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仮想難関大シリーズということで、東大、京大をはじめとする旧帝大、東工大、国公立大学医学部医学科などの難関国公立大を想定したオリジナルの自作問題です。
「手垢の付いていない問題で力試しがしたい」
という方はぜひご活用ください。
今回は確率の問題です。
シンプルな題意とは裏腹に意外と考えにくさがあると思います。
切れ味鋭く切れ込む解答を見ると、京大らしく感じるでしょうし、愚直に進めるとスタミナが必要な東大らしさを感じると思います。
(以下ネタバレ注意)
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路線1:球を並べる
まずこのゲームの特徴としては
m+3 回以内には必ず決着がつく
ということが挙げられます。
\mathrm{A} の手番は奇数回目であるため、\mathrm{A} が勝つ可能性は
3 回目、5 回目、\cdots
ということになりますが、最長どこまで可能性があるかを考えたくなるはずです。
それを考えるにあたっては
m+3 の偶奇
もっと言うと
m の偶奇
によって変わってきます。
そこで、m の偶奇によって場合分けを行います。
m が奇数のとき
m が奇数のとき
m=2M-1
とおきます。
このとき、
m+3=2M+2
なので、2M+2 回以内には決着がつくことになります。
したがって、\mathrm{A} が勝つ可能性は
3 回目、5 回目、\cdots、2M+1 回目
ということになります。
そこで、
\mathrm{A} が 2k+1 回目に勝つ確率
を考えます。
\mathrm{A} が 2k+1 回目に勝つイメージは
というイメージの並びになります。
したがって、\mathrm{A} が 2k+1 回目に勝つ確率は
\displaystyle \frac{{}_{2k} \mathrm{ C }_2}{{}_{m+3} \mathrm{ C }_3}
ということになります。
k=1 \ , \ 2 \ , \ \cdots \ , \ M であるため、\mathrm{A} が勝つ確率は
\displaystyle \sum_{k=1}^{M}\displaystyle \frac{{}_{2k} \mathrm{ C }_2}{{}_{m+3} \mathrm{ C }_3}
となります。
m が偶数のとき
m が偶数のとき
m=2M
とおきます。
このとき、
m+3=2M+3
なので、2M+3 回以内には決着がつくことになります。
したがって、\mathrm{A} が勝つ可能性は
3 回目、5 回目、\cdots、2M+3 回目
ということになります。
先ほど同様
\mathrm{A} が 2k+1 回目に勝つ確率
を考えます。
これも先ほどのイメージと同様に
というイメージをもてば、\mathrm{A} が 2k+1 回目に勝つ確率は
\displaystyle \frac{{}_{2k} \mathrm{ C }_2}{{}_{m+3} \mathrm{ C }_3}
ということになります。
k=1 \ , \ 2 \ , \ \cdots \ , \ M+1 であるため、\mathrm{A} が勝つ確率は
\displaystyle \sum_{k=1}^{M+1}\displaystyle \frac{{}_{2k} \mathrm{ C }_2}{{}_{m+3} \mathrm{ C }_3}
となります。
路線2:袋の中の赤球の個数を追っていく
決着がつく前としては、袋の中の赤球は
3個、2個、1個
と限られた状態しかとりません。
n 個球を取り出した段階で袋の中の赤球の個数が3個、2個、1個となっている確率をそれぞれ
a_{n} , b_{n} , c_{n}
と設定してやります。
a_{n} について
a_{n} は噛み砕いて言ってしまえば
n 個とも白を取り出す確率
なので、単純です。
a_{n}=\displaystyle \frac{m}{m+3} \times \displaystyle \frac{m-1}{m+2} \times \cdots \times \displaystyle \frac{m-(n-1)}{m+3-(n-1)}
ということになります。
\cdots を使わずに明確に処理しようと思うと
a_{n}=\displaystyle \frac{{}_m \mathrm{ P }_n}{{}_{m+3} \mathrm{ P }_n}
