実践演習 方程式・不等式・関数系

補間多項式の考え方【マルコフの不等式】【1981年度 学習院大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

マルコフの不等式と呼ばれる次の定理

マルコフの不等式

\(f(x)\) を高々 \(n\) 次の整式とする。

\(-1 \leq x \leq 1\) において、\(|f(x)| \leq M\) ,  \(|f'(x)| \leq M'\) としたとき

\(M' \leq n^{2}M\)

が成り立つ。

という定理の \(n=2\) の場合の証明です。

古典的な内容であり、話の進め方も独特なものがありますから初見で対応するのは難しいと思います。

できなかったとしても、自信を失う必要はありません。

ただ、難しさを実感するためにあ~だこ~だ考える時間は最低限とって考えてみてほしいと思います。

(以下ネタバレ注意)

 

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発想の根元はラグランジュの補間法

\(f(x)=ax^{2}+bx+c\) とします。

① の範囲において

\(|f(x)| \leq 1\) であるとき、\(|f'(x)| \leq 4\)

であることを示すわけです。

\(y=f'(x)\) のグラフが直線であることを考えると\(|f'(x)| \leq 4\) を示すためには

\(|f'(1)| \leq 4\) かつ \(|f'(-1)| \leq 4\)

を示せば十分です。

条件である\(|f(x)| \leq 1\) というのは「\(f\) への代入値」に関する条件です。

そこで、

  • 係数 \(a\) ,  \(b\) ,  \(c\)  を代入値で表す

ということを考えます。

2次関数については3点指定すれば確定しますから、① の範囲で簡単な

  • \(f(1)\) ,  \(f(0)\) ,  \(f(-1)\)

を考えることにします。

このまま考えてもいいですが、名前を付けて

\(f(1)=p\) ,  \(f(0)=q\) ,  \(f(-1)=r\)

とします。

この \(p\) ,  \(q\) ,  \(r\) は条件から

$$\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
|p| \leq 1 \\
|q| \leq 1 \\
|r| \leq 1
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$$

を満たしています。

繰り返しになりますが、目標は

係数 \(a\) ,  \(b\) ,  \(c\)  を情報をもっている \(p\) ,  \(q\) ,  \(r\) で表す

ということです。

\(f(1)=p\) ,  \(f(0)=q\) ,  \(f(-1)=r\) である2次式は

\(f(x)=\displaystyle \frac{px(x+1)}{(1-0)(1+1)}+\displaystyle \frac{q(x-1)(x+1)}{(0-1)(0+1)}+\displaystyle \frac{rx(x-1)}{(-1-0)(-1-1)}\)

と表すことができます。

これをラグランジュの補間法といいます。

詳しくは

参考ラグランジュの補間法【1989年度 関西大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) ラグランジュの補間法に関連する問題を扱ってみます。 一見するとゴッツい形になりますが、中身を見て見ると心地よさを感じる内容です。 (以下 ...

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も参考にしてください。

今回の \(f(x)\) を整理すると

\(f(x)=\displaystyle \frac{p}{2}x(x+1)-q(x+1)(x-1)+\displaystyle \frac{r}{2}x(x-1)\)

ということになり、まとめると

\(f(x)=(\displaystyle \frac{p}{2}-q+\displaystyle \frac{r}{2})x^{2}+(\displaystyle \frac{p-r}{2})x-q\)

です。

\(f(x)\) を情報をもっている \(p\) ,  \(q\) ,  \(r\) で表すことに成功しました。

こうなってくると

\(f'(x)=(p-2q+r)x+\displaystyle \frac{p-r}{2}\)

ということになりますから、目標の

\(|f'(1)| \leq 4\) かつ \(|f'(-1)| \leq 4\)

については絶対値をバラす三角不等式を用いれば手なりに解決します。

今回の発想や流れは馴染みのない考え方だったかもしれませんが、芸術鑑賞に近い感覚で楽しむぐらいで構わないと思います。

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