実践演習 整数系

階乗に関する整数問題【2015年度 鳥取大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

階乗に関する整数問題ということで、最後のオチの問題は考えてみたくなる香ばしさがあります。

誘導付きなので、誘導をうまく活用できるかという要素の方が大きくなっています。

思考力(試行力)を養うためには誘導はない方がいいのですが、試験問題としてはこのぐらいでも機能すると思います。

(以下ネタバレ注意)

 

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(1) について

\(5!+4!+3!=120+24+6=150\)

これを落とすことは許されないでしょう。

  • \(c\) が \(3\) 以上だと \(a!+b!+c!\) が素因数 \(3\) をもっちゃうからヤバいよね

というメッセージなのでしょう。(多分)

(2) について

ざっくり言えば

\(a \geq 4\) だと、

\(a!+2\) は \(4\) で割って \(2\) 余る

ということになります。

一方、

\(2\) の累乗というのは基本 \(4\) で割り切れる

ということが言えるでしょう。

例外は \(2^{1}\) だけですが、

\(a!+2=2^{1}\)

というのは不可能でしょう。

このあたりをフォーマルに記述することになります。

否定的な命題ということもありますから、記述の方向性としては背理法が有力です。

(3) について

基本的には (2) と同じく背理法で仕留めていきます。

\(a \geq 6\) のとき

\(\displaystyle \frac{a!}{2}+4=2^{l}\)

となる自然数 \(l\) が存在すると仮定します。

分数が鬱陶しいので

\(a!+8=2^{l+1}\)

と見てやることにします。

左辺は \(8\) より大きいので、右辺の \(2^{l+1}\) も \(8\) より大きいため

\(l \gt 2\)

と言えます。

少しレイアウトを変えて

\(a!=2^{l+1}-8\)

としてやると、

\(a!=2^{3}(2^{l-1}-1)\)

となり、右辺が

\(2^{3} \times (奇数)\)

という形をしており、右辺は「素因数 \(2\) を \(3\) 個しかもたない」ということが言えます。

そうなると、

  • \(6!=6 \cdot 5 \cdot 4 \cdot 3 \cdot 2 \cdot 1\)

と、\(6!\) の時点で素因数 \(2\) を \(4\) 個もっていることに注意すると、

  • \(a\) が \(6\) 以上だと左辺の \(a!\) が素因数を \(4\) 個以上もってしまう

ということになり、矛盾します。

(4) について

いよいよオチの問題です。

ここまでの流れで、

数が大きくなると、色々ヤバい

ということはヒシヒシと伝わってきていると思います。

なので、小さい数から探していくという態度でいきたいですね。

そもそも

  • \(c \geq 3\) だと、\(a!+b!+c!\) は素因数 \(3\) をもってしまう

ということになり、\(2\) の累乗にはなり得ません。

なので、\(c=1 \ , \ 2\) と絞られることになります。

\(c=1\) のとき

\(S=a!+b!+1\)

ということになります。

ここから、観察力を要します。

\(b \geq 2\) だと \(a \geq 2\) ということにもなるため、

\(a!\) ,  \(b!\) はともに偶数

となり、

\(S\) は奇数

ということになってしまいます。

よって、\(b=1\) となるしかありません。

そうなると、

\(S=a!+2\)

ということになり、(1) の結果がモロに使えるでしょう。

\(a\) が \(4\) 以上だとヤバかったわけなので、

\(a=1 \ , \ 2 \ , \ 3\)

となり、あとは個別検証です。

\(c=2\) のとき

\(S=a!+b!+2\)

ということになります。

\(a!\) は \(b!\) を含んでいますから

\(S=b! \times (整数)+2\)

というように、前半 \(2\) 項を \(b!\) で括れます。

\(b \geq 4\) だと \(S\) が \(4\) で割って \(2\) 余るということになり、\(2\) の累乗である \(S\) の逃げ道は \(2^{1}\) となるしかないわけですが

\(a!+b!+2=2^{1}\)

となり、これを満たす \(a\) ,  \(b\) が存在せず、不合理です。

したがって、

\(b=2 \ , \ 3\)

と絞られます。

\(b=2\) のとき

\(S=a!+4\)

ですから、

\(a!+4=2^{p}\)

とおくと、

\(a!=2^{2}(2^{p-2}-1)\)

となり、\(a!\) が素因数 \(2\) をちょうど \(2\) 個だけもつことになり、不合理です。

\(b=3\) のとき

\(S=a!+8\)

ということになります。

(3) で出てきた議論により、\(a \geq 6\) だとマズいため

\(a=3 \ , \ 4 \ , \ 5\)

と絞られ、あとは個別検証です。

まとめ

階乗というのは、数が大きくなっていくと沢山素因数をもちます。

したがって、

  • 〇の倍数
  • 〇で割り切れる

といった「約数・倍数」が拾いやすくなるわけです。

また、例えば

  • \(N \geq 4\) だと \(N!+3\) を \(4\) で割った余りは \(3\)

というように、余りも抽出しやすいです。

整数問題の有力方針

  • 積の形から約数の拾い上げ
  • 余りで分類
  • 範囲を絞って評価する

という整数問題の3大方針のどの観点から見ても、重要な性質と言えるでしょう。

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