実践演習 極限・微分積分系

微分法の方程式・不等式への応用【1994年度 東京大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

見た目は、どこにでもありそうな微分の運用問題のように思えます。

ただ、型通りの問題で終わらないよう、言葉にすることが難しい「センス」を要求してくるあたりが流石東大です。

本問は1994年度東京大学理系第1問です。

「これはテンプレ問題だ。いける」

と試験開始直後に意気揚々と取り組み始め、計算量の多さに血の気が引いていく当時の受験生の様子が目に浮かびます。

第1問という位置取りも相まって、平常心を失いかねない問題と言えましょう。

(以下ネタバレ注意)

 

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路線その1:微分路線を試みる

ひとまず \(f(x)\) を微分してみると

\(f'(x)=4x^{3}+3x^{2}+x+\displaystyle \frac{1}{6}\)

となります。

以下は当時の受験生の心の声を再現してみます。

心の声

「因数分解?\(\cdots\) できない。。。」

「もう一回微分?」

$$\begin{eqnarray}
f''(x) &=& 12x^{2}+6x+1 \\
&=& 12(x+\displaystyle \frac{1}{4})^{2}+\displaystyle \frac{1}{4} \gt 0
\end{eqnarray}$$

「\(f'(x)\) は単調増加3次関数や!」

「\(f'(x)=0\) の解は、、、?」

きたねぇ、解けねぇ、解きたくねぇ

「じゃあ

\(4{\beta}^{3}+3{\beta}^{2}+{\beta}+\displaystyle \frac{1}{6}=0\)

となる \(\beta\) を設定する?」

「 \(f(\beta)\) が極小値だから、\(f(\beta)\) を計算するか \(\cdots\)」

「次数下げ?」

めんどくせぇ~~お母ちゃ~~ん

とまぁ、こんな感じでしょう。

この後の息が続きそうであれば、この方針でやり切るというのも一つの手です。

ただ、(2) も待ち構えていますから、計算ミスして慌てふためき、間違い探しをして時間ロスをするという最悪の事態を避けるために

何が何でも一発で仕留める

という集中力が必要です。

詳しい計算については【解1】としてあります。

路線その2:平方完成

(1) はもろ不等式証明ですし、(2) も単調性が決め手になりそうですから、 \(g'(x) \gt 0\) を目指すことになり、結局は不等式証明が決め手になりそうです。

正であることを目指すわけなので、2乗和を作る平方完成(あるいはそれに準ずる形)を目指すのもよいでしょう。

ただし、観察力が必要です。

また、最初からこの路線に入ってきた人はともかく、恐らく路線1の微分路線についてもある程度は手を付けている人が多いでしょう。

その場合、微分路線から一旦離れるという覚悟や勇気もある意味必要です。

この路線については【戦略2】【解2】で扱っています。

路線その3:係数の作為を活かす

今回の係数には明らかに作為の匂いを感じますし、

  • \(\displaystyle \frac {1}{0!}\) ,  \(\displaystyle \frac {1}{1!}\) ,  \(\displaystyle \frac {1}{2!}\) ,  \(\displaystyle \frac {1}{3!}\) ,  \(\displaystyle \frac {1}{4!}\) ,  \(\displaystyle \frac {1}{5!}\)

という係数から、

\(e^{x}=1+\displaystyle \frac {x}{1!}+\displaystyle \frac {x^{2}}{2!}+\displaystyle \frac {x^{3}}{3!}+\cdots\)

という \(e^{x}\) のテイラー展開(マクローリン展開)を想起する人もいるでしょう。

(もちろん、意欲的に勉強している人に限りますが)

例えば、今回の \(f(x)\) は

\(x=\displaystyle \frac{1}{X}\)

と置き換えることにより

$$\begin{eqnarray}
f(x) &=& x^{4}+x^{3}+\displaystyle \frac{1}{2}x^{2}+\displaystyle \frac{1}{6}x+\displaystyle \frac{1}{24} \\
&=& \displaystyle \frac{1}{X^{4}}+\displaystyle \frac{1}{X^{3}}+\displaystyle \frac{1}{2}\cdot\displaystyle \frac{1}{X^{2}}+\displaystyle \frac{1}{6}\cdot\displaystyle \frac{1}{X}+\displaystyle \frac{1}{24} \\
&=&\displaystyle \frac{1}{X^{4}}(1+X+\displaystyle \frac{1}{2}X^{2}+\displaystyle \frac{1}{6}X^{3}+\displaystyle \frac{1}{24}X^{4})
\end{eqnarray}$$

として見るわけです。

これにより、特に (2) の労力が激減します。

もちろん、\(x=\displaystyle \frac{1}{X}\) という置き換えをする以上、\(x=0\) か否かは気にする必要があります。

もちろん、場合分けをしてもよいですが、例えば (1) では

\(x \geq 0\) の範囲で \(f(x) \gt 0\)

となるのは自明でしょう。

なので、\(x \lt 0\) の範囲で考えればよいことになります。

この路線は【解3】で触れています。

振り返ってみると

作為的な係数を見ると、出題者の頭の中には路線その3の \(e^{x}\) のテイラー展開があったのでしょう。

ただ、それを期待しているとは思えません。

愚直に進める微分路線、あるいは形を見て平方完成で捌いていく路線を期待しての出題でしょう。

東大は

  • 背景はあるかもしれないけど、そんなことで右往左往するぐらいなら割り切って計算してしまった方が得策である

という類の出題も多いです。

東大に限ったことではありませんが、特に数学が得意で腕に自信がある人ほど

楽しむのは家で

という気持ちで、試験場では解くことに全集中しましょう。

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