講に引き続き整数問題に関する全称命題です。 全称命題に関する基本的な対応については第1講で扱っていますが、今一度ここでも確認します。 step1全称命題だと見抜く 「任意の」「どんな」「全ての」\(\cdots\) という類の言葉は発見のシグナルです。 step2「じゃあ \(\cdots\)」と屁理屈(考えやすい簡単なケース)を言って答えの候補(必要条件)を出す。 ... 全称命題 第5講【楕円についての論証】【1990年度 東京大学】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 全称命題シリーズ第5講です。 シリーズ一覧はこちら そもそも、今は「全称命題」というシリーズとしての問題としてこの問題と向き合っているから頭が全称命題モードになっていて、屁理屈を言おうと思えるかもしれません。 しかし実際試験場では何が出題されるか分かりません。 色々な問題に紛れてポンとおいてあったときに、冷静に全称命題だと見抜いて必要条件を出せるのかといった難しさがあると思います。 分野的にも整数や数 ... も参考にしてください。 直線の通過領域について、目で追っていくことが中々難しい場合は 逆像法 による解法が有力です。 ただ、今回の場合は、円に沿って動く接線を考えるということで、ある程度目で追っていくことが可能でしょう。 目で追っていける場合は目で追っていった方が早いに決まっています。 なので、今回は逆像法の解答については見送り、目で追っていくことに集中する方針を考えることにします。 目で追いきることが難しい問題については テーマ別演習:逆像法 逆像法 第1講【逆像法の考え方と使いどころをマスター】【最大最小問題への応用】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 今回は難関大を目指すにあたっては避けて通れない話題である「逆像法」について扱います。 このシリーズを通じて 逆像法のもつイメージ 逆像法の代表的な使いどころ をマスターし、状況に応じて自分で使いこなせるようにすることでライバルに差をつけましょう。 このシリーズの一覧はこちら 代表的な使いどころ 入試によく出題される話題の中で、逆像法が有効にはたらく場面というのは以下の話題です。 逆像法の代表的な使いどころ 最大最小問題への応用 ... 逆像法 第2講【座標変換への応用】【線形計画法の考え方の素】 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 逆像法シリーズの第2講は 座標変換への応用 線形計画法 と逆像法についての関連を見ていきます。 このシリーズの一覧はこちら (以下ネタバレ注意) + クリック(タップ)して続きを読む (1) について \((x \ , \ y)\) という座標から \((x+y \ , \ xy)\) という座標への変換を考える問題です。 1954年に東大が出題したのが元祖で、通称「エンマさまの唇問題」と呼ばれている ... 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 逆像法シリーズ第3講は 通過領域 という難関大入試でも頻出の話題について扱います。 このシリーズの一覧はこちら (以下ネタバレ注意) + クリック(タップ)して続きを読む 直接目で追いきれないので \(\cdots\) 今回、\(a\) が動くにつれて円 \(C_{a}\) も動くわけですが、中心、半径が同時に動くため、ラフな動きはともかく、細かな動きを目で追いきることは難しいでしょう。 そこで、逆に ... 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 逆像法第4講は 方程式の実数解がとり得る値の範囲 を考えるにあたって、逆像法が活用できるということを見ていきます。 このシリーズの一覧はこちら (以下ネタバレ注意) + クリック(タップ)して続きを読む (1) について これについては2次方程式の解に関する注文が入ってくる、いわゆる「解の配置問題」です。 整理しないとグチャグチャになりやすいタイプだと思います。 \(x=0\) を解にもつとき \(x=2\) を解 ... でも扱っており、通過領域に関しては第3講で扱っています。 (1) で正しく接点が得られていれば \((\displaystyle \frac{1-t^{2}}{1+t^{2}} \ , \ -\displaystyle \frac{2t}{1+t^{2}})\) と得られています。 \(t \geq1\) という \(t\) に範囲が付く以上、接点も \(x^{2}+y^{2}=1\) 上をまるごと動くということにはならないでしょう。 よって、この接点が動き得る範囲について考えるのが自然な流れです。 \(x\) 座標の \(\displaystyle \frac{1-t^{2}}{1+t^{2}}\) については 定跡
頭でっかちは嫌われる というセオリーにしたがい、帯分数に直せば範囲が見えてきます。 \(y\) 座標の\(-\displaystyle \frac{2t}{1+t^{2}}\) については逆数をとると 相加平均・相乗平均の関係 をインスピレーションさせる形が登場します。 相当学習している受験生は ワイエルシュトラスの置換 \(\tan{\displaystyle \frac{\theta}{2}}=t\) とおいたとき、 \(\sin{\theta}=\displaystyle \frac{2t}{1+t^{2}}\) \(\cos{\theta}=\displaystyle \frac{1-t^{2}}{1+t^{2}}\) \(\tan{\theta}=\displaystyle \frac{2t}{1-t^{2}}\) と表せる。 ということを想起するかもしれません。 今回与えられた直線 \((1-t^{2})x-2ty=1+t^{2}\) は \(\displaystyle \frac{1-t^{2}}{1+t^{2}} x-\displaystyle \frac{2t}{1+t^{2}} y=1\) と変形できます。 \(y\) の係数の符号がマイナスであることに注意しつつ、ワイエルシュトラスの置換により \(t=\tan{(-\theta)}\) とおくと \((\cos{2\theta})x+(\sin{2\theta})y=1\) となり、円 \(x^{2}+y^{2}=1\) 上の点 \((\cos{2\theta} \ , \ \sin{2\theta})\) における接線であることを意味します。 (2) の \(t \geq 1\) という範囲も \(-\tan{\theta} \geq 1\) ということで、\(\theta\) の範囲が分かりますから、接点 \((\cos{2\theta} \ , \ \sin{2\theta})\) の動き得る範囲も分かります。 ワイエルシュトラスの置換については 今回は「ワイエルシュトラスの置換」と呼ばれる有名な置換を用いた問題を扱います。 ワイエルシュトラスの置換とは ワイエルシュトラスの置換とは ワイエルシュトラスの置換 \(\ ... 続きを見る でスポットを当てています。(1) について
路線1:恒等式としての処理
路線2:全称命題としての処理
(2) について
ウンチク
参考ワイエルシュトラスの置換【三角関数のうまい置き換え】【2004年度 山口大学ほか】