と、順列の記号 \mathrm{P} を用いて表し、
{}_n \mathrm{ P }_k=\displaystyle \frac{n!}{(n-k)!}
と、階乗で表すのが明確です。
これにより、
a_{n}=\displaystyle \frac{\displaystyle \frac{m!}{(m-n)!}}{\displaystyle \frac{(m+3)!}{\{(m+3)-n\}!}}
となり、これを整理すると
a_{n}=\displaystyle \frac{m!}{(m-n)!} \times \displaystyle \frac{(m-n+3)!}{(m+3)!}
で、階乗の約分に注意すれば
a_{n}=\displaystyle \frac{(m-n+3)(m-n+2)(m-n+1)}{(m+3)(m+2)(m+1)}
となります。
b_{n} について
n 回球を取り出したときに赤球が2個残っているとは
- k-1 回白を取り続ける
- k 回目に赤を取る
- 残りの n-k 回白を取り続ける
というもので、その確率は
a_{k-1} \times \displaystyle \frac{3}{m-k+4} \times \displaystyle \frac{{}_{m-k+1} \mathrm{ P }_{n-k}}{{}_{m-k+3} \mathrm{ P }_{n-k}}
ということになります。
途中経過はここでは省略しますがこれを頑張って計算すれば
\displaystyle \frac{3(m-n+3)(m-n+2)}{(m+3)(m+2)(m+1)}
となります。
あとはこれを k=1 から k=n まで足し合わせればよく、
b_{n}=\displaystyle \sum_{k=1}^{n} \displaystyle \frac{3(m-n+3)(m-n+2)}{(m+3)(m+2)(m+1)}
となります。
ただ、シグマの変数 k がいないため、
b_{n}=\displaystyle \frac{3n(m-n+3)(m-n+2)}{(m+3)(m+2)(m+1)}
と計算は単純に済みます。
c_{n} について
n 回球を取り出したときに赤球が2個残っているとは
- k-1 回取り出して袋の中の赤球が2個
- k 回目に赤を取る
- 残りの n-k 回白を取り続ける
というもので、その確率は
b_{k-1} \times \displaystyle \frac{2}{m-k+4} \times \displaystyle \frac{{}_{m-k+2} \mathrm{ P }_{n-k}}{{}_{m-k+3} \mathrm{ P }_{n-k}}
となります。
これも頑張って計算すると
\displaystyle \frac{6(k-1)(m-n+3)}{(m+3)(m+2)(m+1)}
となります。
あとはこれを k=2 から k=n まで足し合わせればよく、
c_{n}=\displaystyle \sum_{k=2}^{n} \displaystyle \frac{6(k-1)(m-n+3)}{(m+3)(m+2)(m+1)}
となります。
実質は
\displaystyle \sum_{k=2}^{n} (k-1)=1+2+\cdots+(k-1)
を捌けばよいため、そこまで計算自体の負荷はありません。
計算結果は
c_{n}=\displaystyle \frac{3n(n-1)(m-n+3)}{(m+3)(m+2)(m+1)}
となります。
\mathrm{A} が勝つ確率
\mathrm{B} がとり終わったタイミングで袋の中の赤球が1個の状態で、次の \mathrm{A} の手番で \mathrm{A} が赤を取れば \mathrm{A} の勝ちです。
そこで
2k 個球を取ったとき、袋の中の赤球が1個であり、2k+1 回目に \mathrm{A} が赤を取る
という確率を考えてみます。
この確率は
c_{2k} \times \displaystyle \frac{1}{m-2k+3}
です。
あとはこれをシグマしてやればよいわけです。
k=1 \ , \ 2 \ , \ \cdots
ですが、最大どこまでいくのかについては上述の路線1同様、m の偶奇によって変わってきますから場合分けが必要となります。
あとは解答 PDF の【解2】をご覧ください。