極限・微分積分系

オイラーの定数【調和級数と対数関数の誤差】【2010年度 大阪医科大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

オイラーの定数

\(\displaystyle \lim_{n \to \infty}\{(1+\displaystyle \frac{1}{2}+\cdots+\displaystyle \frac{1}{n})-\log{n}\}\)

は収束し、その極限値 \(\gamma\) は

\(\gamma=0.5772\cdots\)

という値となり、オイラーの定数と呼ばれる。

という調和級数と対数関数の差に関する極限についての有名トピックスです。

この \(\gamma\) については恐らく無理数であり、超越数であろうことは予想されていますが、いまだに有理数なのか無理数なのかさえ分かっていません。

オイラーだけでなく、ガウスもこの数に興味を持っていたとされています。

天才たちを惹きつける謎が多い数ですが、その一端に触れる機会となる問題です。

(以下ネタバレ注意)

 

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単調性について

数列 \(\{a_{n}\}\) が単調減少、数列 \(\{b_{n}\}\) が単調増加であることを示す問題です。

素直に差を取り、微分の力を借りて押し切るのが試験場では現実的でしょう。

少し凝ったことを考えると

という図における打点部分の面積が \(a_{n}-a_{n+1}\) ですから

\(a_{n}-a_{n+1} \gt 0\)

と視覚的に処理することもできます。

(2) について

数列 \(\{b_{n}\}\) は単調増加です。

なので、

\(b_{n}\) を小さくしても \(0.4\) を上回る

ということを示したかったら、

\(b_{n}\) を小さくしよう

という気持ちでいくわけです。

つまり、一番小さい \(b_{2}\) でも

\(b_{2} \gt 0.4\)

であると言えれば証明完了です。

\(b_{2}=1+\displaystyle \frac{1}{2}-\log{3}=\displaystyle \frac{3}{2}-\log{3}\)

なので、この評価は問題文で与えられている不等式を用いていけば OK です。

(3) について

今度は \(a_{n}\) の評価です。

\(a_{n} \lt 0.75\) の証明について

\(a_{n}\) を大きくしようという気持ちで

\(a_{3} \lt 0.75\) が言えれば、数列 \(\{a_{n}\}\) が単調減少なので、

\(a_{n} \lt 0.75\)

が示せます。

処理の方向性は (2) と全く同様です。

問題は下からの評価です。

\(0.4 \lt a_{n}\) の証明について

\(a_{n}\) を小さくしても \(0.4\) を下回らないと言えれば勝ちです。

ただ、数列 \(\{a_{n}\}\) が単調減少であり、手持ちの武器が \(\log{3}\) に関する情報しかないことを考えると少し考えなければならないでしょう。

せっかくの (2) を誘導と捉えて活かそうと考えれば

\(b_{n} \lt a_{n}\)

が証明できれば、 (2) の結論から \(0.4 \lt a_{n}\) であることも言えます。

そこで、\(a_{n}-b_{n}\) について調べようという気持ちに流れていくはずです。

\(a_{n}-b_{n}=\log{(n+1)}-\log{n}=\log{(1+\displaystyle \frac{1}{n})} \gt 0\)

となりますから、解決です。

本問の結果は

数列 \(\{a_{n}\}\) は

  • 単調減少
  • 下に有界

ということが本問の結果から言えることになります

これより、\(\displaystyle \lim_{n \to \infty}a_{n}\) は収束します。

単調性と有界性をもてば収束するということは、直感的には納得がいくでしょう。

(ただ、厳密にそれを示すとなると高校範囲を逸脱します。)

これは冒頭述べたオイラーの定数の定義である

\(\displaystyle \lim_{n \to \infty}\{(1+\displaystyle \frac{1}{2}+\cdots+\displaystyle \frac{1}{n})-\log{n}\}\)

という極限値が収束するということを意味するわけです。

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