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実践演習 方程式・不等式・関数系

三角関数の連立方程式【1994年度 東京理科大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

見かけ上、従属2変数関数の最大・最小問題に見えます。

実際には、薄皮一枚剥ぐと、「三角関数の連立方程式の運用」という部分がメインの処理内容になります。

路線によってはウルサイことになりかねないので、解法の検討という部分も勉強の内容に含まれるテーマです。

(以下ネタバレ注意)

 

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文字消去困難なときの有力手段

従属2変数関数の最大最小問題に対する最有力候補は

文字消去

です。

ただし今回の場合、裸の変数ではなく、三角関数の服をきているため、一見すると文字消去が困難です。

文字消去が困難な場合の次なる有力手段は

逆像法

です。

この逆像法の使いどころや考え方については

テーマ別演習:逆像法

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にて詳しく解説しています。

本問においては、\sin{x}+\sin{y}=k とおき、

どんな k なら実現可能か

を考えます。

これにより

\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} \cos{x}+\cos{y}=1 \\ \sin{x}+\sin{y}=k \end{array} \right. \end{eqnarray}

を同時に満たすことができるような k の条件を求めることになります。

つまりは、この連立方程式が実数解をもつかどうかという問題になります。

方針1:今度こそ文字消去

  • \cos{y}=1-\cos{x}
  • \sin{y}=k-\sin{x}

ですから、

\cos^{2}{y}+\sin^{2}{y}=1

に代入することにより、

(1-\cos{x})^{2}+(k-\sin{x})^{2}=1

と、y を消去することができます。

これを整理すると

k\sin{x}+\cos{x}=\displaystyle \frac{k^{2}+1}{2}

すなわち

\sqrt{k^{2}+1}\sin{(x+\alpha)}=\displaystyle \frac{k^{2}+1}{2}

\sin{(x+\alpha)}=\displaystyle \frac{\sqrt{k^{2}+1}}{2}

ということになります。

\alpha

\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} \cos{\alpha}=\displaystyle \frac{k}{\sqrt{k^{2}+1}} \\ \sin{\alpha}=\displaystyle \frac{1}{\sqrt{k^{2}+1}} \end{array} \right. \end{eqnarray}

を満たしています。

これを満たす x が存在すればよいので、

\displaystyle \frac{\sqrt{k^{2}+1}}{2} \leq 1

ということになり、ここから

-\sqrt{3} \leq k \leq \sqrt{3}

を得て解決します。

方針2:視覚化する

経験がモノを言う見方をすることは否めませんが、

\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} \cos{x}+\cos{y}=1 \\ \sin{x}+\sin{y}=k \end{array} \right. \end{eqnarray}

という関係式を

\left( \begin{array}{c} \cos{x} \\ \sin{x} \end{array} \right)+\left( \begin{array}{c} \cos{y} \\ \sin{y} \end{array} \right)=\left( \begin{array}{c} 1 \\ k \end{array} \right)

とベクトルの和として見てやります。

これにより、視覚的に k の範囲を求めることも可能です。

この路線については【解2】で解説しています。

方針3:辺々2乗する

\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} \cos{x}+\cos{y}=1 \\ \sin{x}+\sin{y}=k \end{array} \right. \end{eqnarray}

という関係式から

\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} \cos^{2}{x}+2 \cos{x}\cos{y}+\cos^{2}{y}=1 \\ \sin^{2}{x}+2 \sin{x}\sin{y}+\sin^{2}{y}=k^{2} \end{array} \right. \end{eqnarray}

と辺々2乗して加えると

1+2 \cos{(x-y)}+1=1+k^{2}

から、

\cos{(x-y)}=\displaystyle \frac{k^{2}-1}{2}

を得ることを考える人も多いでしょう。

ここから

-1 \leq \displaystyle \frac{k^{2}-1}{2} \leq 1

として

-\sqrt{3} \leq k \leq \sqrt{3}

を得られます。

ただ、この方針の場合、2乗することによって同値性が崩れてしまいます。

注意

①:2x-1=3 を満たす x 集まれ~

と呼びかけて集まってくる x

②:(2x-1)^{2}=9 を満たす x 集まれ~

と呼びかけて集まってくる x は違います。

② の呼びかけで集まってきた x が ① を満たしている保証がありません。

したがって、必要性と十分性について論じなければなりません。

このあたりがウルサイので、できればこの路線は避けたいというのが本音です。

ただ、そもそも同値性が崩れていることを気に留めない受験生も多いでしょう。

一応、今回は「こんなめんどいことになりまっせ」ということで【解3】で触れてあります。

解答はコチラ

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