実践演習 方程式・不等式・関数系

無理方程式と論証【両辺2乗と同値性】【1961年度 横浜国立大学】

問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)

シンプルに無理方程式を解くという題意ですが、

  • バシッと完答できる
  • アワワワとなって泡を吹く
  • 実数解には辿り着けたが、論証面で傷を負う

の3パターンのどれかにキッチリ分かれるでしょう。

このあたりの論証は普段からどれだけ丁寧に学習を積み重ねてきたかが問われます。

(以下ネタバレ注意)

 

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基本方針

一見どこから手を付けたらよいのか立ち往生しかねませんが、基本方針としては根号を外す

「2乗操作」

を狙っていきたいところです。

ただ、そのまま2乗するなど、むやみやたらに2乗しても見通しが悪いことは火を見るよりも明らかです。

ここで、問題文に目を向けると

  • \(a\) ,  \(b\) ,  \(c\) は \(\pm 1\) のどちらか

ということが言えます。

つまり、\(a\) ,  \(b\) ,  \(c\) は実質的に

  • 符号的役割に過ぎない

ということになります。

そう考えると、与えられた方程式の左辺である

\(\sqrt{x+7}+a\sqrt{x+5}+b\sqrt{x+3}+c\sqrt{x+2}\)

\(\sqrt{x+7} \pm \sqrt{x+5} \pm \sqrt{x+3} \pm \sqrt{x+2}\)

ただし、複号 \(\pm\) は任意

という \(2^{3}\) (\(=8\)) 通りの可能性が考えられます。

個別検証

8パターンぐらいであれば、もはや \(a\) ,  \(b\) ,  \(c\) のいない具体的な方程式について一つずつ検証した方がよいでしょう。

ひとまず

\(\sqrt{x+7}+\sqrt{x+5}+\sqrt{x+3}+\sqrt{x+2}=0\)

について考えてみます。

そうすると、

「明らかに左辺って正の数じゃね?」

と思えるはずですし、思えてほしいところです。

ここを皮切りに

「意外とダメなものだらけじゃね?」

と思えればしめたもので、このように左辺が正となるものを一気に削っていきます。

すると

  • \(\sqrt{x+7}+\sqrt{x+5}+\sqrt{x+3}+\sqrt{x+2} \gt 0\)
  • \(\sqrt{x+7}+\sqrt{x+5}+\sqrt{x+3}-\sqrt{x+2} \gt 0\)
  • \(\sqrt{x+7}+\sqrt{x+5}-\sqrt{x+3}+\sqrt{x+2} \gt 0\)
  • \(\sqrt{x+7}-\sqrt{x+5}+\sqrt{x+3}+\sqrt{x+2} \gt 0\)
  • \(\sqrt{x+7}+\sqrt{x+5}-\sqrt{x+3}-\sqrt{x+2} \gt 0\)
  • \(\sqrt{x+7}-\sqrt{x+5}+\sqrt{x+3}-\sqrt{x+2} \gt 0\)

と言え、8パターン中、6パターンが一気に削られます。

したがって、可能性があるのは

  • \(\sqrt{x+7}-\sqrt{x+5}-\sqrt{x+3}+\sqrt{x+2}=0\)
  • \(\sqrt{x+7}-\sqrt{x+5}-\sqrt{x+3}-\sqrt{x+2}=0\)

ということになり、この2つについてじっくりと個別検証していきます。

いずれにせよ

  • \(\sqrt{ \  \ }\) を単独一匹狼にするように移項して2乗する

という方針をもって式変形していきます。

気を付けたいのは

ココに注意

2乗すると同値性が失われる

ということです。

例えば

\(\sqrt{A}=B \Rightarrow A=B^{2}\)

は言えますが、逆の

\(A=B^{2} \Rightarrow \sqrt{A}=B\)

は言えません。

\(\Leftrightarrow\) で繋ぐためには

$$\sqrt{A}=B \Leftrightarrow \begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
A = B^{2} \\
B \geq 0
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$$

です。

この辺りに注意しながら捌いていきます。

冒頭述べた

  • 実数解は求まるが、論証面で傷を負う

ということについては【総括】で述べています。

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