問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。)
対称性について考えさせられる問題です。
対称性を見落とさないことは数学において非常に大事な着眼点の一つです。
本問は一見対称性があるように見えますが、深く考えずに進めていくと手が止まる瞬間がやってくると思います。
完答するためにはどこかしらで何かしらの対応力が必要です。
(以下ネタバレ注意)
+ クリック(タップ)して続きを読む 基本
条件一つで1文字消去 という原則にしたがって、文字を消したいと思うのが人情でしょう。 条件を見て見ると、\(x\) , \(y\) , \(z\) には対称性がありますが、\(a\) , \(b\) , \(c\) には対称性がありません。 通常、対称性によって「どの文字を消しても同じ」ということが多い中、本問においてはどの文字を消しても同じというわけにはいきません。 つまり、どの文字を消すかによって労力なり対応なりが変わってきます。 文字消去するなら適当に \(z\) を消す人が多いと思いますので、\(z\) を消してみたいと思います。 詳しい計算過程は【解2】で述べていますが、\(z\) を消すと示すべき不等式は \(bx^{2}+(a+b-c)xy+ay^{2} \geq 0\) となります。 文字を消去した時点で \(x\) , \(y\) は独立2変数です。 ここからは独立2変数の扱いの有力候補である予選決勝法で考えてもよいですが、よく観察してみると、「同次式」ということも目につきます。 同次式の扱いについては 問題はこちら(画像をクリックするとPDFファイルで開きます。) 特徴のある式についてはその個性を活かした扱い方をします。 もちろん、そんな個性のある式はそんなに沢山あるわけではありません ... 続きを見る でスポットを当てています。 \(y=0\) のときは示すべき不等式は \(bx^{2} \geq 0\) ということになり、ほぼ自明です。 \(y \neq 0\) のときは、示すべき不等式 \(bx^{2}+(a+b-c)xy+ay^{2} \geq 0\) の両辺を \(y^{2}\) で割ると \(b(\displaystyle \frac{x}{y})^{2}+(a+b-c)\cdot \displaystyle \frac{x}{y}+a \geq 0\) となり、\(w=\displaystyle \frac{x}{y}\) とおくと \(bw^{2}+(a+b-c)w+a \geq 0\) ですから、これが任意の実数 \(w\) について成立することを示せばよいことになります。 あとは \(bw^{2}+(a+b-c)w+a=0\) の判別式を \(D\) として \(D \leq 0\) を目指すわけです。 \(D=(a+b-c)^{2}-4ab\) なのですが、これをバラバラにバラしてしまうと \(D=a^{2}+b^{2}+c^{2}-2ab-2bc-2ca\) という一見対称性のある形が現れますが、ここから \(D \leq 0\) を目指すのはツライものがあるでしょう。 条件 \(\displaystyle \frac{1}{4} \leq c \leq b \leq a \leq 1\) をどのように使うのかも見えづらいものがあります。 むしろ、\(\displaystyle \frac{1}{4}\) だの \(1\) だのという数字を利用することを考えると \(D=(a+b-c)^{2}-4ab\) をバラす方針は見切りをつけるべきです。 今 \(z\) を消去して \(D=(a+b-c)^{2}-4ab\) を得たわけですが もし \(x\) を消していれば \(D=(b+c-a)^{2}-4bc\) が得られ、\(y\) を消していれば \(D=(c+a-b)^{2}-4ca\) が得られることになるわけです。 並べて何も違いを感じなければ【戦略2】【解2】の路線で頑張ることになると思いますので、ご確認ください。 ここで 「ん?\(y\) を消すとうまくいかないか?」 とピンとくるものがあれば【戦略1】【解1】の路線になります。 \(a\) , \(b\) , \(c\) の大小関係がある意味ジャマなので \(a\) , \(b\) , \(c\) を \(\displaystyle \frac{1}{4}\) 以上 \(1\) 以下の実数とする。 \(x+y+z=0\) なる実数 \(x\) , \(y\) , \(z\) に対して \(ayz+bxz+cxy \leq 0\) が成り立つことを示せ。 という問題で考えればよいでしょう。 晴れて \(a\) , \(b\) , \(c\) の対称性が出た状態で、それを活かす方針についてを【戦略3】【解3】で触れています。基本は文字消去
\(x\) , \(z\) を消すと
参考同次式(斉次式)の扱いと絶対不等式としての処理【2016年度,1990年度 立命館大学】
対称性を活かす路線