問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
玉を取る、カードを取る、サイコロを投げる、といったいかにも確率の題材となる具体的試行ではなく、ある変数が整数 \(n\) という値をとる確率が \(p_{n}\) という抽象的な設定の問題です。
基本的な処理力だけでなく、その場力も加えた総合的な力が必要な良問です。
試験場ではキッチリと差がつく問題で、確保できればアドバンテージになる難易度だと言えましょう。
(以下ネタバレ注意)
+ クリック(タップ)して続きを読む ひとまずは \(X+Y=n\) となる確率が \((n+1)p_{n+1}\) である ということを立式するところから始めます。 \(X+Y=n\) とは \((X \ , \ Y)=(0 \ , \ n) \ , \ (1 \ , \ n-1) \ , \ \cdots \ , \ (n \ , \ 0)\) のいずれかが起こるということであり、その確率は \(p_{0} \cdot p_{n}+p_{1} \cdot p_{n-1}+\cdots+p_{n} \cdot p_{0}\) です。 つまり、 \(\displaystyle \sum_{k=0}^{n} p_{k} \cdot p_{n-k}\) であり、条件よりこれが \((n+1)p_{n+1}\) と等しいので \(\displaystyle \sum_{k=0}^{n} p_{k} \cdot p_{n-k}=(n+1)p_{n+1}\) という、何やら漸化式のようなものが得られます。 得体のしれない式であり、ここからどのように \(p_{1}\) , \(p_{2}\) , \(\cdots\) が得られていくのかという要領をつかむために、ひとまず実験してみることにします。 \(\displaystyle \sum_{k=0}^{n} p_{k} \cdot p_{n-k}=(n+1)p_{n+1}\) において \(n=0\) とすると \(p_{0} \cdot p_{0}=p_{1}\) すなわち \(p_{1}={p_{0}}^{2}\) を得ます。 次に \(n=1\) としてみると \(p_{0}p_{1}+p_{1}p_{0}=2p_{2}\) で、先ほどの \(p_{1}={p_{0}}^{2}\) という結果も踏まえると \(2{p_{0}}^{3}=2p_{2}\) すなわち \(p_{2}={p_{0}}^{3}\) を得ます。 ここまでくると という予想が立つと思います。 なんならダメ押しで \(n=2\) とでもしてみて、確信が持てるまで実験してみてください。 あとはこの予想を裏付ける証明を与えればよいことになります。 もちろん、漸化式が手元にある状態であることから、証明の手法としては 数学的帰納法 が最有力候補です。 今、手元にある漸化式は和に関する漸化式であり、上記実験で分かったように という要領で得られていきます。 したがって、帰納法のスタイルとしては という構造の帰納法(人生帰納法)で進めていきます。 帰納法のスタイルの選択については 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 帰納法の肝である「前段仮定」について考える問題です。 通常の帰納法 昨日法 \(n=k\) のときの成立を仮定して、\(n=k+1\) ... 続きを見る を参考にしてください。 帰納法によって \(p_{n}={p_{0}}^{n+1}\) ということが裏付けられたら、あとは \(\displaystyle \sum_{n=0}^{\infty}p_{n}=1\) ということを用いると \(p_{0}=\displaystyle \frac{1}{2}\) と得られるため \(p_{n}=(\displaystyle \frac{1}{2})^{n+1}\) となり、\(p_{n}\) については解決です。 \(p_{n}\) が求まれば、後半の求めるべき \(\displaystyle \sum_{n=0}^{\infty}np_{n}\) という値は \(\displaystyle \sum_{n=0}^{\infty}n(\displaystyle \frac{1}{2})^{n+1}\) というものであり、この無限級数は部分和の極限、すなわち \(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \displaystyle \sum_{k=0}^{n} k (\displaystyle \frac{1}{2})^{k+1}\) を計算することになります。 この部分和はいわゆる (等差)×(等比)型 と呼ばれる構造であり、公比をかけてズラし、辺々引くという 「カケズラ」 という態度で倒すのが常套手段です。 流石に、難関大受験生であれば、(等差)×(等比)型のシグマ計算は打ち損じが許されない必須の基本事項です。 なお、計算結果は \(\displaystyle \sum_{n=0}^{\infty}np_{n}=1\) となりますが、これはある意味当然と言える結果です。 そのことについては【総括】の中で少し触れてあります。条件の立式
要領がつかめないとき
参考帰納法の前段仮定【一昨日昨日(帰納)法】【人生帰納法】【2013年度 東京工業大学】【1998年度 大阪府立大学】
後半の問いについて