場合の数・確率系 実践演習

ババ抜きの確率【1995年度 京都大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

問題をよく見てみると、「ババ抜き」をモデルにした問題だと分かると思います。

2人でやるババ抜きはあまり面白くありませんが、数式的には、京大の入試問題として成立するぐらいの問題にはなります。

本問で言う 0 がババに相当します。

この状態でババをもっている \(A\) からスタートしたら、確実に(自動的に)手が進み

\(\{0 \ , \ 1 \ , \ 2 \ \cdots \ , \ n\}\) , \(\{1 \ , \ 2 \ , \ 3 \ \cdots \ , \ n\}\)

という設定である意味がなくなるので、手番が \(B\) からスタートするのは自然な設定です。

(以下ネタバレ注意)

 

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記述のための記号の導入

ひとまずは刻一刻と変化する状態を端的に表す記号のようなものを導入して、記述を楽にしたいところです。

本問においては \(0\) という数字が特別なポジションで、その他の数字のもつ意味合いはあまりありません。

そこで、

  • \(A\) が \(0\) と \(0\) 以外の \(n\) 枚のカードをもっている
  • \(B\) が \(0\) 以外の \(n\) 枚のカードをもっている

という状態を

\((A \ , \ B)=(0\&n枚 \ , \ n 枚)\)

などと表します。

(1) , (2) について

(1) は実験的な設問ですが、何も考えずに答えの数字を出すのに終始してしまうと、(2) につながりません。

少しでも (2) の漸化式に繋がるような要領を具体例を通じて見出そうという気持ちで臨みましょう。

急所としては

\((A \ , \ B)=(0\&n枚 \ , \ n 枚)\)  ( 手番 \(B\) )

という状態から

  • \(A\) が勝つ確率を \(p_{n}\)
  • \(B\) が勝つ確率を \(q_{n}\)

と設定されていますが、人に無駄に拘っていては身動きが取れません。

敢えて\(A\) ,  \(B\) ではなく、 \(X\) ,  \(Y\) とします。

\((X \ , \ Y)=(0\&n枚 \ , \ n 枚)\)  ( 手番 \(Y\) )

という、「ババをもっていない人」の手番から出発したとき

  • ババをもっている人が将来的に勝つ確率が \(p_{n}\)
  • ババをもっていない人が将来的に勝つ確率が \(q_{n}\)

と日本語で捉える部分が (1) ,  (2) の急所になります。

(3) について

(2) の漸化式を処理するだけですから、ここからは数列分野の問題になります。

幸いにも (2) の漸化式は証明形式で問われているので、試験場では最悪 (2) が解けなくても、(3) を解くことはできるでしょう。

試験場では時間が無くなってしまったら「(2) さえできれば (3) はできるんですよ。」的なニュアンスが伝わるように書いて爪痕は残しましょう。

そうなってくると (1) の検算にもなります。

そう考えると、実質は (2) が勝負ということになるでしょう。

諸々の注意点

漸化式の導入について

まず、冒頭言ったように、2人でやるババ抜きはババさえ引かなければ手が進みます。

なので、手番が交互に動くことを考えると、最終的な \(p_{n}\) は、

\(n\) の偶奇に左右される

ことが想定されます。

ただし、巡りによっては

最後の1枚を相手に引いてもらって勝ちが決定する

というある意味「他力本願」的な勝ちパターンもあり、そこまで単純にはいかず、漸化式の力を借りないのは厳しいものがあるでしょう。

さすがの京大もそこは誘導をつけたようです。

(2) の \(p_{n}+q_{n}=1\) の証明について

(2) で証明させられる \(p_{n}+q_{n}=1\) はある意味当たり前では?と思う人も多いと思います。

ただ、今回は「回数」が指定されておらず、例えば

お互いババを引き続ける

ようなことがあると勝負がつきません。

したがって

\(A\) が勝つ確率を \(p_{n}\) ,  \(B\) が勝つ確率を \(q_{n}\) ,  勝負がつかない確率を \(r_{n}\) としたとき、

\(r_{n}=0\) ということを示せ

と言われているものと考えた方がよさそうです。

例えば、問題文で

「この試行はどちらかの札がなくなるまではやり続けるものとする」

などの一文があれば「勝負がつくことが前提」となるため、\(r_{n}=0\) というのは自明としてよいでしょう。

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