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\(a\) が自然数であれば
\((x_{1}+x_{2}+\cdots +x_{n})^{a} \geq x_{1}^{a}+x_{2}^{a}+ \cdots +x_{n}^{a}\)
という本問とは逆向きの不等式が成り立つのは自明なのですが、本問はそう容易くはないでしょう。
どこから切り崩そうか、戦略から含めて考える必要があります。
(以下ネタバレ注意)
+ クリック(タップ)して続きを読む 登場人物の中で唯一自然数設定である \(n\) に関する命題であると捉えれば、有力な方針は「数学的帰納法」でしょう。 \(n=1\) のときはほぼ自明です。 \(n=k\) のとき \((x_{1}+x_{2}+\cdots +x_{k})^{a} \leq x_{1}^{a}+x_{2}^{a}+ \cdots +x_{k}^{a}\) と仮定し \((x_{1}+x_{2}+\cdots +x_{k}+x_{k+1})^{a} \leq (x_{1}+x_{2}+\cdots +x_{k})^{a}+x_{k+1}^{a}\) と見れれば、仮定から解決しますが、そのためには \((x_{1}+x_{2})^{a} \leq x_{1}^{a}+x_{2}^{a}\) という \(n=2\) のときを示す必要が出てくることになります。 この \(n=2\) のときの証明が思っているほど簡単ではないと思います。 よくある評価としては凸性を利用して \(y=x^{a}\) のグラフを利用するという方針があります。 \(f(x)=x^{a}\) (\(x \geq 0)\) とすると、\(f(x)\) は上に凸なので、非負の実数 \(x_{1} , x_{2}\) に対して \(\displaystyle \frac{f(x_{1})+f(x_{2})}{2} \leq f(\displaystyle \frac {x_{1}+x_{2}}{2})\) すなわち \(\displaystyle \frac {x_{1}^{a}+x_{2}^{a}}{2} \leq (\displaystyle \frac{x_{1}+x_{2}}{2})^{a}\) となってしまい \(2^{a-1} (x_{1}^{a}+x_{2}^{a}) \leq (x_{1}+x_{2})^{a}\) と、逆向きの評価が得られることになります。 これはこれで、別の問題であればいい結果に繋がることもあると思いますが、今回はうまくいかないので、何かリカバリー策を考えることになります。 あらためて、今回のカギとなる不等式 \((x_{1}+x_{2})^{a} \leq x_{1}^{a}+x_{2}^{a}\) を見てみると、同次式になっていることに気が付けばしめたものです。 同次式の扱いについては 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 特徴のある式についてはその個性を活かした扱い方をします。 もちろん、そんな個性のある式はそんなに沢山あるわけではありません ... 続きを見る で取り扱っていますので、詳しくはそちらもご覧ください。 また、同次式だと見抜けなかった場合も、解けるには解けますが、中々苦しい式変形を要求されます。 そちらについては【総括】の中で触れておきましたので、ご確認いただければと思います。
同次式(斉次式)の扱いと絶対不等式としての処理【2016年度,1990年度 立命館大学】