実践演習 整数系

素数が存在する区間【ベルトラン・チェビシェフの定理】【1997年度 京都教育大学】

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以前、

参考素数の階乗【ウィルソンの定理】【素数砂漠】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 素数の階乗を用いた興味深い性質について見ていきます。 問題のオチは素数が無限に存在するということの証明で、この事実の証明自体は で扱って ...

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の記事の中で、素数が存在しない区間(素数砂漠)について触れましたが、本問は素数が存在する区間について考える問題です。

本問も素数の階乗について扱っていますので、併せて見ると繋がりが感じられると思います。

本問は誘導が付いているため、問題を解くこと自体は特に無茶苦茶な要求ではありません。

むしろ、(2) のオチの結果は割とガバガバな結果で、

\(n!\) は \(n\) に比べてかなり大きいから、そりゃそうでしょうね

と、感覚的にも納得できるものでしょう。

(以下ネタバレ注意)

 

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(1) について

\(n!\) は \(n\) 以下の自然数すべてで割り切れます。

よって、\(n!-1\) は \(n\) 以下の自然数すべてで割り切れることはありません。

これは \(n!-1\) を割り切る約数が存在するとしたら \(n\) より大きいものであるということを意味します。

(2) について

\(3\) 以上の自然数 \(n\) に対しては

\(n \lt n!-1 \lt n!\)

です。

\(n!-1\) が素数のとき

\(n!-1\) が素数のときは、\(n\) と \(n!\) の間に素数が存在するという題意の主張は即成立することになります。

\(n!-1\) が素数でないとき

\(n!-1\) が素数でないとき、すなわち

\(n!-1\) が合成数のとき

について考えます。

\(n!-1\) が合成数のとき、\(n!-1\) は少なくとも 1 つ素因数をもつことになります。

その素因数を \(p\) とします。

この素因数 \(p\) は当然 \(n!-1\) を割り切る約数ということになります。

したがって、(1) の結果からこの \(p\) は \(n\) より大きいことになり

\(n \lt p\)

が言えます。

一方で

\(p \lt n!-1 \lt n!\)

ということも言えるため、

\(n \lt p \lt n!\)

が成り立ちます。

これは、\(n\) と \(n!\) の間に素数が存在することを意味しており、題意成立です。

本問の結果をより精密にしたもの

冒頭でも述べましたが、\(n\) に比べて \(n!\) はかなり大きな数なので、

  • \(n\) と \(n!\) の間に素数が存在する

と言われても、そりゃそうでしょうね、とそこまでありがたがる結果ではないかもしれません。

素数が存在する区間については

ベルトラン・チェビシェフの定理

\(n\) を正の整数としたとき、

\(n \lt p \leq 2n\)

を満たす素数 \(p\) が存在する。

という、本問で示した結果よりも精密な結果が知られています。

なお、同じような問題で

\(n\) を正の整数としたとき

\(n^{2} \lt p \lt (n+1)^{2}\)

を満たす素数 \(p\) が存在するか

という問題もありますが、こちらは未解決です。

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