実践演習 方程式・不等式・関数系

空間における2円【1999年度 東京大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

空間座標における2つの円を扱う問題です。

空間の図形問題は苦手意識をもつ受験生も多く、差がつきやすいトピックスでしょう。

本問は題意の把握、把握後の立式、立式後の処理と各ステージで山場があり、完答するためには確かな力が必要となります。

(以下ネタバレ注意)

 

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題意の把握

一見、

「ん?どういう状況だ?」

と身構える問題です。

条件 (a) を見た印象としては

「原点中心、半径 \(1\) の球の内部に2つの円板があるということね。」

と、ひとまず飲み込めます。

条件 (b) が本問を特徴づける本問ならではの条件でしょう。

そこで条件 (b) が何を言っているのかを把握したいと思います。

条件 (a) まで律儀に考慮したお絵描きをすると、図がうるさくなるため、条件 (b) の状況を多少雑になってもよいのでお絵描きしてみますと

というようなイメージでしょうか。

こうしてみると、

「ん?\(\mathrm{P}\) って \(x\) 軸上にあるじゃん」

という最初のキーポイントに辿り着くでしょう。

なお、今回は

「円板」

という中身が詰まった板を考えるため、

というように \(\mathrm{P}\) を共有することはないことに注意しましょう。

図の太線部分の各点全てが共有部分となってしまい、1点のみを共有するという条件 (b) に反してしまいます。

題意の把握後の立式

ひとまず

という状況が把握できたら、あとはこのシチュエーションが完成するためには何が言えればよいのかを考えていきます。

ひとまず、\(\mathrm{P}\) は \(x\) 軸上にあることは先ほどから分かっているため

\(\mathrm{P}\) \((p \ , \ 0 \ , \ 0)\)

と設定できるでしょう。

\(yz\) 平面に関する対称性から、この \(p\) は

\(0 \leq p \lt 1\)

と設定しても一般性を失いません。

次に注目したいのが

という \(x\) 軸との交点 \(\mathrm{S}\) ,  \(\mathrm{T}\) です。

  • \(\mathrm{S}\) \((s \ , \ 0 \ , \ 0)\)
  • \(\mathrm{T}\) \((t \ , \ 0 \ , \ 0)\)

と設定したときにどうなればよいかですが、条件 (a) がなければ、この円板 \(\mathrm{A}\) ,  \(\mathrm{B}\) はいくらでも膨らませることができます。

条件(a) により

原点中心、半径 \(1\) の球に接触するまで膨らませる

ということになりますから、\(s\) ,  \(t\) の満たすべき条件は

\(-1 \leq s \leq p \leq t \leq 1\)

ということになります。

立式後の処理

あとは、当然 \(s\) ,  \(t\)  を求めていきたいと考えるでしょう。

ひとまず、\(\mathrm{S}\) , すなわち \(s\) について考えてみます。

円板 \(\mathrm{A}\) について考えたければ、平面に落とし込んで考えれば十分です。

さらに、中身ではなく境界線のみを考えれば十分です。

そこで、円板 \(\mathrm{A}\) の境界線を \(C_{\mathrm{A}}\) とし、

  • \(C_{\mathrm{A}}\) の中心の座標を \((\alpha \ , \ \beta)\) ,  半径を \(r_{\mathrm{A}}\)

と設定することで、\(C_{\mathrm{A}}\) の方程式

\((x-\alpha)^{2}+(y-\beta)^{2}={r_{\mathrm{A}}}^{2}\)

が得られます。

\(s\) が欲しければ、当然 \(y=0\) とすればよく、

\((x-\alpha)^{2}+{\beta}^{2}={r_{\mathrm{A}}}^{2}\)

となります。

ここからですが、

  • 円 \(C_{\mathrm{A}}\) が \(\mathrm{P}\) を通る

という条件から、一文字消せます。

\((\alpha \ , \ \beta)\) と \((p \ , \ 0)\) との距離が \(r_{\mathrm{A}}\) なので、

\({r_{\mathrm{A}}}^{2}=(\alpha-p)^{2}+{\beta}^{2}\)

ということになり、ここから \(\beta\) を消去すると、

\((x-\alpha)^{2}+{r_{\mathrm{A}}}^{2}-(\alpha-p)^{2}={r_{\mathrm{A}}}^{2}\)

となります。

これを整理すると

\((x-p)(x-2\alpha+p)=0\)

を得ます。

\(x=p\) は当然 \(\mathrm{P}\) の \(x\) 座標を与えるため、\(\mathrm{S}\) の \(x\) 座標 \(s\) は

\(s=2\alpha-p\)

ということになります。

したがって、先ほどの

\(-1 \leq s \leq p\)

となっていればよいという目論見の処理をすると

\(-1 \leq 2\alpha-p \leq p\)

ということになり、

\(\displaystyle \frac{p-1}{2} \leq \alpha \leq p\)

というように、\(\alpha\) の範囲が出てきます。

ここで、条件 (a) を加味して、

  • \(C_{\mathrm{A}}\) が、円 \(x^{2}+y^{2}=1\) に内接する

ということの翻訳をすると

\((1-r_{\mathrm{A}})^{2}={\alpha}^{2}+{\beta}^{2}\)

ですから、先ほどの

\({r_{\mathrm{A}}}^{2}=(\alpha-p)^{2}+{\beta}^{2}\)

と比べて辺々を引いてやると

\(2r_{\mathrm{A}}-1=p^{2}-2p\alpha\)

ということになり、

\(r_{\mathrm{A}}=-p\alpha+\displaystyle \frac{p^{2}+1}{2}\)

となり、先ほどの

\(\displaystyle \frac{p-1}{2} \leq \alpha \leq p\)

という範囲で、この \(\alpha\) についての1次関数の最大値を求めればよいわけです。

係数は \(0\) 以下ですから、\(\alpha=\displaystyle \frac{p-1}{2}\) のときに \(r_{\mathrm{A}}\) は最大値

\(-p \cdot \displaystyle \frac{p-1}{2}+\displaystyle \frac{p^{2}+1}{2}=\displaystyle \frac{p+1}{2}\)

となります。

詳しい計算は解答 PDF の中でやっていますが、同様に円板 \(\mathrm{B}\) の半径 \(r_{\mathrm{B}}\) の最大値も計算すると

\(\displaystyle \frac{-p^{2}+1}{2}\)

となりますから、\(r_{\mathrm{A}}+r_{\mathrm{B}}\) の最大値は \(p\) を固定した状態では

\(\displaystyle \frac{p+1}{2}+\displaystyle \frac{-p^{2}+1}{2}\)

すなわち

\(-\displaystyle \frac{1}{2}p^{2}+\displaystyle \frac{1}{2}p+1\)

となります。

あとは、固定していた \(p\) を \(0 \leq p \lt 1\) の範囲で動かして、king of 最大値を求める決勝戦を行えばよいわけです。

まとめ

様々な文字が飛び交いましたが、それらの文字が独立に動くのか、従属関係にあるのかを見失うことなく、それぞれに応じた適切な対応が求められました。

口述筆記で文章にしているため、冗長に感じたかもしれませんが、解答としてまとめるともう少しスッキリはまとまります。

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