テーマ別演習 ペル方程式

ペル方程式 第4講【ペル方程式の解と近似】【1984年度 一橋大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

ペル方程式の第4講は

「ペル方程式の解と近似」

という話題を扱います。

この話題を扱ううえでうってつけの例題です。

ペル方程式の解を用いて、\(\sqrt{2}\) の近似の精度をよくできるということを証明するというオチです。

初見であっても適切な誘導があり、割と親切な設計となっているため完答を狙いたいところです。

このシリーズの一覧はこちら

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ペル方程式 第2講 【ペル方程式の解と二項展開】【1994年度 東京工業大学】

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ペル方程式 第3講【ペル方程式とブラーマグプタの恒等式】【1998年度 お茶の水女子大学】

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ペル方程式 第4講【ペル方程式の解と近似】【1984年度 一橋大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) ペル方程式の第4講は 「ペル方程式の解と近似」 という話題を扱います。 この話題を扱ううえでうってつけの例題です。 ペル方程式の解を用いて、\(\sqrt{2}\) の近似の精度をよくできるということを証明するというオチです。 初見であっても適切な誘導があり、割と親切な設計となっているため完答を狙いたいところです。 このシリーズの一覧はこちら (以下ネタバレ注意) + クリック(タップ)して続きを読む (1) について このシリーズで散々扱っ ...

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(以下ネタバレ注意)

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(1) について

このシリーズで散々扱ってきた連立漸化式の作成であり、ここまできたら迷う余地はありません。

$$\begin{eqnarray}
(1+\sqrt{2})^{n+1} &=& (1+\sqrt{2})^{n}(1+\sqrt{2}) \\
&=& (x_{n}+y_{n}\sqrt{2})(1+\sqrt{2})\\
&=& (x_{n}+2y_{n})+(x_{n}+y_{n})\sqrt{2}
\end{eqnarray}$$

とすることで、

$$\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
x_{n+1} = x_{n}+2y_{n} \\
y_{n+1} = x_{n}+y_{n}
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$$

という結論を得ます。

ただし、単純に比較してよいのかという問題はありますので、解答ではそのあたりをキッチリと詰めます。

(2) について

(1) で得られる

$$\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
x_{n+1} = x_{n}+2y_{n} \\
y_{n+1} = x_{n}+y_{n}
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$$

という連立漸化式から

$$\begin{eqnarray}
{x_{n+1}}^{2}-2{y_{n+1}}^{2} &=& (x_{n}+2y_{n})^{2}-2(x_{n}+y_{n})^{2} \\
&=& -({x_{n}}^{2}-2{y_{n}}^{2})
\end{eqnarray}$$

と、等比数列の構造を得ます。

\((1+\sqrt{2})^{1}=1+1\sqrt{2}\)

より

\(x_{1}=1\) ,  \(y_{1}=1\)

です。

つまり

  • 初項:\({x_{1}}^{2}-2{y_{1}}^{2}=-1\)
  • 公比:\(-1\)

ということなので、

\({x_{n}}^{2}-2{y_{n}}^{2}=(-1)^{n}\)

を得て、題意が示されます。

路線2:数学的帰納法

(1) で漸化式が得られていますから、漸化式と相性のよい数学的帰納法でも示せます。

それについては【解2】で触れています。

(3) について

いよいよ、この問題のオチです。

よい近似値

ということがどういうことかを数式的にどのように表現するかが問題です。

良い近似値ということは

誤差が小さい

ということです。

つまり、注目すべきは

\(|\displaystyle \frac{x_{n}}{y_{n}}-\sqrt{2}|\)

という誤差を表す式です。

これに注目し、

\(|\displaystyle \frac{x_{n}}{y_{n}}-\sqrt{2}| \gt |\displaystyle \frac{x_{n+1}}{y_{n+1}}-\sqrt{2}|\)

ということが言えれば、誤差が小さくなり、よい近似値であるということの証明となります。

今回、色々な別解を載せていますが、結局はこの「誤差が小さくなる」という目標に向かって進めていくという方針は変わりません。

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